第21話:ソシャゲの覚醒素材、だいたい無課金で集めるのキツい説
「……なっ、めるんじゃないわよ!!」
雪崩に巻き込まれてから2時間と少し、私は雪の牢獄からの脱獄を成功させていた。
「他の3人は!?」
スカレットとブルースならまだいい。ただあのモヤシ指揮官だけはすぐに救出しないと15分ほどで死ぬ。
猛吹雪のせいでGPSが使えず、捜索が困難に。自分の出土位置から推定して、流された大まかな場所に向かって棒を突き刺す。
「オルターのババアが言ってたこと、無駄じゃなかったわねっ!」
憎たらしいにやけ面を思い出しながら、懸命に救助を続ける。
その時、吹雪に切れ目が入り、一時的に電波が復活する。慌てて発信機を確認するが、それよりも前に通信が入る。
『・-・・ ---・- ・・ ・・-・・ --・・ ・・ --・-・ ・・』
「何これ……何かの暗号?」
あーもう、こう言うのはスカレットの役割なんだって。何言ってるのかわからないわよ!
だめ元で記録だけしているが、解読の兆しは一切なし!
『-・-- ・・ ・-・-・ -・・・ ・・ --・-・ ・・- ---- ・・ ・・-』
「スカレット! 早く起きなさいよ!」
「和人無事、現場集合、だってよ」
「スカレッ———ッ!?」
声をかけられ、振り返ると……
「クロノ・ホワイト!?」
「よっす」
「…‥なぜここに?」
「野暮用だよ。君たちも、ここに俺がいることを期待してとっとこ来たんじゃねえか?」
会話を繋げながら、後ろ手でバーナーカッターを抜く。ちゃちなものだが、無手よりはマシだろう。
「他のみんなは?」
「発見できたのはお前だけだよ。相当奥に流されたらしいな、俺の目でもギリギリ捉え切れる程度だ。っていうか、モールスくらい覚えておけよ、中坊じゃないんだぞ?」
「悪かったわね。で、その暗号が本当だって言う証拠は?」
「人の善行を疑うもんじゃねぇぞ、というか嘘を付く理由がないだろ。このまま放置しても、お前は文字通り五里霧中だ」
半分ほどまで長さを減らした煙草を吸い、ニヒルな笑みでにははと笑う彼女に対して、何も言うことができなかった。
「はい、それじゃあ楽しいピクニックだ。オヤツは300クレジットまで、先生バナナ嫌いだからオヤツ側に入れとくわ」
「はぁ!? 何あんたが仕切ってるわけ?」
まずは2人と合流しないと、私だけではこの化け物を抑えきれない。
「他の2人だったら気にしなくていい。一定周期で通信がループしているから、そのうち気がついて目的地に向かうさ。そもそもの目的である俺から目を離していいのかい?」
「〜〜〜っ! 行くわよ!!」
「にはは。んじゃ、出発すんぞ〜
せいぜい振り切られないようにな?」
「—————ッ!!??」
瞬間、目の前にいたはずのクロノの姿が消えた、と思ったらすでに20メートルほど先に進んでいた。
「能力!? ……いや、純粋なスピード!!」
オルターの報告では、クロノ本体の機体性能は、B級中位ほどの性能しかない。
これでも才能の塊と言われた私が追いつかない理由がない。なのに……!
「距離が縮まらない! 純粋な速度は私が優っているはずなのに!」
おそらくこれでも手加減されている。あえて私の一回り下くらいの速力で。
「何が違うの? シンプルなスピード勝負、経験の差で離されるはずがない!」
おそらくこれが、私の殻を破るヒントになる。彼女にあって私にないもの、一足一手も見逃さない。全て吸収してやる。
「もう二度と、仲間を危険に晒す訳には行かないのよ!」
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