第17話:語らい
「ふぅ、天音指揮官は何を頼む? ここのライスバーガーは絶品じゃぞ」
「……………じ、じゃあそれで」
「むぅ、もう少し緊張をほぐして欲しいがの、別に取って食ったりする訳じゃあるまい」
「そうですが……………」
いや、そこを心配したわけではない。問題なのは相手が知神下ろしのオルターであること、その人が本物のオルターであったことだ。
世間一般のオルター様の認識は、オルターという名前は拝命制であるということ、何度も代替わりを果たして、今のオルターは5代目であることだ。
先日の会話から、A37………アスナと同じだけの時間を生きていることはわかっている。つまり彼女の年齢は100歳を超えており、その幼子のような外見から明らかにただの人ではないことは容易に想像できる。
———つまり、今俺にはオルターが目の前に座っていることと、オルターが幻想少女で、全て同一人物であったという情報のダブルパンチを胃に喰らっているわけだ。
これ、万が一外部に漏らしたら殺されるんじゃないか?
世間一般の幻想少女の扱いは、まさに道具、ていの良い踏み台。オルター様は楽園を背負う最高司令官、信用問題に関わる。
「にはは、もし天音指揮官が漏らしたとしても、情報統制を敷くからな、心配せんでも良い」
「さりげなく心を読まないでください…………であれば、どのようなご用件でしょうか」
「いや、ただ一緒に食事をとりたかっただけよ。互いに好みのものを食べ、隣り合い知る、それがわしなりの親交じゃ」
その時、ちょうど料理が届いた。
貴重な紙に包まれたそれは、黄金色に輝くテラテラとした表面に、米を焼いた時のおこげがより食欲をそそる。肉は最高の代用ミートで作られており、自ずと高級品であることが察せられる。
作法が分からず困惑していると、オルター様がむんずと紙ごとそれをつかんだかと思うと、大口を開けて齧り付いた。
「わしはテーブルマナーなんぞに縛られる交友関係を送りたくないのでな」
その笑顔のあどけなさは、見た目相応に見えた。
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