豪剣VS大魔導士&機工士

 ジャングルから少し歩いた先の荒野。照りつける西日が赤茶あかちゃけた大地を焦がす。そこに広がるは鉄柵に囲まれた工場地帯。


 リュートはそこを汗だくで歩いていた。なぜか傷は癒えている。


「あちぃー! どこだー! つえぇやつ!」 


 強敵を探す豪剣。それに応えるように。


「お? んだありゃあ」 


 ガシャン、ガシャン。


 黒く発光する四足歩行の機械装甲きかいそうこうが、闊歩していた。その見た目はまるで獅子しし


『対象を発見。処分する』 


 見つかった。不穏な機械音をたてる。


「かっけぇな、おい!」 


 能天気にもリュートはその機械を見つめた。


 ――機械内部。


「ねぇ、これホントに大丈夫なワケ? オニーサン。即席で作ったにしてはエグしっかりしてそーだけどさぁ」 


 彼女は大魔導士だいまどうしステラ。


 ウェーブのかかった長い赤髪は情熱的。唇に塗られたボルドーリップがあでやか。更にはピアス等のアクセサリーで着飾っている。服装はダルダルの制服。いわゆる……ギャルだ。


 助手席ですらりとした脚を組んでいる。


「任せてくだたい! ボクとキミの二人が作ったからなんとかなるでゴザル」 


 彼は機工士パルミドローテ。


 もっさりとした茶髪にキャップをかぶる。ふくよかな体型が愛らしい。へそのはみ出るサイズの半袖にはとある魔法少女のキャラクターのプリントがなされている。いわゆる……オタクだ。


 運転席で得意気にハンドルを持つ。


 豪剣リュートVS大魔道士ステラ&機工士パルミドローテ、開戦。


「喰らえや!」 


 素早さはリュートが上回った。舞い、踊るような剣戟が機械装甲に命中する。


 だが、違和感。


「は?」 


 装甲には小さなひび一つしかついていない。


「やったじゃん! これ余裕で勝てるんじゃん?」 


「そうでつね。これで、終わりでつ!」 


 パルミドローテが攻撃指令を下した。目前の画面の標準が、リュートが合う。


魔力装填まりょくそうてん完了』 


 魔力が機械装甲の口部分に収束していく。目がくらむほどの輝きを蓄えて――。


発射シュート』 


 放たれる。超高熱の光線が工場を、大地を裂く。それが炸裂して炎の壁となった。工場の施設にも誘爆。広範囲が消し炭に。


「おいおい……あんなん、掠っても終わりだぜ」 


 リュートは飛びのいて回避したようだ。熱線の命中精度がそこまで高くなかったのが幸い。


『なんだアレ。連発できるなら世界ごと消せるんじゃないのか?』 


 観客はざわついていた。


「ねぇー! 当たってないじゃん! なにしてんの? もっとよく狙ってってば!」 

「いや、急ごしらえだからでござるよ」 


 この機械装甲は二人の合作。工場で集めた鉄屑てつくずで機工士が超頑丈な装甲を作成。それを大魔導士が絶大な魔力を込めて完成させた。リュートがやってくる直前に。


「これでは埒が明かないでつね。こうなったら!」 

「え? まさかだけどアレ使う気じゃないっしょ? 考えなおそ? ね?」 

「やるしかないでつ!」 

「やめてっ!? それって……! アタシ嫌だよそんなの!」

「キミだけは脱出装置で助かるでゴザル」


 かちり、と。その機工士がスイッチを押す。


『自爆装置、起動。三十秒前』 


 無慈悲な機械音がなり鳴り響いた。


「おいおい。させるかよぉ!」 


 ――普通に叩くんじゃ駄目だ。叩き方が重要だな。


「ここだぜぇ!」 


 抜刀。


 装甲に先ほどつけた、ひび。そこだけを抉るようにして切りつける。


「おおあああああ!」 

『残り五秒前』 


 終焉へのカウントダウン。


『四、三、二、一……』 


 カウントダウンが、過ぎた。


 だが何も起こらない。つまり――。


『外的要因により、全機能停止』 


 爆発を、止めることに成功した。


「ぜぇ……危なかったが、なんとか止めたっ、ぜ……はぁ」 

「な、なんてパワーでつか……キミ」 


 装甲の中からパルミドローテが出てくる。


「良かったよぉー!」 

「なんとっ!?」 


 間をおかずにステラが後ろからパルミドローテに飛びついた。


 瞳をうるませながら本心をさらけ出す。


「アタシ、やっとできた友達を失いたくなんてないよ……! さっきアレつくってて作っててめちゃくちゃ楽しかったんだから!」 

「そ、そうだったんでつかステラ殿……! ボクもでゴザルよ!」 


 二人の身体が光に包まれる。


 そうして、消え去ってしまった。


 あっという間の出来事に、呆然ぼうぜんとする金髪の男。


 ――これは、俺の勝ちなのか?


 会場では。


『なんで消えたんだ? 二人は傷もついてないはず』 

『でも次がいよいよ』 

『ああ、最終決戦だ』


 リュートの内心とリンクするように。勝利条件に対する困惑と、最後の試合への期待で溢れていた。


 豪剣リュートVS大魔道士ステラ&機工士パルミドローテ、決着。


 

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