第8話 奴隷との取引?いいえ違います
俺はいわゆるラブホテルの中で、椅子に縛られて口も封じられていた。
目の前には小学生低学年くらいに見えるドワーフの女性がいる。
彼女は俺の奴隷で、俺のことを縛り上げたのも彼女である。
「取引です。まず『はい』ならまばたきを2回してください。
『いいえ』なら3回です。
分かりましたか?」
俺はまばたきを2回する。
「結構です。
状況は理解できていますか?」
まばたきを2回。状況はコピーに聞いて理解している。
「まず私には残念ながら、ご主人様が必要です。
何故か分かりますか?」
まばたきは3回。分からない。
「簡単な理由です。この国が私たちのことを亜人と呼び、差別しているからです。
そのため奴隷でないドワーフは、この国の中を自由に移動できません。
主人のない奴隷も同様です」
なるほど。そういえばこの国は人間以外を差別している国だった。
「まずこの国から出ることに協力してもらいます」
まばたきを2回。それは特に問題がない。
別にこの国に愛着があるわけではない。別の国に行くことは問題ない。
「そして帝国に行った後は私のことを解放してもらいます」
まばたきは3回。どうしてそんなことをする必要がある?
あくまでお前が奴隷で、俺が主人だ。今はこのような態勢だが、口さえ自由になれば俺はお前を好きにできる。
いつでも殺せる立場になる。
「……立場が分かっていないようですね。
むしろ私がわかっていないと思っているでしょう?」
まばたきを2回。その通りだ。
「通常奴隷には口頭で注意することで、首輪が発動し首が締まる。
今あなたの口は封じられている。
だからあなたには何もできない。
私はあなたを殺すことができる……」
まばたきを3回。俺を殺すことはお前にはできない。
『大邪神が』本当の意味で俺を殺せるものが、この世界に存在しないと言った。
だからお前には俺は殺せない。
「私があなたを殺さないと思っているのですか?」
まばたきを3回。そう思っているわけではない。
「あなたが私にできるのは首輪を使い、私の首を絞めることだけ。
私なら首が締まっても、死ぬ前にあなたを殺すことができる。
この程度の首輪なら、それが可能だ!
今から口をの紐をほどく。下手なことを言えば、お前を殺す!
……いいですね?」
俺はまばたきを2回する。話し合いができるなら、それに越したことは無い。
彼女が後ろに回り、俺の口の紐をほどいた。
それと同時に俺の首に彼女の手が添えられる。
いつでも俺の首を絞めることができるということだろう。
「……それでお前は何が聞きたいんだ?
そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前はネトリだ」
俺は自己紹介を行っていなかったことに、ようやく気が付いた。
……まずは互いの名前を知ることから始めよう。
「……私も少し熱くなり過ぎていたようですね。
申し訳ありません。
私の名前はトモエです。
……それから傷を治していただき、ありがとうございます」
ドワーフの少女、トモエも少し冷静になってくれたようだ。
「……私には目的があります。
ドラゴンを倒すことです。そうしてドワーフの戦士として、認められることです。
私はあなたの性欲を満たす存在では無い。
誇りある戦士だ。
……あなたよりもはるかに強い戦士だ」
何か話がかみ合っていないような気がする。何か重要な部分が、ずれているような感覚だ。
「俺がトモエを買ったのは、俺の護衛とするためだ。
……性奴隷の意味合いが全くないとは言わないが、俺がお前に求めるのは戦う力だ。
決して容姿だけで選んだわけではない」
「……なら何故私を選んだ?
私の半身は焼けただれていたはずだ。
そんな状態の私に戦う力を求めるのは、おかしくないか?
…………そうか!回復魔法で治せる自信があったのか!?」
「……ああ、そうだ」
「でもそれでもおかしい。
あなたの所持金を見た。金貨が100枚あった。
戦闘奴隷が必要なら、その金で買えたはずです。
その中には私よりも強いものがいたはずです。
言って欲しい!何が決め手で私のことを買ったんですか?」
正直に言うべきか、俺は少し迷った。でも聞こえてくる声の真剣さに、俺は正直に応えるべきと判断した。
「処〇だ!」
「は?」
「だから処〇だ!
処〇の奴隷が欲しかったんだっ!!」
俺の首に当たる彼女の手に力が入るのを感じる。
「……そういえば、そのことも確認していましたね。
でしたらエルフの『処〇』がいたはずですが?」
トモエはかなり不機嫌になっているようだ。
「そいつは男だろ!?
俺は女性の処〇の奴隷が欲しかったんだっ!!」
「……なるほど。そういう趣味の人間ですか。
そのために私を選んだのですね。
誇り高いドワーフの戦士を選んだ理由が処〇ですか……」
……少しの殺意が感じられた。地雷を踏み抜いた気がする。
「どうしよう。
こいつと協力してこの国から出ようと思っていたのに、急にこいつのことを殺したくなってきちゃった……」
「ちょっと待ってくれ!
……そうだ!取引とはどういうことだ?
そもそも、そんなものが成立すると思っているのか?」
俺は当初から感じていた疑問を口にする。
仮に取引をしたとしても、俺はトモエの主人である。それを守る保証はどこにもない。
確かにトモエは俺を殺せるかもしれないが、それはこちらも同じである。
むしろ有利なのはこちらの方だ。
それに奴隷契約は正当に結ばれたものだ。それを破棄しなければならない理由はどこにもない。
「取引?……ああ、取引ね。
帝国で解放するなら、それまでは大人しく従うというものだ。
私は『水』と『風』の妖精の力を借りることができる。
妖精の力で契約を結べば、それは決して破ることが許されない契約になる」
《精霊もしくは妖精の力を使った契約は厄介だな。
破れば罰が下される。そうすれば、お前はしばらく死に続けることになるだろう》
……そんな契約を結ぶわけにはいかないな。
「ならこうしよう。
俺たちは協力して帝国を目指す。
それまでの間に、トモエの方から俺のことを求めた場合は奴隷のままだ。
一度も求めなかったら、奴隷から解放する。
約束しよう。契約してもいいい」
「そんなことを言って、私の食事か飲み物に媚薬を盛るつもりか?」
「食事や飲み物に媚薬を盛ることは無い」
「本当か?」
「本当だ」
俺は嘘を言っていない。
「なら信じてやろう。
…………!?何をした?」
トモエはすっかりと体が火照っているようであった。俺はチートアイテムの媚薬を使い、媚薬ガスを発生させていた。どうやら瓶を取り出すことなく、錠剤を取り出しガスを生み出すことが可能のようだ。
「約束は破っていない。
俺は食事にも飲み物にも媚薬はいれていない」
彼女は俺の首を締めようとするが、既に力が入らなくなっている。頭の中が性欲に支配されているはずだ。
その証拠に首にあった手は離れて、俺のズボンを脱がそうとしていた。
年齢的にどういうことをすればいいかは、知っているようだ。
俺は上半身を縛られたまま、彼女の行為に身を任せた。
「……出来れば縛られてない状態が良かったな」
******
「……ご主人様。
私は一生ご主人様についてまいります」
彼女は快楽に溺れたその顔を晒しながら、俺の奴隷として生きることを了承した。
今の彼女に戦士の誇りも尊厳も感じられることは無い。
ただ快楽に溺れたメスの顔が存在するだけだ。
《媚薬とマジカル〇〇〇には、この世界の誰も逆らえない》
こうしてトモエが快楽堕ちして、俺の仲間になった。
それにしても俺の仕事は、勇者のハーレムを作ることの手伝いであったはずだ。
どう考えてもトモエが勇者のハーレムに入ることは無いだろう。
《そんなことは無い。今のトモエなら、お前の命令で勇者のハーレムに入ることも了承するはずだ》
……それって実際は俺がハーレムを作って、それを隠して勇者に宛がうということか?
《その通りだ》
そんなことできるか!どう考えてもおかしいだろう!
《そんなことは無い》
ともかく、そのことは後回しにしよう。
「……トモエ。これから方針なんだけど」
「私たちはいつまでも一緒です」
トモエの声が甘く優しいものに変わっている。
「まず帝国に向かおうと思う」
「私は一生ご主人様のものですよ」
トモエから妙な圧が発せられる。物理的にもかなり強力に、抱き締められていた。
「おっ、お前は俺の奴隷だ。
解放する気はない。全く無い。
でも帝国に行こうと考えているだけだ!」
トモエの圧が少し和らいだ。まだ俺は抱き締められたままだ。ついでにいうとまだ縛られている。
トモエは椅子に縛られた俺の上に、向かい合うようにして座っていた。俺の上に跨って座っている。
「……分かりました。
とりあえず今日のところは、休憩ではなく泊りに変更してきます」
トモエはまだまだ物足りないようである。
俺のマジカル〇〇〇の活躍はもう少し続くようだ。
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