第8話 数年前の空

タバコの吸殻を携帯の灰皿に、揉み込んで、僕はふたたび現在の、青い空の向こうに視線を戻した、、、、、!


あの電話は、かおるの友人からだった。にわかには信じられなかった。なぜか海に吸い込まれていったあの、包み、が、その時脳裏に浮かんだのを僕は覚えている。


歩道橋の上を一陣の風がとおりぬけている。目を細めた僕は二本目のタバコを取り出した、ライターを擦って、二本目に火をつけると、僕は腕時計に目をやった。取引先の担当の方との待ち合わせまで、もう少し。歩道橋の下を、猛スピードで走る車を見て感じていた。信号無視の車が、交差点を通過中の、かおるの運転していた軽自動車の右側にかなりのスピードで突っ込んだらしい、、、、、!


事故は僕から大切な二つの命を奪った。かおると、生まれてくるはずだった子供の命。


新しい希望や計画、やる気や生活の張りをも奪ってしまった、、、、、!かおるの友達から電話を受けた後、すぐに僕は信じられず、かおるのお母さんに電話をかけた。電話口でかおるのお母さんが泣きながら、ひたすら僕に謝るのだった、、、、、


ごめんね、ごめんね、ごめんね、、、、、


かおるのお母さんと、電話を切ったあと、僕は会社の上司に事情を打ち明け、一番早い新幹線で、かおるの実家へと向かった。二十数年前の腕時計の針が止まっているように感じていた。一刻も早く、かおるのところへと、気ばかり焦る新幹線のなかで、何を考え、どうしていたのかなど、僕は今でも思い出せない、、、、、

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