異世界出戻りTS少女と魔法少女

07：今後の行動方針

『早速、1人の魔法少女を助けてあげたみたいだね、流石！』

「……エレスティア様ですか」

『そんな顔されると泣いちゃうよ？』

「はいはい……」

『ルーナが冷たいっ！』

　というかいきなり念話してこないでください。普通にびっくりしますし、これ意外と頭に負担かかるんですから。

『えー……』

「とりあえず、話があるなら姿を見せてください……どうせ居るんでしょう？」

「むー。ルーナのいけずー」

　そういうと不満顔で姿を見せるエレスティア様。

「やっぱり居ましたか……」

「ふふふーそりゃあ、ルーナの初仕事だし見ない訳にもいかないでしょ？」

「見てたんですか……」

　流石は神様、お見通しのようだ。ってか、天照様ならわかるけど、なんでエレスティア様も分かるんだ……。

「それは企業ならぬ神様秘密です。それはさておき、謎のヒロインムーブはどうだった？」

「いやそんなのしないって」

「えーでも、明らかにあれは謎のヒロインポジだよ！」

「……」

　あの子を治療した後、他の魔法少女が来る前にわたしはその場を後にした。理由はまあ、幾つかあるけれど、恐らくあのままあそこに居たら他の魔法少女と合わせてわたしについて聞いてくるのはまず間違いない。それはちょっと面倒だ。

　わたしとしてはまずは情報収集をしたいし、どんな感じに戦っているのかを確認したかっただけだし。

　戸籍等については女神様のおかけで大丈夫だけど、住所とかいろいろ向こう側に知られるのは避けたいところだ。

　そもそも、魔法少女じゃないし……男だし。いやまあ、この見た目でそんなこと言っても10人中10人全員が何言ってんだこいつって感じになるだろう。

　大体、わたしの場合は変身しないのだ。そんな変身しない状態で魔法を使っているとか、地球側もとい、魔法少女・魔法省側が絶対に問い詰めてくる。

「……別にそんなつもりはないんですけどね」

　話を戻そう。

　あの子を治療した後は、まあ色々と面倒にならない前に姿を消して家に戻ってきた訳だ。でもよく考えれば、あの魔法少女からしたらいきなり現れて助けてくれた謎の人物って感じになってるだろう。

「まあそもそも陰でこっそりサポートと化するっていうのも謎のヒロインムーブだし」

「……うわ」

　確かにそうかもしれない。

　でもなあ、大々的に公で何かするのは流石に問題がありすぎる。さっきも言ったけど、わたしの場合魔法は使えるけど、魔法少女として変身する訳ではないのだ。そのまま戦っている。

　向こうの世界ではこれが普通だし、変身なんてしなくても使える人はいろんな魔法を使っているし、地球みたいに少女に限られることもない。

　なので魔法少女ではなく、魔法使いとか、ウィザードとかウィッチとか……そんな感じで呼ばれている。わたしの場合は勇者だとか戦女神だとか女神様だとか言われたけど。

　……エレスティア様が常に近くに居たのもあるからまあ、女神というのはあながち間違いではないのかもしれないけどさ。

「でも、大々的に戦う訳にもいきませんしね」

「まあそうだよね。ルーナの場合は普通に生身で魔法使うもん」

「向こうの世界はそれが普通でしたからね」

「そうだねー」

　ちらほらと言っている向こうの世界……というのはもちろん、僕が転移させられた異世界”エレスティア”のことである。

「ここだと魔法使うのは魔法少女だけってことになってるし。まあ、ぶっちゃけ最悪、私と天照でルーナについては隠蔽できるけれど」

「……今更なんですけど、神様が1人の人に肩入れしていいんです？」

「神様だし。誰に肩入れしてもいいじゃない」

「あ、うん……そうですね」

　横暴すぎる。

　でも確かに神様に誰が文句など言えるのだろうか。そもそもエレスティアならともかく、地球だと特に日本は宗教関係については薄いもんなぁ。

　あと神様が多すぎるっていうのもあるけど……なんだっけ？　日本史で習った言葉……あ、そうそう八百万の神ってやつ。実際そんなに居るかは分からないけど……。

「それね。居るよ」

「え」

「私や天照みたいな階位の高い神は居ないけれど、そう言った神は存在している。具体的にどれくらい居るかは分からないけどね。そうだなー……エレスティアの方に精霊が居たじゃない？」

「居ましたね」

「そんな感じかな。精霊の地球版みたいな」

「なるほど」

　精霊と言えば、エレスティアでは様々なものに宿っていたりする神とまでは行かないものの、人よりも階位の高い存在。

　精霊王を頂点に六大精霊から連なる存在だ。六大精霊というのは、魔法の6属性と同じように属性をつかさどる大精霊のことを示す。

　精霊に性別は存在しないので、女王だとか王だとかそんな区別は存在せず、男性型であれ女性型であれ精霊王は精霊王である。

　で、そんな精霊王の下に居るのが――

　火の大精霊、水の大精霊、風の大精霊、土の大精霊、光の大精霊、闇の大精霊だ。そしてその大精霊の下に上級、中級、下級精霊の眷属が存在している。

　人が扱う精霊魔法はこの大精霊の眷属である上級精霊、中級精霊、下級精霊から力を借りて行使するものであるが、上級精霊と契約したことのある事例は実は結構少ない。基本的には中級精霊、下級精霊と契約する者がほとんどだ。

　まあ、上級精霊は結構気まぐれだからね。それは大精霊にも当てはまるけども。

　そんな精霊には、さっきも言ったように性別がない。基本的に上級精霊以上が人型とされているのだが、その姿は各精霊の自由である。

　ただわたしが会ってきた精霊ってほとんどが女性型だった気がする。男性型なんて全然見なかったな。

「女性型の方が何かと便利らしいよ？」

「ナチュラルに心読んできますよね」

「神様だからね」

　そういえば神様も性別はないよな……。

「そうだねー……私も天照も女性型だけど、性別はないよー。元は信仰していた人間たちの影響もあるけど」

「そうなんですか」

「ええ。向こうで見たことあるでしょ？　女神を祀った銅像とか」

「ありましたね」

「大体、神様って女性型で信仰されているからそれのせいでもある」

「あーそれは確かに」

　男性型とされている神もまあ、存在はしていたけれど圧倒的に女性型が多かった気がする。これはあれなのかな……日本でも軍艦の同型艦を姉妹艦……つまり姉妹、女性として見ているのと同じなのかな。

「理屈は同じかもね」

　まあ、その話は置いておこう。

　まず決めないといけないのはこれからの活動方針だ。樹海の調査は目標としているが、魔法少女たちのサポートも天照様から頼まれているのでどう行動すべきか。

「やっぱり謎のヒロインムーブでいいんじゃない？　それが一番好都合だと思うけど？」

「……なんか癪ではありますけど、確かにそれが一番なんですよね」

　助けた後はそのまま姿を消す。

　エレスティア様の言うように去り際に意味深なことを言うなんて面倒なことはしないけど。そもそも何を言えというんだ、何を。

「でもそれ続けていくと結局は何かしら有名になりますよね……多分」

「だろうねえ。ピンチの時に駆け付ける謎の少女！　みたいな」

「……」

　とはいえ、しばらくはそれが一番か。

　樹海の調査をしつつ、魔物にも対処すればいい。自惚れではなく、わたしにはその力がある。異世界……エレスティアで培った経験や技術もあるのだ。それを有効活用しない手はない。

「それにしても樹海ねー……確かに私からもちょっと変な気配は感じるけど」

「エレスティア様もですか？」

「うん。天照も気づいていたでしょ？」

「まあ……」

　時空の乱れが発生したということは感知していたみたいだし。天照様もエレスティア様もどっちも感じるのであれば、間違いなく何かあるだろう。

「とりあえず……やっぱり樹海の調査ですね」

　うん、それである。

　ついさっき、魔法少女を助けたんだし少しは姿を隠しておこう。姿を隠すには樹海の調査はちょうどいい。あそこに好き好んでやってくる魔法少女とかは居ないだろうし。

　そんな訳で、私は早速樹海に向かう準備をするのであった。