第3話:新米指揮官

Reader-ゲームの主人公


無限に続くかと錯覚するほどの無機質な廊下に上官と二人、ブリーフィングを行っていた。


「今日より、お前はHMDホロウメモリアルドールズの一員となる」


一員。その言葉に思わず歓喜の笑みが溢れ、今までの努力を認められた達成感。しかし、これからの生活のため気を引き締める。


「ありがとうございます、全力の限りを尽くしたいと思います」


ほぼほぼ社交辞令のような挨拶になってしまったが、これで大丈夫だろう。


「よし。それでは、今よりアマネ隊となる幻想少女を発表する」

「はい……?」


発言におかしなところがあったので問う。


「あの、意見よろしいでしょうか」

「許可する」

「幻想少女は自分で選ぶのではなかったのですか?」


その質問に一瞬哀れみの微笑を浮かべたかと思うと、こう答えてくれた。


「教えてやろう。近年幻想少女不足が問題視されているが、それは何故か? 答えは簡単、人不足だ。あぁ、ここでの人不足はのことだがな」

「……………つまり、有り合わせ、と?」

「いや? 使いこなせれば実力はピカイチだ」


使いこなす、と言う言葉に違和感を感じる。


「とにかく、幻想少女を見るのは初めてだろう? 早速合わせよう」

「はい」


隣の部屋に続く扉を潜ると……………


「……? 幻想少女は何処にいるのですか?」


そこにいたのは、まだ高校生から小学高学年程の少女しかいなかった。


「おいおい、もうとっくに見えてるぜ? こいつらが—————」


「幻想少女です、アマネ指揮官。スカレットです」


3人の中で一番背の高いすらっとした少女が話しかけてきた。燃えるような目と、半ばほどからウェーブかかった、朝焼けのようなグラデーションを有した髪がとても良く映えている。


「こ、この娘たちが幻想少女!?」

「がっはっは! 新人はみんなそう言うがすぐ慣れるさ!」


その時、明らかに『私不機嫌です』と言う態度をとっていた黄色のツインテールの子が声を出した。


「うるさいわよ、ゴリラともやし」

「もやし……………」

「どうしたイエルロ? そんな口を聞いていいのか?」

「……………チッ!」


……………?


「では、最後は私ですねぇ。ブルースと申します、どうぞお見知り置きを〜」


……3人の中で一番背が低いのに一番まともだ。


「俺はこの娘たちを守る責任を果たせるのだろうか……………」


ボソッと呟いた声が聴かれたようで、上官が俺と肩を組み、小声で話してくる。


「勘違いしちゃいけねえぜ? 俺たちはだ。どう使うかはお前次第だし、使も良い。動かなくなったら処分すれば良い。どうするにしても指揮官が責められることは何も、無い」


「—————は?」


「そもそもお前は幻想少女のことで一つ勘違いをしている。いいか、奴らにとって一番の原動力はココロだ。喜びでも、悲しみでもいい、とにかく強い感情を持っていれば自ずと成長する。つまりだ……………」




「心に一物を抱えてる奴ほど強く、強い奴ほどそれがでけえんだよ。特に『英雄の一突ヒーローズエストック』にだけは関わるな、あいつらはだ」


理想と現実の差に、段差を踏み外しそうになったような浮遊感を覚える。


「とにかくだ、これから一緒にやっていく奴ら同士、親交を深めろ! じゃあな!」


……………俺は、この世界でやっていけるのだろうか。


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幻想少女


見た目は限りなく少女に近いが、侮ってはいけない。成人男性の十数倍から数十倍のりょ力を持ち、銃火器を扱う精度も高い。


量産型とオリジナルの二種類存在し、名の通りオリジナルはそれぞれを表す異能を所持している。

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