豪剣VS魔王
満月が、闘技場を明るく照らす。
リュートは
「戻ってきちまったな。って、お?」
舞台の上。リュートはいつの間にか目の前に対戦相手がいたことに気付く。
「おい! お前が最後の対戦相手か? 勝負しようぜ!」
リュートが駆け寄り声を掛けたのは、黒いドレスをまとった女性。
「気安く話しかけるでない、
「――!」
ゾクリ。なぜか
冷や汗が頬を伝った。
この圧倒的な存在感。分かりきっていたが、剣士は問うてみることにした。
「お前、役職は!」
女性はフードをゆっくりと脱ぐ。そしてその気高き声調でもって、役職を告げる――。
「魔王じゃ」
魔王ヴァリアンテ。その流れる黒髪からは
「魔王……! 相手にとって不足なしだな」
「たわけ。貴様のような
豪剣VS魔王、開戦――。
「うらぁっ!」
抜刀。
獣のような俊敏さで豪剣が魔王に切りかかった。瞬間的に額へと刃が振り下ろされる。
『すげぇ! 今、なにも見えなかった! カッケェ……!』
と、ドーム会場から歓声が上がる。
「もらったぜ!」
しかし。
「甘いわ」
ヴァリアンテの低く、ドスの効いた声。同時、光の防壁が自動的に刃を防ぐ。
「やっべぇ……!」
それだけではない。
衝撃を何十倍にも膨れ上がらせたものが返ってくる。またしても壁面にまで吹き飛ばされたリュート。
「うぉあっ!?」
「つまらん。出直してまいれ。わらわの勝ちだ」
『強すぎだろ、魔王』
会場全体が、その実力の差に啞然とする。
――俺の持ち前の反射神経が通じねぇ。どーすっかなぁ。てか今、勝ちって言ったか?
豪剣は手も足も出ない。そこで口を回してみる。
「なぁ、あんたはここの勝利条件ってなんだと思う?」
「知らぬ」
「俺は、対戦相手が気持ちよくなったら勝ちだと思う」
「何を言っている、
ヴァリアンテは汚物を見るような目でリュートを見る。
「だって、ここまで全部ぶっ倒してきたけど元の世界に帰ったっぽいのは負けた方だったから。バカップルに関しては傷ひとつつけてねぇし。でも満足そうだった。逆に言えば」
豪剣は刀を見やる。
「俺は、まだ気持ちよくねぇ」
そして魔王を指さす。
「なぁ、あんたの願いはなんだ!? 片方だけ勝っちまえばそいつがここに残るかもしんねぇ! 二人で気持ちよくなんねぇとダメだ!」
「………………」
しばしの沈黙。やがて。
「
魔王の本心が、
豪剣は。
「ひひ。じゃあ」
狂気的な笑みを浮かべて。
「俺とおんなじじゃねぇかぁ!」
豪剣は地を蹴り出し、先程とは比べ物にならない速度で駆ける。
さらに、剣閃を
速い。自動防御では間に合わないと判断。魔王は初めて回避行動をとる。
判断が後れ、頬にダメージ。光が漏れる。
「ぬぅ」
「まだまだぁ!」
剣閃の雨。それが魔王に浴びせられる。
「もう喰らわぬ」
初見ではないと、
「そうかよ」
「なっ!?」
背後からの声。
剣閃は目くらまし。リュートは既にヴァリアンテの後ろに回り込んでいた。
ついに豪剣の斬撃が、魔王を捉える。
「がっ……!」
「やっぱな。自動防御は攻撃を完全に認識しないと発動しねぇ」
『おおおおおお!』
観客のボルテージは最高潮。
『魔王がこのフィールドに居座った理由は背後を取られにくくするためだったのか……!』
「くくっ。良い、良いぞ。
「マジか」
ヴァリアンテが翼を生やし、背中の傷を塞ぐ。空高く
「これだ! わらわが望んだのはこのような
「イカれてんな。お互いに」
魔王が、両手を突き出して。
七色の
「
それが降り注ぐ。
「っはぁぁぁ!」
豪剣、
――喰らうしか、ねぇっ!
このままではいずれ追いつかれる。ならばと。
魔王の元まで跳躍。刀を構える。
「血迷ったか! 幕引きだな!」
だが、まだ
「勇気をもって行動したやつが最後に勝つんだよ。あんたみてぇに待ってるだけじゃ掴めねぇ」
「それは――!?」
「バカップルが残してった絆の欠片さ」
リュートの
そして。
「俺の
抜刀。
魔王の切り口から光が零れる。
『おおおおおおッッッ!!!』
会場からも大歓声。
豪剣が、ついにあの魔王を討ち取ったのだから。
「ふふ……楽しかったぞ、豪剣。もっと早くに貴様に会いたかったな」
魔王は満足そうに笑んで消え去った。
リュートの身体も、光に包まれていく。
「ああ、俺もだ」
そして彼も笑顔で――消える。
豪剣VS魔王。決着。
両者、条件を満たした。よってこれにて全開放である。
×××
この世界から出たくば、己に勝て。
・参加者一覧表
豪剣 石川リュート 解放済
大魔導士 ステラ 解放済
機工士 パルミドローテ 解放済
狩人 ラストパレード 解放済
魔王 ヴァリアンテ 解放済
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