第20話 昔の(エロ)アニメではよくある設定



俺は歩きながらコピーに話しかける。

クリムゾンベアについてどうすればいい?


《全力で逃げれば、逃げ切れるだろう。

 勝つ手段が全くないとは言わないが、犠牲は覚悟するべきだ》


犠牲無しで勝つことは無理ということか。

しかしここで俺たちが戦わなくてはならない理由もない。


《あるとすれば金だな。

 多少の前後はあるがクリムゾンベアの魔石はかなり高値で売れる。

 金貨200枚は堅いだろう》


金貨200枚か。これくらいないと奴隷購入は厳しいだろう。

そう考えるとここでクリムゾンベアを倒したい。問題はどうやって倒すかだ。

媚薬は効くのか?


《一応効く。ただあいつはオスだぞ?

 ……もしかしてお前、あいつの尻を狙っているのか!?》


コピーは恐ろしく動揺していた。

ちなみに完全な誤解である。

尻を狙うことは無い。これからずっと、それは変わらない。


《女性の尻も?》


……それは別だ。

俺の性癖の話ではない。クリムゾンベアを倒す方法の話だ。


《毎度おなじみのサービスだ。

 あいつはかなりの防御力と少しの自己再生能力を持っている。

 再生能力については考えなくてもいい。致命傷を回復できるような力はない。

 それより問題となるのは、防御力だ。

 現状、お前たちの実力だと致命傷を与えることができない》


問題は火力不足なんだよな。

妖精による遠距離攻撃は?


《そもそも妖精は怯えて攻撃を行わない。

 これはトモエの実力の問題だ。トモエがもっと強ければ、怯えることもないだろう》


ならゴーレムかトレントで対応するというのはどうだろうか?


《巨大なゴーレムかトレントを作れば、パワーでは勝てるだろう。

 しかしあの熊は思っているよりも素早いぞ。

 前回は満腹だから、本気を出していなかっただけだ》


そうなると残された方法は……これしかないか。


《かなり大変だが、その方法が一番だろう。

 犠牲は出るが、それなら回復できる範囲だ》


コピーとの相談を重ねて、俺は一つの作戦を決めた。



******



俺たちは再びクリムゾンベアの近くまで来ていた。既にクリムゾンベアは俺たちに気が付いて、臨戦態勢を整えていた。

先程と違い時間が経ったためか、その口らからは涎が垂れている。今回は俺たちを食い殺すつもりだろう。


「……マリア、やってくれ」


「本当に大丈夫なんですよね?」


この作戦はかなり危険な作戦である。結局のところはマリアが生み出した大量の魔石で強力な魔物を作る。

簡単に言えば、それだけの作戦だ。

土や木を素材にした魔物では、クリムゾンベアに勝つことは難しいだろう。

トモエを素材にすれば、トモエが回復不能な傷を負ってしまう。

ならどうすればいいか?

答は簡単である。

それ以外の素材を使えばいい。つまり……俺だ!


「大丈夫だ。俺は『大邪神の加護』を持っている。

 魔物に変異しても一度死ぬだけで、翌日には再生することができる」


魔物に変異して魂が変質するのは、その魂が守られていないからである。

妖精に守らせても、強い変異は止まらない。しかし『大邪神の加護』ならどうだろうか?

『大邪神の加護』はその名の通り、神の加護である。

マリアが生み出した魔石による変異程度で、その加護に打ち勝つことなど不可能だ。

俺は自信に満ちた顔をマリアに向けた。

マリアは俺を信じたのか、諦めたのかは分からない。しかしマリアは俺に強力な魔石を渡してくれた。俺はそれを体の中へと、入れていく。

魔石はどういうわけか、俺の体に抵抗なく入っていく。

そうして俺に強力な力が流れ込んでくるのが分かった。


「ウォォオオオオオ!!」


無意識に叫び声が俺の口から洩れる。

それと同時に俺の体が巨大化していく。

俺は体内にある魔石に魔力を流しながら、体中に回復魔法をかけていく。

強烈な変異で、肉体が壊れていくのがよくわかる。魔石に痛みを麻痺させる作用が無ければ、痛みのため一歩も動けないだろう。

俺は漫画とかにいるような、痛みを耐えて戦い続けるような狂人とは違う。

痛みに耐えられない常人である。だから痛みは完全に麻痺させている。

体中の皮膚を硬質化させる。副作用で髪の毛も無くなるが、また生やせばいい。

俺の今の姿は鎧を着た巨人というのが、一番近い姿だろう。

念のためにもう一度言うが、鎧を着た巨人である。鎧の巨人ではない。

唯一鎧が無いのは、股間だけだ。

俺のマジカル〇〇〇は元々どのような攻撃も無効化する、無敵の〇〇〇だ。硬質化による鎧は必要ではない。


「二人は下がっていてくれ!」


俺は二人を下がらせる。今回の戦いにおいて、俺は自分の回復だけで手一杯になっている。そのため二人が怪我をしても治す余裕がない。

俺の体もクリムゾンベアと同じ10メートルになっている。

巨大な肉体を持つ者同士で戦えばいい。

俺はゆっくりとクリムゾンベアに近付いていく。

ちなみに俺は媚薬を飲んで、軽い興奮状態になっている。まともな状態でクリムゾンベアに挑むなんてできるわけがない。

俺は気合を入れるために吠えた!


「いくぞっ!!」


俺は走り出して、思いっきり右の拳で殴りかかった。それをクリムゾンベアは左のカウンターで迎え撃つ。

クリムゾンベアの左の攻撃のほうが先に到達する。

……リーチは向こうのほうが上か。

俺の頭が吹き飛ばされるが、即座に俺の頭が回復する。今回は魔石がある体の方に再生した。つまり今の俺の弱点は魔石ということか。

俺はすぐさま左で殴りかかる。今度はクリムゾンベアの体を、殴ることができた。

俺の手も砕けたが、手応えがあった。奴の肋骨は折れたと思う。

この調子で殴り続ければ、俺の勝ちだろう。

俺は頭を何度も潰されながらも、クリムゾンベアを殴り続ける。

クリムゾンベアの攻撃が、俺の体に直撃する。

ヤバい!!

俺の魔石にヒビが入るのを感じる。すぐさま回復する。

回復しない?魔石は俺の体ではないということか!

俺は一度クリムゾンベアから距離を取る。相手もかなりのダメージを受けており、口からは血を吐いていた。

このまま近接戦闘を続けるのは危険だな。

クリムゾンベアも俺への攻撃を、頭から体へと変化させていた。

このままだと魔石は砕かれる。砕かれれば、この肉体の変化も終わりを告げるだろう。

そうすれば勝てない。

どうすればいい……?


《マジカル〇〇〇を使え!》


!?どういうことだ!?

どうしてここでマジカル〇〇〇が出てくる!?


《忘れたのか!?

 古きエロアニメのことを!?》


?……!そうか、どういうことか分かった!!

俺はマジカル〇〇〇を発動させる。

マジカル〇〇〇は俺の意志通りに分裂し、伸びていく。

最近ではあまり見ることのない触手〇〇〇だ!!

触手〇〇〇はクリムゾンベアに纏わり付くと、両手両足と首を締め上げる。

クリムゾンベアは爪や牙で斬り裂こうとするが、俺のマジカル〇〇〇は無敵だ。

決して傷付くことは無い。

俺のマジカル〇〇〇は、クリムゾンベアを締め上げていく。奴の体は宙に浮かされて、もう何もできないだろう。

クリムゾンベアが倒れるのも時間の問題だ。

そう思っていると一本の触手〇〇〇が、俺の意思を無視してクリムゾンベアに近付いていく。

狙いはクリムゾンベアの尻の穴。

尻の穴?何故狙う?


《〇〇〇だからな。穴を狙うのは必然だろう》


いや、オスの尻穴は狙わないだろう!


《すまん。クリムゾンベアは両性だったようだ。

 変異種だから、どちらもあるようだ》


俺のマジカル〇〇〇は二つに割れると、二本になり一直線にクリムゾンベアを貫いた。


《鬼畜な攻めだな》


俺はコピーの言うことを無視すると、クリムゾンベアの首を強く締め上げる。

もちろんクリムゾンベアを殺すためだ。

クリムゾンベアの死亡を確認すると、俺は俺自身への回復魔法を解除した。

そして強力過ぎる自己強化により、俺の体は崩壊した。



******



俺は首だけの姿になり、目を覚ました。

どうやら無事に俺は再生したようだ。俺は回復魔法で俺の体を再生させる。

続いて服と木の杖を再生すると、辺りを見回した。


「なんて美しい輝きなんだ!これが変異種の魔石か!

 これは勉強になる。

 ……なるほど。こういう感じに魔石内の魔力の流れを調整すればよかったのか!」


ボーリングの玉くらいの大きさの赤く輝く魔石に、マリアが妖しい目つきで頬ずりをしていた。

その顔は醜く歪み、悦楽で興奮しているように見えた。

その隣ではクリムゾンベアの体を、トモエが解体して調理している。


「……えっと、どういう状況?」


「ご主人様。復活されたのですね!」


トモエが俺の姿を確認して、近くに寄ってくる。その手には血で濡れた包丁があり、トモエ自身も返り血で赤く濡れていた。

怖い!すごく怖い!!

何よりも怖いのが、トモエが少し興奮気味で笑みを浮かべていることだ。

このまま俺は殺されてしまうのではないかと、幻想する。


「もうしばらくお待ちください。

 クリムゾンベアの肉が、まもなく焼きあがりますので」


トモエは血塗れで、笑顔を浮かべている。

恐らく血はクリムゾンベアのものだろう。解体していて返り血が付いたのだ。

頭では分かるのだが、心はそうはいかない。

俺は自分の顔が引き攣るのを自覚した。

相変わらずマリアは魔石を見て、興奮していた。

俺はクリムゾンベアと戦うよりも、酷い状況に陥っていた。



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