第20話:うちでは飼えません。
「……ッ!」
何があった! ここはどこだ? なぜ俺は意識を失っていた?
「目が覚めたみたいね」
「……助けてくれたってことでいいんだよな」
俺の目の前に現れたのは、深い、深い迷いの森をイメージさせるような緑髪をした1人の幻想少女。
「グリエルよ。貴方と同じ任務を受け、雪に倒れていたのを保護してシェルターに退避、今に至るわ」
「ありがとうグリエル。近くに俺の仲間は居なかったか? 雪崩に巻き込まれたんだ、埋まっているかもしれない」
「今は猛吹雪で、外に出て活動すればすぐに凍死よ、リスキーだわ。それに、幻想少女は3時間くらいなら空気を取り入れなくても平気だし、埋まってしまっても自分で脱出できるでしょう」
「……この場所の正確な座標はわかるか?」
「無理ね。天候のせいで電波が届かないの、大雑把な位置しかわからないわ」
「……モールスくらいならギリ届くか?」
「それでも相当厳しいでしょうね。吹雪が落ち着くのを待ってかしら。何を送る気なの?」
「この部隊も俺の部隊も、行き着くところは同じなんだ。変に捜索して時間を浪費するより、目標を集合地点としたほうがいい」
そこで、俺はある違和感に気がつく。
「なぁ、床に倒れていた、と言ってたよな? 埋まっていた、ではなくて」
「……………えぇ、そうね。若干雪が覆っていたけど、雪崩に巻き込まれた雰囲気ではなかったわ。時間経過で雪が積もった感じだった」
「……なら、なぜ俺だけ埋まっていなかった? いや、そもそもなぜ俺は偶然にも他の部隊の進行方向に倒れていた?」
気を失う前、最後に見たであろう光景が脳裏に、霧をスクリーンにしたかのようにぼんやりと浮かぶ。しかし、その手がかりでさえも風に吹かれて霧散してしまうのだ。
◇◇◇◇◇
Reader-アスナ
「……これ、どうしよう」
拾い猫、もとい拾い指揮官を連れて洞窟に避難。凍えていた様子なので俺が羽織っていたコートを被せて焚き火を焚く。床に寝かせるのもあれだし、膝枕してあげてるけど……………
「いやいや、さりげなく介護してるけど、これやべぇでしょ」
俺が考えたシナリオでは、ここでニュービーと会う予定ではなかったんだよな。むしろイエルロと会いたかった。
不幸中の幸いか、ニュービーは俺のことを認識する前に気絶した。このままほっぽって知らんぷりをするの手、なんだがぁ……
「グリエル部隊の進行が思ったより遅れているんだよなぁ」
このままにしておけば八割五分がた死ぬ。しかし助けたことを報告されてしまっては、組織上で詰む。
「どっちを取っても破滅の一歩なんだよなぁ」
はぁ、あまり使いたくはなかったが……
「使いますか、OYS」
グリエル隊とニュービーの糸を繋げてぇ〜〜〜……………これでよし。あとは進行方向に適当に投げておくだけでいいでしょ。
彼の胸ポケットを漁り、ライターを取り出すと手に握らせて火を付けさせる。
「すぅ—————ハァ〜〜〜」
俺もぼちぼち仕事するかぁ。
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