第2話 ゴブリンの襲撃と敗北
俺が目覚めると、森の中だった。
鬱蒼とした森の中に、俺は一人でいる。
「ステータス、オープン」
テンプレならこれで能力がわかるはずだ。俺の目の前に半透明な画面が現れる。
ネトリ 男性 15歳 人間族
身長 170センチ 体重 75キロ
能力 『言語理解』『不老不死』『ほぼ無限魔力』『回復魔法』
『絶倫』『マジカル〇〇〇』
持ち物 『媚薬(譲渡不可)』
加護 『大邪神の加護』
追伸 ゲーム世界ではないため身体能力などの数値化はありません
決して面倒だからじゃないんだからね(大邪神より)
……絶対に面倒だからだろうな。レベルについてもないのかな?
俺の疑問の回答がステータスの追伸の後ろに現れた。
レベルについは正確にはありません。ただし魔物などを倒せば強くなります。数値化はされていませんが、強くなるようになっています。
なお追伸画面の内容は毎回リセットされますのでご注意ください
魔物を倒せば強くなる。レベルなどの目安がないだけか。成長するのは助かるな。俺は自分の体を確かめる。着心地が悪い服を着ているが、恐らくこの世界ではこれが普通なのだろう。
「……他に何かないかな?」
俺は辺りを見渡すが、特に何かが落ちているようなことは無い。所持品を確かめると、錠剤が入った瓶がある。ラベルに『媚薬』とあるため、これが所持品の媚薬だろう。
「ん?説明書もあるな」
瓶に貼り付けられているラベルには、媚薬の説明書があった。
「……なになに。無味無臭で水にすぐ溶けます。男女どちらにも作用します。
魔力を流せば気化して、媚薬ガスにすることも可能か。中々高性能だな」
俺はラベルの説明を読み進めていく。
「なるほど。俺には『基本』効かないのか。効くかどうかは大邪神の気分次第か……。
使用には気を付けることにしよう」
他にも何かあるか探したが、特に何もなかった。
そう!お金の類についてもなかった!!
「無一文か。結構辛いな。
テンプレだと魔物を倒して、魔石を手に入れる。もしくは襲われている馬車を助けるかなんだけど……。
俺には武器の類が全くない。ついでにいうと戦える気もしない。
恐らく俺はそんなに強くない、回復特化型だな。
まず味方を見つけよう」
俺はとりあえず森の中を歩き始める。武器を持っていなかったため、その辺にあった1メートルくらいの木の枝を杖として持つこととした。太さもそれなりにあり、杖としては十分だろう。
「魔物に見つからないようにしないと」
今の俺は戦うことができない。正確には魔物に勝てるような力はない。多分とても弱い。
能力の関係で死ぬことは無いだろう。しかしそれでは勝つことができない。
俺は魔物に見つからないように気を付けながら森を歩き続ける。
疲れが出れば、回復魔法で回復する。精神的な疲れも、空腹やのどの渇きも回復魔法で回復する。
「回復魔法はかなり便利だな」
独り言が増えている。回復魔法で回復していても、精神的に不安なのだろう。
それが原因で独り言が増えていた。
「しかし今向かっている方向であっているのだろうか?」
俺は不安になりながらも歩き続けた。
******
日が暮れて、辺りが暗くなってきた。
「暗くて何も見えないな」
疲れは回復できる。感覚的に眠気の方も回復魔法で何とか出来るだろう。しかしこれだけ暗いと歩くことができない。
幸いなことに雨は降っておらず、気候も春や秋のようで特に寒くもない。涼しいくらいだ。
俺の服装が長袖長ズボンであることから、過ごしやすい気候であることは間違いない。
「とりあえず今日のところは、この辺りで休むことにしよう」
俺は大きな木に、もたれかかりながら座る。辺りは完全に闇に飲まれており、俺には見渡すことができない。
「……何があるか分からない。回復魔法をかけながら、警戒しながら過ごすことにしよう」
俺は精神的に狂わないように頭にも回復魔法をかけながら、辺りを警戒する。杖を持つ手に力が入る。
「……どうか魔物が出ませんように」
俺は『神』に祈る。大邪神ではなく、存在するか分からないような『神』に祈った。
《夜行性のゴブリンが君を発見したよ》
頭の中に大邪神の声が鳴り響いた。どうやら祈りは通じなかったようだ。俺はすぐさま立ち上がり、杖を構えて警戒態勢を取った。
「……なんだ、男か。外れだな」
低い声が聞こえたと思った瞬間、俺は後頭部を殴られて『一瞬だけ』気絶する。
俺は頭部にも回復魔法を流していたおかげで、すぐに回復して意識を取り戻した。
とりあえず気絶した振りをしておく。
「こいつどうする?」
「餌として持って帰るか?」
「そうだな。念のために止めを刺してから持って帰ろう」
次の瞬間、俺の頭は潰された。意識が物理的に途切れた。
******
気が付くと、俺の体は引き裂かれてゴブリンに食われていた。って、なんで!?
《説明しよう。まず私はお前に組み込まれている24時間自動対応大邪神だ。
なにかあれば簡単なものは私が対応する。大邪神本体が直接対応するわけではないので、覚えておいて欲しい。
なお大邪神はお前の状況を録画して、私が編集したものを見る予定となっている》
頭の中で響く声は大邪神と同じものだった。ということは大邪神の複製か何かか?
《私は大邪神の複製だ。面白くないことの対応を任されている》
頭の中の声は俺の疑問に答えてくれる。こいつも俺の心が読めるのだろう。
《その通りだ。しかしこいつとは失礼だな。
……複製だから私のことは『コピー』とでも呼ぶがいい》
それでコピー。一体どういう状況なんだ?
《お前はゴブリンに負けた。ゴブリンに負けるとは情けない》
それで?この状況は?少しイラっと来た。
《負けたお前は餌として住処に持って帰られて、バラされて食われている》
なるほど。それにしてもなんでこんなにも冷静なんだ?
俺の頭の中は最初こそ少し焦ったが、今は冷静に状況を見ることができている。
かなり異常な状態だ。
《何故冷静かって?話が進まないといけないから、今回は私がお前の精神に細工した》
すごくわかりやすい説明をありがとう。
《皮肉か?少し精神に乱れを感じるぞ?》
……冷静になれ。ここでこいつに怒っていても仕方がない。
《その通りだ。ついでにいうと、お前は頭を破壊されても一日経てば首から上は再生する。
これは『不老不死』の能力の一つだ》
つまり俺の頭は一度潰されて一日経って再生したということか?
《その通りだ。通常は行わないが今回はサービスで君に対して気配隠蔽をかけている。
体については自分の回復魔法で回復してくれ。サービスの対象外だ》
その前に確認だ。気配隠蔽はどの程度持つ?解除される条件は?
《気配隠蔽の効果はこれから24時間だ。この世界の一日も24時間だ。
解除される条件は直接または間接的に触れられてたら解除される。
『この』気配隠蔽はそういうものと理解して欲しい》
……『この』といっていることから気配隠蔽は使うものによって、継続時間と解除条件が異なっているのだろう。とりあえず俺は触れられなければいいということか。
それと何らかの形で攻撃すれば、間接的ととらえられて解除さるとみていいだろう。
《その通りだ》
俺はとりあえず体を回復させる。回復というより再生だな。俺の体はすぐに再生した。
周りを見るがゴブリンは俺の体を食べているだけで、俺には気が付いていない。
《今回の気配隠蔽の説明については嘘ではない》
次回以降は嘘をつく可能性があるということか?
《その通りだ》
それにしても俺は裸である。当然だろう。服などないのだから。それにしても俺の〇〇〇はかなりデカいな。
《『マジカル〇〇〇』だからな。絵面が最低だから初期装備の服と杖については回復可能にしておいた。回復して服を着るといい》
コピーのいうように服と杖は回復で再生するようになった。ついでに靴もか。
《サービスだ。あくまで回復で再生するのは初期の服等と杖だけだ。それ以外は回復しない。例え新しい服や武器を手に入れたとしても、それらは回復の対象外だから気を付けるように。それから媚薬については特殊なアイテムだ。お前が望めば、手の中に出てくる》
俺は試しに媚薬を望むと、手の中に媚薬の瓶が現れた。逆に消すことも可能のようだ。
《特殊なアイテムだからな》
俺は改めて辺りを見回す。松明か何かで火が焚かれて、薄暗い洞窟の中を照らしている。
ここはゴブリンが住む洞窟のようだ。
これからどうする?逃げるか?
《逃げても再び捕まる可能性100%》
逃げても無駄か。恐らく俺は夜の闇で動けなくなり、再びゴブリンに捕まるのだろう。
松明か何かで夜通し歩いても、捕まることに変わりは無いと思われる。
《夜行性のゴブリンは熱探知が可能。逃げ切ることは不可能だ》
打開策は?
《ゴブリンを倒すしかない》
俺がゴブリンから隠れていられるのは、気配隠蔽が切れるまでの24時間。
それまでにゴブリンを倒すための策を、見つけないといけないということか?
《その通りだ。なおゴブリンの熱探知を気配隠蔽は隠せるので、そこは安心するといい》
俺は策を見つけるために、洞窟の中を探し回ることにした。
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