記憶を失った俺のチート付きの異世界テンプレ?転生

金剛石

第1話 俺は記憶を失い無茶苦茶な転生(転移?)をする



気が付けば白い部屋の中にいた。目に映る全てが白く、部屋の大きさなどは理解できない。広いようにも思えるし、もしかしたら狭いかもしれない。ただ周りは全て白かった。


「気が付いたようだね」


部屋全体から声が聞こえる。誰だろう?聞いた記憶のない声だ。それ以前に俺は誰だ?なにも思い出せない。


「それはそれが君の望んだことだからだ」


頭の中の声が俺の心の中の疑問に答えてくる。心が読まれている?


「その通り。私は君たちの言うところの神のような存在だ。

 全知全能ではないが、それでも強力な力を持っている」


その存在が俺に何の用だ?俺は心の中で疑問を浮かべる。心の中が読めるなら回答してくれるはずだ。


「まず最初に君は私の過誤によって死んでしまった。私は君に謝り、蘇らせることはできないが異世界へ転生させることにした。そこは色々こちらにも制約があるため、仕方がないことだった。

 もちろん私は君の記憶を奪うつもりはなかった。しかし君は記憶の消去を望んだ」


何故だ?どうして俺はそんなことを望んだ?


「『忘れたい記憶があるためだ』。君はそう答えたよ。

 君は40代の男性であった。楽しいこともあった。でもそれよりも辛いこともあった。

 忘れたいことがあった。小学生の時の馬鹿なことをした記憶。

 中学生の時のいじめられた記憶。高校生の時の青春が無かった記憶。

 社会人になって職場でいびられた記憶。

 そんなことはもう忘れさせて欲しいと望んだ。忘れられないのなら、このまま死なせてほしいとさえ願っていた。

 でもこちらにも都合というものがある。君にはどうしても転生してもらわないと、より面倒なことが起こる。

 だから私は君の記憶を奪った。君の望みを叶えたんだ」


なるほど。よく分からないし分かる必要が無いのだが、俺には忘れたい記憶がたくさんあるようだ。だから俺は転生するにあたって記憶を失うことにした。何となくわかる。


『俺は自分が嫌いだったんだ』。


「その通りだろう。君は君自身が嫌いだった。君自身が異世界に行くことを拒絶しようとした。だから私は記憶を奪って異世界に行ってもらうことにした。

 今の君の人格は私が適当に作成した疑似人格だ。君の望みをある程度反映させて作り上げた人格だ。

 さて君には魔法がある世界に転生してもらう。これは決定事項だ」


俺には拒否権はなく、決定事項に従うしかないわけか。


「そうだ。私は記憶を失う前の君自身には負い目があっても、記憶を消した後の疑似人格である君には負い目が無い。ただ事務的に作業を進めるだけだ。

 君が転生するのは魔王が存在する世界。魔法がある中世ヨーロッパのような世界。そこに君を15歳の年齢の状態で送り込むこととなっている」


それなら転移になるのではないだろうか?俺は何故か浮かんだ情報から、疑問が生じた。


「君自身は記憶を消して疑似人格を入れて既に転生している。転生後に転移ということになる。それから情報が浮かんだのは、私が元の世界の常識などを辞典のようにして君の頭の中にぶち込んだからだ。これは記憶をなくす前の君が持っていた常識といってもいいだろう。

 さて転生した君の役割は魔王討伐ではない」


ん?どういうことだろうか。


「魔王の討伐くらいなら、その気になれば私が一瞬で行うことができる。簡単だ。

 呼吸をするのよりも簡単な作業だ。その程度のことは私は君に頼まない」


なら俺は何を頼まれるのだろうか?


「ハーレムだ!!」


何故か力強い声で返事が来た。


「ハーレムだ!!

 大切なことだから二回言った!」


よくわからないが俺はハーレムを作ることを望まれているのか?


「違うよ」


!?どういうことだよ!!


「君に望むのは魔王を倒した勇者がハーレムを作るのを手伝うことだ」


俺は勇者がハーレム作るのを手伝うために異世界に行くのか。急にやる気をなくしたな。


「問題ない。勇者は100年に一度生まれるが、今まで10人の勇者が生まれて10人とも魔王等に殺されている」


ダメじゃん!魔王に勇者勝てないじゃん!!


「ここで異世界の豆知識。魔王がいる限り魔石を持つ魔物と呼ばれる生物は狂暴化して『人間』を襲うよ。

 魔王及び魔王の直接の眷属の魔族は、魔大陸と呼ばれる大陸の外には出れないよ。

 人間が生きているのは、魔大陸とは別の大陸だよ」


何故口調が変わっている!?それはさておこう。多分気にしても無駄なことだ。

つまり魔王を含む魔族は人間の大陸へ攻めていくことができない。しかし魔物が暴れるため、人間は魔大陸に攻めていって魔王を倒さないといけない。こういうことか?


「その通り。よくできました。

 人間の中から100年に一度魔王を倒すための力を持つ勇者が生まれる。今代の勇者は昨日魔王に殺されたところだから、次の勇者が生まれるのは75年後だね」


いや、それだと勇者に会う前に俺が死ぬような気がする。


「大丈夫。君は私の加護を与えてあげるから、不老不死になるよ。ついでに何か問題があれば、頭の中で私に話しかければいい。全部解決してあげるよ。……気が向けばね」


……えっと、それであなた様のお名前を教えていただいてもよろしいでしょうか?


「名前?無いよ。

 でも人間や魔族たちは私のことを諸悪の根源『大邪神』と呼ぶね」


何だろう。徹底的に邪魔をしたくなってきた。


「そんなことをしたら魔王にも言っているけど、世界ごと滅ぼすよ?

 ついでに世界に生きる全てのものに終わることのない地獄を与えるよ?」


背筋に強い悪寒が走る。やばい。ふざけているようなことを言っているが、こいつは紛れもない『神』だ。逆らうことなんて絶対にできやしない。


「そうだね。その通りさ。ついでに言っておくと、君には私をどうにかすることは不可能だよ。

 そんな力は君にはないし、そんな手段は存在しない。ついでに言えば、そんな存在は存在しない」


この話は大邪神を倒す展開にはならないということか。


「メタ的な発言だね。それもその通り」


それでどうして俺にそんなことをさせるんだ?その気になれば、幾らでもどうとでもできるだろうに。


「それは最近の世界の様子が面白くないから、テコ入れだね。君は転生させる必要ができたから、ついでに利用しようと思ったんだ」


なんかおかしい点があるような気がする。転生させないといけないのに、お前をどうこうできる存在はいない。何か矛盾がある気がするな。


「考えるだけ無駄だよ?

 だって知る必要がないから。矛盾があるかもしれない。だから何?

 そんなことは知る必要がない。それは君には関係のないことだ」


それで俺に何か能力とかはあるのか?


「もちろんあるよ。長期戦を見越しての『不老不死』。神の領域には届かない程度の『ほぼ無限の魔力』。ハーレム作成に役立つ、神には効かないけど『尽きることのないすんごい媚薬』。転生もののお約束の『1日以内なら黄泉返りさえ可能な回復魔法』。それから『絶倫』と『マジカル〇〇〇』」


最後の二つ!何故ある!?


「勇者のハーレムを維持するのに必要になるかもしれない。そのためのものさ!」


何かすごく倫理観が無茶苦茶な気がする。


「大邪神に何を期待しているだい?

 ああそれから、『大邪神の加護』を与えておこう。これさえあれば、いつでも頭の中で祈れば私に色々お願いすることができるよ。

 ただし、全ての人間から憎まれるけどね!」


ハードモード?


「イージーモードだよ?

 戦闘能力はないけど、本当の意味で君を殺すことができる存在はこれから行く世界には存在しないよ!」


そうなんだ。


「そうだよ!ちなみに『大邪神の加護』は魔王と勇者以外では君が初めてになるね」


じゃあ、魔王と勇者も俺と同じ力を持っているということか?


「それは違う。

 魔王が持つのは『魔物暴走』『ほぼ絶対無敵』。この二つが魔王に対する『大邪神の加護』だ。

 勇者は『魔王特攻』だ。それが勇者の『大邪神の加護』だ。

 それぞれを説明すると『魔物暴走』は魔王が生きている限り、魔物が狂暴になり人間を襲う。『ほぼ絶対無敵』は勇者以外が魔王を殺すことができない。『魔王特攻』は魔王を殺すことができる能力を持つ。ただし魔王が勇者を殺せないとは言っていない」


何か無茶苦茶だな。


「そうだね。だから最近は何か面白く無くなったんだ。

 勇者が真面目に魔王のもとを目指して、魔王に殺されるだけ。

 たまに勇者が人間に殺されることもある。

 勇者が魔王と戦うことすら、無くなってきている

 それじゃ面白くないよね!」


それで俺がテコ入れすることになったということか。


「その通り。期待しているよ」


こうして俺は無茶苦茶な運命に巻き込まれることになる。


「うん!決定事項だね。

 それからテンプレで森の中へ落とすから、そのつもりでよろしくね!!」


ちょっと待て!少しまとめよう。

俺は勇者を探して、魔王を倒させる。そして勇者にハーレムを作らせるのが、俺の役割ということでいいか?


「そうだね。でも失敗してもどうでもいいよ。

 この世界を面白くしてくれれば、それでいい。

 逆に面白くなければ、それで終わりだ」


面白ければそれでいいって、何が面白いか分からないから難しいな。……それで俺の名前は何だ?俺は何という名前だったんだ?


「忘れていたよ。君の名前のこと。

 以前の君から名前も捨てて欲しいと言われている。

 だから君に私が新しい名前を与えよう。

 君の名前は『ネトリ』だ!」


寝取り?それって大丈夫?そもそもどうしてそんな名前なんだ?


「君には必要に応じて寝取りをしてもらうこともあるかもしれない。

 そういう期待も込めて、『ネトリ』と名付けた。

 ちなみに全てカタカナだよ」


何か嫌な意味だが拒否権はなさそうだ。俺の名前は『ネトリ』ね。分かった。


「服とか必要な持ち物は適当に準備しておいた。

 体についても『前の君』の希望通り、頑丈で筋肉質にしておいた。

 色々あるかもしれないが、そろそろ飽きてきたから時間だ。

 テンプレ森の中へレッツゴー!」


俺の意識はその瞬間に途切れ、俺は異世界へ転移することとなった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 12:00 予定は変更される可能性があります

記憶を失った俺のチート付きの異世界テンプレ?転生 金剛石 @20240531start

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ