龍のスナイプ

花龍

第1話馴染みの喫茶店

 12月のある日

 俺、中島大悟は高校の同級生岩田慎也、

高橋健太、宮田正樹と共に葬儀場を

訪れていた。

大吾「おばちゃん。」

美代子「大悟君に皆来てくれたんだねぇ。」

俺におばちゃんと呼ばれたこの人物は

俺達4人が毎日通いバイトもさせてもらった「喫茶ワルサー」の主人石岡鉄の奥さんの

 石岡美代子さん。

俺達は親しみを込めておばちゃんと

呼ばせてもらっている。

今日は「おじちゃん」こと

石岡鉄の葬儀の日だ。

おじちゃんは1ヶ月前

急に倒れてそこから直ぐに亡くなった。

死因は脳溢血のういっけつ

享年75

まだ色々話したい事があったんだがなぁ。

人の命というのは呆気ない物だなと

常々思う。

俺達は焼香を済ませると

おばちゃんに呼ばれた。

美代子「店の事なんだけどねぇ。

あなた達継いでみる気無い?」

大吾「え? 俺達が?」

美代子「そう。うちの人

もし俺に何かあったら

あなた達に店を継がせたいって

言ってたのよ。」

大吾「おじちゃんがそんな事を……

皆どうする?」

慎也「俺はやってみたい。」

同級生の1人である慎也が口を開いた。

健太「俺もやりたいけど

上手く出来るかどうか……」

自信が無さそうな声で

同級生の高橋健太が続く。

正樹「俺達で出来るのかな……

勿論ワルサーは残ってほしいケド……」

宮田正樹も不安そうな答えだった。

美代子「大丈夫。うちの人は

あなた達の為にマニュアルを

残してくれたのよ。」 

大吾「マニュアル?」

するとおばちゃんは大学ノートを

大きなリュックから数冊取り出した。

美代子「これなんだけどね。」

俺はそのノートを手に取った。

そこには飲み物の種類と

作り方が分かりやすく丁寧に書かれていた。

そして他のノートにはデザートの作り方や

各食事メニューの作り方が書かれていた。

俺達は1冊ずつノートを持ち帰り作戦会議を電話で行った。

大吾「なぁ? どうする?」

慎也「確かに今ぱっと見たけど

分かりやすいな。」

健太「何だかやれそうな気がしてきたよ。」

正樹「これなら俺でも出来そう。」

大吾「よし、決まったな。」

こうして俺達は喫茶ワルサーを継ぐ事を

決めた。

そしておじちゃんの葬式から3ヶ月後

俺達はおばちゃんに店を継ぐ事を伝えた。

そして3月俺達は高校を卒業し

喫茶ワルサーを本格的に継いだのであった。

そして新しくなったワルサーの

オープン3日前

 その違和感に気付いたのは慎也だった。

慎也「なぁ、大吾。」

大吾「どうした?」

慎也「こんな扉あったか?」

大吾「うん?」

見ると男子トイレと女子トイレの間に「STAFFOnly」と書かれた扉がある。

俺は何回もワルサーに来た事があるが

この扉は初めて見た。

取り敢えず俺はおばちゃんに連絡を取った。

大吾「もしもし、おばちゃん? 大吾だけど。」

美代子「あらどうしたの大吾君?」

俺は謎の扉の事をおばちゃんに話した。

美代子「あの人がまだ元気だった頃に

工事の人が入っててね。」

大吾「そう言えば、2週間位休業してた時があったよね。」

美代子「その時にあの人が

絶対ここには入るな。

俺だけの秘密基地だからって

言ってたのよ。」

大吾「おばちゃんもその秘密基地の中は

どうなってるか分からないの?」

美代子「鍵が無いと開けられなくてね。」

大吾「鍵か。分かった。

こっちで探してみるよ。」

そう言って俺は電話を切った。

慎也「おばちゃんなんだって?」

大吾「どうやらこの扉の奥は

おじちゃんの秘密基地らしい。

しかも自分だけの。」

慎也「へぇ~。それで?」

大吾「そしてその秘密基地に入るには

鍵が必要らしい。」

慎也「何か面白そうだな。」

 すると健太と正樹も会話の中に

入ってきた。

健太「鍵ってコレの事か?」

健太の手には鍵が2つ握られていた。

 正樹「秘密基地の中って

どうなってるんだろうね?」

慎也「それを今から調べるんだろう?」

俺は健太から鍵を貰いSTAFFOnlyの扉を

開けた。

するとそこにあったのは地下に続く

階段だった。

大吾「階段?!」

慎也「地下に続いてるみたいだな。」

正樹「降りてみよう。」

俺達は恐る恐る階段を降りた。

すると更に扉が現れた。

大吾「また扉か。」

慎也「そして扉開けたらまた階段って

オチは無いよな?」

健太「そりゃ流石に無いでしょ。」

正樹「俺も無いに1票。」

大吾「よし開けるぞ。」

俺はさっき使わなかった方の鍵を使って

扉を開けた。

すると突然電気が付いて

巨大な部屋が現れた。

そして周りには高性能なゲーミングPCと

周辺機器が4つ置かれていた。

更には冷蔵庫やエアコン等の家電も

置かれていた。

そして奥には謎の扉がまた1つあった。

大吾「なんだこの部屋……」

慎也「ゲーミングPCにヘッドセット……

そして冷蔵庫にエアコン……」

正樹「まさかおじちゃんここでゲーム

してたんじゃ……」

健太「おじちゃん一言も俺達に

ゲームが好きとか言わなかったよね……」

驚く俺達4人。

取り敢えず俺はおばちゃんに電話をして

秘密基地の中身を話した。

大吾「というわけなんだけどおばちゃん1つお願いがあるんだけど良いかな?」

 美代子「何?大吾君?」

大吾「パソコンって言うのは

パスワードが無いと開かない仕組みに

なってるんだけど

俺達はそのパスワードは分からない。

そこでおじちゃんなら大切な記念日とかを

パスワードにするんじゃないかと思うんだ。そこでおばちゃんに色々教えて欲しいんだ。結婚記念日とか誕生日とか。

おじちゃんを一番近くで見てきた

おばちゃんなら何か手がかりになるような

事を知ってるんじゃないかと思ってね。」

美代子「解ったわ。まず結婚記念日だけど……」

こうして俺達のパスワード解読が始まった。

色んな数字のパターンを試したが

どれも当てはまらなかった。

おばちゃんの誕生日や2人の結婚記念日、

2人の子供や孫の誕生日等

記念日的なものでもダメだった……

大吾「ダメだ! どれも不正解だ!」

慎也「もうちょっと周りを探してみるか?」

正樹「そう言えばこの部屋って

トイレ無いのかな?」

健太「あの奥の扉が

トイレのドアだったりして。」

正樹「あ、本当だ。ここがトイレか。

うん?」

大吾「どうした正樹?」

正樹「大吾これ見て!」

大吾「何だよ?」

正樹に言われてトイレの左側の壁を見ると

そこには1970.4.1 と

彫刻刀の様な物で掘られていた。

大吾「これって……」

慎也「ワルサーのオープン日?」

健太「そうかもしれない。」

大吾「早速入れてみる!」

俺はパソコンのロック画面に「197041」と打ち込んだ。

するとロックが解除され

ホーム画面が現れた。

そこには……   

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