第5話:不完全
———踊るパペット、嘆きの壁、番いの鐘、
人は人より、流されて、悩ましけれや、あゝ、
「ガァッ!!」
———無常。
意味のない妄言を詠う機械生命体に踊らされ続け、俺の身体は最早、無事なところを探す方が困難になっていた。
「クソッ!」
なりふり構っていられない! 研究を傷つけない為の立ち回りから、制圧の方向へとシフトする。
「グレネードッ!」
敵を中心に跨いで対角線に投げることにより、擬似クロスファイア———がッ!!
「そうだよなッ!」
簡単に撃ち抜かれて終わりだよ馬鹿野郎!
なら壁を利用した跳弾を!
———
近接で奴の主要コードを断ち切るッ!
———
次の手段!
———
ならその次を
———
次がある!
———
やめろ
———
やめろ!
———
「来るなァァァ!!」
意味も無く乱射する俺に、圧倒的装甲で銃弾を弾きながら冷酷に近づくブリキ。
「—————掛かったァ!!」
指定位置まで侵入してきた瞬間、ガス漏れを狙って天井のパイプを—————!?
———
「嘘」
———パァァァァン
「ガッ……………ふッ」
ぐるんと視界が回って飛んで、意識が弾ける。壁に叩きつけられ、全身の強化骨格が砕かれてはい終わり。
「立ち上がれ、立てよッ!」
殺される、殺される、殺されるッ!!
———ずりゅ、
工業用シザーカッターが、俺の右腕を切り取る。
「痛い! ……………え? うぁ? あぁ……………ア、アァァァァァァ!!!??」
脳が思考を停止し、本来すぐ来るはずだった痛みが遅れてやってくる。
「アァァァ!! 痛い、痛いぃぃぃ!」
幻想少女になった挙句、組織の言いなりにやられ、記憶を取り戻しても全て完封され、足掻きも許されず、なぶり殺されるだけ。
それが俺の今世。
……………コンテニュー、させてくれよ。
「こんな、はずじゃッ!」
俺が、主人公を助けに……………!!
「奴の弱点は額のコントロールチップ、直径10×10cm。本来ならば三体の幻想少女が協力して左右の巨大アームを無力化、残った一人が弱点を狙う」
でも俺は一人しかいない。残弾も残り3発。
「一人で全部やる。一人で左右のアームを抑えながら撃ち抜く」
———わかってる、俺はスカレットみたいに冷静に判断できない。
右のアーム、いままでの接触から分かる、経年劣化で出力が落ちてる。掻い潜ってグレネード、施設を守るために注意が向いているところを1発。
———ブルースみたいに強い勇気と、覚悟を持ってない。
左のアームはほぼフルで動けるポテンシャルを残してる、正面突破は無理。なら…………何かで動けなくすればいい。
「オラッ!!」
———ガィィィィン!!
切断された俺の右腕を蹴り飛ばし、左アームに捕獲させる。そこを……………!!
———パァン!
腕のコアを撃ち抜き、暴発させるッ!!
「はッはー! これが本当の手榴弾ってねェ!!」
最後!!
思いっきり地面を蹴り、廃材を利用しながら頭部に近づく。
———ラスト、一撃……………!!
———そして、全ての銃口が俺の方を向いた。
———イエルロみたいに戦いの天才じゃない。
「—————関係ないねェ!!」
わざと物理攻撃を喰らい、お目当ての方向に吹き飛ばされる。
「これが俺の逃走経路だッ! そして……………来たッ!!」
その先は……………
「—————ァァァァァァアアア!!!」
左眼だけ抉り出し付け替える。やっぱりマニュアルは片方ずつ、ならば負荷も二分の一ィ!!
脳を侵食される不快感に耐えつつ、使える機能を最大限活用し、終わりを告げる。
「……………ばいばい」
———パァン
勝った。しかし俺の唯一の誤算は……………
再び俺が起動するまでに、一週間の時が流れていたことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます