第7話 奴隷の購入と連れ込み宿
俺は今、奴隷商に廃棄予定の奴隷を見せてもらっている。
廃棄予定の奴隷は全て一か所に集められていた。
「ここにいる奴隷は処分予定の奴隷になる。
前の主人に壊されて、処分を依頼された奴隷。
元々売り物にならないような奴隷。……これは大量に仕入れたときに、ついてきたものだ。
そういう奴隷をここには集めてある」
目の前にはたくさんの檻があり、その中には死にかけている奴隷たちがいた。
「奴隷を殺すにはそれなりの手続きが必要になる。
俺たちが勝手に殺していいわけじゃない。
それが見つかれば、俺が奴隷になっちまう」
奴隷商は笑っている。どうやらこれは奴隷商の持ちネタのようだ。
「ここにいるのはそういうやつらだ。
売り物じゃないから値段はタダでいい。
ただ奴隷の書き換えの手数料だけは貰う。
そういう意味ではここにいるのは、全て手数料金貨5枚の奴隷たちだ」
手数料が金貨5枚。つまり5万円か。高いように思えるが、これは恐らく値切ることのできない値段だろう。
《その通りだ。金貨5枚の手数料は奴隷契約及び奴隷の首輪の代金が含まれており、これを値切る奴隷商は存在しない。
値切ろうとすれば、店から追い出されるレベルのものだ》
「……それで俺に紹介できる奴隷というのは、どいつだ?」
「……こいつだ」
奴隷商の指し示す先には、一人の少女がいた。少しくすんだような銀髪をしており、その体は小さい。小学校の低学年くらいだろうか。
そして左半身が、大きく焼けただれていた。それ以外にも体中に傷跡がある。
「こいつはドワーフの戦士だ。
女性で、こう見えても18歳。
帝国出身でドラゴンに挑んで、その身を焼かれた愚か者。
命は助かったが、治療費のために奴隷になった問題児。
愛玩奴隷としては、傷が多くて醜い存在だ。
戦闘奴隷としても、傷が原因で思うように体が動かない。
何でもかんでも奴隷にすればいいという考えが間違っている、見本的な存在だ。
一応検査で調べたが、こいつは処〇だ」
俺は少女を見る。その目には憎しみが宿り、こちらを睨みつけている。
奴隷商の言い分を聞いていたのなら、当然だろう。
俺は少女の顔を見た。半分は火傷でただれているし、もう半分も色々な傷跡がある。それでも少女の顔は整っているといえる。美少女の部類に当たるだろう。
《彼女は純血のドワーフだ。人間の血が混じっておらず、妖精同士の子供だ。
かなりの珍しいな》
どういうことだ?俺は心の中で尋ねる。
《通常のドワーフは人間と妖精の子供。もしくはドワーフと妖精の子供か、ドワーフと人間の子供だ。
しかしこいつは妖精と妖精の子供だ。人間の血が混じっていないドワーフはかなり珍しい。全くいないわけじゃないがな》
能力的な違いはあるのか?
《通常は、ほとんどない。しかしこの個体は『風』と『水』の属性を持つ珍しい個体だな。まるでエルフのようだ》
俺にはコピーの言っている意味が分からなかった。
「……それで、どうする?
こいつを買うのか?買わないのか?」
その時、奴隷商から声を掛けられる。
俺には回復魔法がある。そのため答は決まっている。
「買う!こいつを買う!!」
「……そうか。
俺は客の好みに文句をつけるつもりはないが、あんた相当な変わり者だな。
まぁ見世物として食い殺される未来しかない奴だ。
あんたの性奴隷として生きるほうが、よっぽど幸せだろう」
奴隷商は俺のことを少し尊敬するような目つきで見ていた。
《左半身が焼けただれた傷だらけの少女に興奮する処〇厨。
完全で完璧な変態だ》
「俺は変態じゃない!」
奴隷商は俺の肩に手を置いた。
「大丈夫だ。
俺は客の趣味に文句をつけることは無い」
奴隷商は全て理解しているという顔つきで、大きく頷いていた。
こうして少しの誤解が生まれたが、俺は奴隷を手に入れた。
******
手続き自体は問題なく終了した。俺はドワーフの奴隷を連れて裏路地の人目のつかないところへと移動した。
「……初めてが裏路地ですか?
正気でしょうか?ご主人様?」
ドワーフの奴隷は冷たい目つきで俺のことを見ている。右目だけで、左目の方は何も映していない。
「ここで行うのは治療だ。
とりあえず黙っていてくれ」
俺は彼女の肩に触れながら最大出力で回復魔法を使う。それと同時に焼けただれた彼女の左半身が綺麗に再生する。さらに体中にあった傷跡も、全てが消え去っていった。
「……これで良し」
我ながら見事なものだと思う。それと同時に彼女は幼い見た目ながらも、非常に美しいと感じた。可愛らしいではない。美しいだ。
彼女はとても美しい。彼女は今、薄汚れた服を着ていた。無骨な首輪をしていた。
それがとても残念なことに思えた。
「……とりあえず、これを着てくれ」
俺は着替え用に回復で生み出した服を彼女に渡した。しかし彼女は受け取らない。
彼女は自分の左手を見たまま、固まっていた。
「どうした?……大丈夫か?」
俺は固まったままの彼女の両肩を掴むと、彼女を揺さぶる。
そうしてようやく彼女の意識が、こちらへと戻ってきた。
「……大丈夫です。
大丈夫です、ご主人様。
少し呆けていただけです。何も問題ありません」
彼女はまだ状況が理解できないようだ。
「まずはこれに着替えてくれ」
奴隷商にいたときの薄汚れた服から着替えるように、俺は彼女に着替えを渡す。
今度は彼女はそれを受け取り、着替え始めた。
この裏路地に誰もいないのはコピーに確認済みだ。このくらいのサービスは応じてくれるらしい。
彼女は薄汚れた服を脱ぐと、その下の裸体があらわになる。残念なことに彼女は汚れた場所にいたため、彼女の裸も汚れていた。
彼女を綺麗にしなければ。
俺は心の奥からそう誓う。
《普通はできないが、彼女の魔力を回復させればいい。
彼女は水の魔法属性を持っている。自分で綺麗に出来ることだろう》
コピーの助言を受けて、裸の彼女の肩を掴む。
「!?
何をする気ですかっ!?」
彼女が俺のことを警戒するが、俺はそれを無視して彼女の魔力を回復させる。
……それにしても先程の回復では何故魔力が回復しなかったのだろうか?
《その理由は簡単だ。お前が魔力の回復を意識してないからだ。
回復はお前が意識したものしか回復できない。それと人の体にしか影響しない。
お前の装備品は例外だが、武器防具などは回復できない。
なんでも無制限にできるものではない》
なるほど。そういうことか……。
「何時まで見ているんですかっ!?
この変態っ!?」
俺の奴隷であるドワーフの女性の一撃が、俺の顔面に直撃した。
そして俺の意識は、ここで途切れた。
……それにしても、汚れていても彼女の裸は美しいと思う。
個人的にはもう少し、どこと言わないところにボリュームが欲しいところだ。
******
俺が気が付くと、どこかの部屋の中で縛られていた。
《ここは宿屋の部屋の中だ。状況を説明すると、あの後お前は奴隷のドワーフに背負われて、宿屋の中に連れ込まれた。そして縛られている。
宿屋といっても、ここは連れ込み宿だ。分かりやすく言えばラブホテルの中だ。
彼女はベッドの上で就寝中。お前は椅子に縛れている。
状況の説明は以上だ》
話が進むようにコピーから状況の説明があった。俺は縛られて動けない。
ついでに口も縛れて、何も話すことができない状況だ。
奴隷の首輪は多機能で高性能だ。口頭による命令で、奴隷の首を絞めることができる。
口が縛れているのは、それを防ぐためだろう。
俺の上半身が縛られていて、俺は動くことができなかった。
せいぜい体を揺らすことができるくらいである。
「……ん?んんっ」
彼女から寝息が漏れる。目の前には幼い美女がいる。美少女ではなく、体が幼い美女だ。
それなのに俺は動けずに何もできずにいた。
そうしているうちに彼女が目を覚まし、俺の目の前に来る。彼女は背が低く、椅子に座っている俺との目線はさほど変わらない。
「……目が覚めたようですね」
彼女は眠たそうに眼を擦りながら、こちらを見ている。
「取引をしましょう」
彼女が妖艶な笑みを浮かべながら、そういった。
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