第6話:【配信】ホロメモ世界にチャチャ入れる。

「———ッ、ピチ、パパパ———ガッ!?」


危ねえ、意識飛ばしてた! 奴は……!!


「や、やった……………!!」


勝っ———痛ッ!!


「に、にはは。全身ズタズタだ」


立ち上がるのも一苦労。しかし軋む身体の一つ一つが、今の俺にとっては至高の讃美歌に聞こえる。


「そうこうしている場合じゃねえ、早く拡張メモリーを見つけないと—————」




———その時




『ザ———ザザッ———ゅう報告! 緊急報告!! 第六幻想隊が報告にあった特異機械人形と接敵、部隊はオリジナルを残してほぼ壊滅! 生存者一名!』

「ッ!!?? 早い、流石に早すぎる!」


———いや、俺が


「今、何月何日だ!?」


くっそ、一週間以上グルってた!!


どうする!? 拡張メモリーなんて探してる暇ねぇぞ! 


「ッ!」


幻想少女の遺体! 後頭部をバーナーカッターでこじ開け、脳メモリーを拡張メモリーとして転用する!


元はと言えばこの幻想少女の脳そのもの、どんな副作用があるのかわからないが……


「試すっきゃない!」


どうかッ…‥間に合ってくれよ!!






◇◇◇◇◇






「みなさんこんチャイ! 茶々イレルです! 今日は今話題のソーシャルゲーム、『幻想少女 ホロウメモリアル』をプレイしていきます!」


《こんチャイ〜》

《こんチャイ!》

《こんチャイ 幻想少女か、人気だよな》


「こんチャイです! 人気ですよねぇー」


茶々イレルとして活動を始めてから一年ちょい。メンバーさんも出来始めてノリに乗っている今、話題のゲームを遊ぶことで新規さんをもっと増やしたい! まぁ、俺がこのゲームをやってみたいっていうのも一つの理由だけど。


「タイトルの娘たちも可愛いですねぇ。どの子が人気なんですか?」


《真ん中のスカレットちゃん。赤がモチーフのクール娘で、誰よりも強い情熱を持ってる》

《ブルースちゃんでしょ。包容力たっぷりなロリなのにドジっ子キャラだぜ?》

《グリエル様だろぉ? ネタバレになるから言えないけど、ストーリーがいい》

《だ、誰かイエルロちゃんにも触れてあげて……》

《くーるびゅーてー(笑)はちょっと……》

《おい、カーペットちゃんをイエルロって言うのはやめろよ》

《↑逆ゥ!》


「あはは、いろんな子がいるんですね。この白髪ロングの子はどうなんですか? ビジュが好きなんですけど」


《あっ(察し)》

《その子だけはやめとけ、悪いことは言わんから》

《また1人、アスナ沼につかる人が増えたか……》


「ふ、不穏なこと言わないでくださいよ……」






◇◇◇◇◇






「やばい! 負ける!!」


普通のソシャゲであれば焦ることはないのだが、噂によればホロメモはマルチエンディングを採用している。

初配信でいきなりバッドエンドは流石にまずい。


「頼むスカレットちゃん!」


『繋がれ、私の意志よ! 『演算共有ワンforオル』!!』


味方の性能をアップさせるスカレットのアルティメットスキル! だが、今は味方が一人しかいないせいで、その効力を最大限に活かしきれていない。


「スカレットちゃん!?」


まずい、前線で弾幕張っていたメイン火力がいなくなった! 残るはメイン盾のブルースちゃんのみ、武器はハンドガンオンリー。


《あぁー、これは終わったな》

《どんまい、次がある!》

《乙》

《ん? おまいら知らんの? 最初のチャプターでバッドエンドになることはなくなったんやで?》

《↑ま?》

《本当。そのかわり—————いや、見た方が良いか》


コメントが流れていくが、今読み上げている余裕がない!


「誰か助けて!」



















《来た》













一瞬のカットインが入った瞬間、戦闘からムービーへと切り替わる。


白い閃光、ミステリアスな眼帯、口元からたなびく紫煙、そして……世界観に合わないものを腰に帯刀しているという圧倒的個性。


『……にはは』


朗らかに笑った彼女は、歌うように必殺技を宣言する。




画面が歪んだ。いや、そんなことは絶対にない、そもそもそんな描写は開発者も想定していない。


でも俺には……………少なくとも何かが変わったって、そう感じた。






『加速しろ、俺だけの世界……『超越加速タキオン』』

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