第7話 僕の部屋の電話が鳴る

かおるの、か細い声が、聞こえてきた、、、、、


え、ごめん。もう一度行って。


電話の向こうで、かおるが、もう、と軽く文句を言うのがわかる。


、、、、、赤ちゃんができたのよ、かずくん


赤ちゃん、ほんとうに!!


うん、夢がかなったね!


ほんとうだね! 結婚しよう、、、、、


冷静に言ったつもりだが、鼻の奥がツンとした!!


僕は何とも言えない気分にみまわられて、言葉を失っていた。いや、それは僕がそう思っただけで、実際には矢継ぎ早にいろいろなことを質問をしていたらしい。男か女か、生まれてくるのはいつか。体は大丈夫なのかなどなど、、、、、!


後でかおるが、最初は冷静だったけど、あまりにも定番すぎる質問ばかりだったので、笑い出しそうになった、と教えてくれた。


構うものか、定番、上等! 世のなかの男親の心配することなんか決まっている。


むしろ、僕自身も、普通の男だったことが証明されて、うれしさのあまり喜んだ、、、、、!


アパートで一人の夕食時、僕は缶ビールを、高々と掲げてうれしいしらせにかんぱいした、、、、、!


新しい命は、僕らに希望を与え将来の人生設計を立てるように促した。それと同時に新しい命は、僕にやる気や生活の張りをもたらし、しごとにも熱が入るようになる。かおるとその子の二人を守り、支えるための計画が僕の中で着々と進んでいった。やがて、具体的な式や段取りを、かおると話し合い、僕の実家に、かおるを連れてくる日が近くなってきていた、、、、、!


そんなある日、いつものように八時ころ、アパートに帰った僕は、真っ先にネクタイを外した。そして冷蔵庫の中から麦茶のビンを引っ張り出し、流しにつけてあるコップをすすいで、ついだ麦茶を一気に飲み干した後、いつものようにかおると電話で話をした後、眠りについた。


その日の深夜、僕のアパートの固定電話が鳴った。




かおるが交通事故で死亡したと伝える電話が、その日になった、、、、、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る