第3話石田屋事件
さて、みち潮を出た有志、藤岡、和田、高畑、田中、白窪、山﨑、大迫の6人はとんちゃんの石田屋に向かった。
昔この店は、サガリの刺し身が出ていたが、衛生法が厳しくなり、店側は焼いて食べる様にというが、藤岡と和田は生のまま、わさび醤油で食べた。
若い衆は、食中毒が怖いので七輪で焼いている。
とんちゃんも最高に美味しい。
ビールが進む。
大迫は彼氏の事で悩んでいた。
働いても働いても、彼氏がスロット代として給料の半分を持って行くのだ。断ると暴力を振るう。
ここは、藤岡と和田に頼るしかない。
大迫は、彼氏と別れたいと言っている。
給料日、夜勤の時は施設の駐車場まで来て金をせびるのだ。
その話しはまた、後になるが藤岡と和田は大迫を自由の身にしてやるのだが……。
高畑は彼女を探していた。高畑はどこか抜けていて、かわいい男だが30にしては子供っぽい。もっと、社会で揉まれた方が良い。
ガラガラガラ
入り口が開く。
そこには小久保施設長と取り巻きが立っていた。
「おっ、お前らもここか?」
「施設長、オレらもう出るんで座って良いよ」
「藤岡、久し振り一緒に飲もうじゃないか!なぁ、有馬」
「藤岡、和田、お前ら最近動き良いからな。奢ってやる」
「有馬さん、奢らなくていいよ」
「和田、お前、オレの酒が呑めねえのか?」
「はい。そうです」
「何だと?」
「何だとは何だ?有馬!」
和田は有馬に突っかかる。店内の雰囲気が悪くなるので、有志一同は店を出て行った。
支払いは、施設長の払いで!と、店員に言って他を当たる事にした。
有馬は介護福祉士の免許さえ持ってない。麻雀が出来るので上になったのだ。馬鹿施設長の腰巾着である。
1人の時は何も言えないクセに施設長がそばにいると威張る最悪なヤツだった。
こうなれば、居酒屋ナナを貸し切りだ!
モツ鍋で飲み直すことにした。若い衆は静かに飲んでいた。和田のさっきの言葉遣いを聞き慣れてないので、緊張しているのだ。
だが、酒は酒。
飲めば、皆んな自然喋りだす。12月のボーナスは来週だ。
各々の使い道がある。心配なのは、大迫。
翌日、藤岡と和田は大迫宅に向かう。
金髪でピアスだらけの男がいた。
「君ね、働く気はないの?」
「は?アンタ誰?オッサン」
「オッサンだが、大迫君の上司だよ」
「関係ねぇだろ?」
藤岡はキレる寸前だったが、和田が、
「君は病的なギャンブラーだね。治療が必要だ。後、警察にも連絡するから。君は暴力を振るうみたいだね」
「マヤ、お前しゃべったのか?」
大迫は、頷く。
「この、クソアマ!」
と、男は大迫の腕を掴んだが、藤岡がその右腕を捻り上げた。
「イテテテ、離せよオッサン」
「このまま、警察行こうか?」
「分かったよ!出て行くよ!」
「ホントだな?」
「……」
「とりあえず、知り合いの弁護士には話してあるから。君が奪ったものは大きい。お金と大迫君の人生を。お前、二度と大迫君に近寄るなよ!」
「分かったよ!」
男は、バッグに自分の物を詰めて出て行った。
大迫の身が心配なので、エントランスホールのある賃貸マンションを探した。
それまでは、藤岡が部屋を提供する事に。
それから、2週間後。
大迫の話しよれば、男は逮捕されたようだった。
男は半分はギャンブル、半分は覚せい剤に使っていたらしい。これで、当分安心して生活出来る。
そして、大迫も藤岡の仕事のチームに入れた。上からは嫌味を言われたが、ずっと一緒なら安心だ。
大迫は今後、幸せな生活を送ることになるのは目に見えていた。
その逮捕の話しを聞いたのは、藤岡と大迫が2人きりの時。
藤岡が大迫だけ誘って、小料理屋早水で飲んでいる時だ。
まだ、マンションは見つかって無かったので、一緒にタクシーで藤岡宅に戻る。
嫁さんは、
「あら、今日は遅かったわね。また、飲んだの?」
「奥様、すいません。私の相談事を聴いてもらっていたので」
「マヤちゃん、今日、会社の人から飲まないからと言って、ウイスキーもらったの。一緒に飲まない?」
嫁さんの加奈子は、ウイスキーのボトルと氷、炭酸を準備した。ツマミはナッツとチョコレート。
藤岡は、風呂に入って部屋に戻ると、大迫が加奈子と真剣に話していたので、遠慮してベッドに横になった。
女同士の会話も悪く無いだろう。藤岡は、そのまま寝てしまった。
女性陣は、夜更けまでウイスキーを飲んだ。
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