第11話 三人の家

それから数年、それなりに女性経験は積んだが、どれもこれも満たされなかった。


そんなつまらない日が続いたある日、

ルイが出かけてる間に衣舞が帰ってきた。


「ママは?」

「買い物。」

「……」

「なに。幽霊見るみたいな目しないでよ。」

「違う…その…」


ドキマギしてる間に衣舞に唇を奪われた。


懐かしい香り。サラサラの髪……。

思いが駆け巡って溢れそうになった。


「衣舞…」

「涼太。一人にしてごめん。」


そう囁いて首に噛み付いた。


「はぁあっ!……」

「…やっぱりあたし、涼太がいい。」


その後…痛いくらい抱きしめられて、背中に爪を立てられた。


「衣舞……」

「ママじゃ物足りないでしょ?」

「そんなことない…」

「…本当に?」


衣舞は僕の身体に歯を立て始めた…。


「…違う。」

「何が違うの?」

「…お前じゃない」


「あたしじゃない?」

「…衣舞じゃない。」

「…アミがいい?」

「……もうわかんない。わかんない…。」

「どちらにせよあたしではないってことね?」

「…わかんないんだって!!……ルイ!!!!…」


ドアの音がして僕は叫んだ。


「チッ…マザコン…。」

「マザコンで何が悪い!!俺とお前の親だろ!!」

「あんたの親でしょ?」

「…ひねくれてんじゃねぇよ!!俺らはルイに育ててもらったんだよ!!アミは、、アイツは…俺の財布からお金抜いて終わりだった…。そんな奴お前の親じゃない!!お前の親はルイだけだ!!俺もお前も、ルイだけだ!!!!…」


「そう思いたい!!思いたいの!!けど、あたしは、ママから産まれてない!!似てない!!アミの血が流れてるの!!…こんなんだったら生まれなきゃ良かった!!ママに殺されておけばよかった!!捨てられれば良かった!!…」


「……!!」


僕は思い切り衣舞の頬を叩いた。



「てめぇふざけんじゃねぇぞ!!!!…お前の名前付けたの誰か知ってんのか?!…お前いつからルイに育てられてるか知ってんのか?!」

「……。」

「お前に『衣舞』って付けたのはルイだよ。お前が生まれて数日でルイに渡したらしい。」

「なにそれ……」

「色々理由があったんだと思う。アミも若かったから。」

「その時ってママは一人だったの?」

「一人だったらしい。詳しくはわからないけど。アミはそう言ってた。」

「いつ聞いたの?」

「三日前。」

「会ったの?」

「いや、電話で。アミからかけてきた。」

「その話で?」

「いや、お前が元気かって。」

「は?今さら?」

「ずっと気にはかけてたって。ただ、置いてった身だし陰で見続けることしか出来なかったって。愛情が無いわけじゃない。ちゃんとお前はアミにも愛されてる。だから恨むな。」

「…でもあたしは、ママしかママって認めない。やだよ。今更。」

「それでいいと思う。アミの気持ちはアミの気持ちであって大事なのはお前がどう思うか、どう感じるかだろ?」


「…ママ!!…」


衣舞が部屋の入口まで駆け寄ってルイに抱き着いた。


「お帰り。心配したよ。」

「ごめんなさい!!…ママ!!ごめんなさい!!…」


僕は傍に行って、二人を包み込んだ。


「ルイ…ありがとう。」

「いいえ。」

「ママありがとう。」

「いいえ。」


「衣舞、お前帰ってこい。これ以上ルイに心配かけんな。」

「わかった。…ママいい?帰ってきてもいい?」

「当たり前でしょ?ここはあんたの家なんだから。」


「そうだよ、ここはルイと衣舞と俺の家。三人の家。」

「涼太、ありがとう。」



僕はこの時に明確に分かった。

やっぱり僕がずっと好きで好きでたまらなかったのはあのどうしょうもないクズみたいな女だった。



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