04:魔法

「ライトニング・スピア」


 それだけ呟くと手先から雷を纏った魔力の槍が放たれる。これはわたしがエレスティアでもよく使っていた攻撃魔法である。使い勝手がいいんだよねこれ……色々とアレンジしやすいし。

 因みにこの魔法に似たものでライトニング・アローという魔法も存在する。そっちは槍じゃなくて矢を射出させる魔法であり、威力は控えめでこのライトニング・スピアの下位互換である。ただ、消費する魔力はこっちの方が少ない。


「うん。問題なく使えそうかな?」


 何をしているのかと言えば、見ての通り魔法の確認である。

 部屋の中に結界を張ってその中で試し打ちしている。そうじゃないと、家具とかに傷がつくし、魔法によっては消滅してしまう恐れもあるから。まあ、少なくとも屋内でそんな魔法を使うつもりはないけども。


 エレスティアに居た時のままとエレスティア様は言っていたから間違いないだろうけど、実際試さないとやっぱり分からないものは分からないし。


 今使っているのは風属性に属する魔法だ。エレスティアでは風属性が一番発動が速く、射出系の魔法ならその飛翔速度も速い。使い勝手のいい属性なのは間違いない。ただ、いまいち決定打に欠けることもしばしばある。


 エレスティアに存在した魔法の属性は全部で6つ。

 1つが火属性で、火や爆発などを操る攻撃的なものが多い魔法属性だ。爆発系統は基本的には火属性に分類される。

 2つ目が水属性。水や氷を操ることができる属性で、氷系統の魔法もここに分類される。火と比べて穏やかな感じの魔法が多く、氷であれば防御にも使える。サポート系というかまあ、攻撃的な面は少ないけど、それでも普通に強力な水属性の攻撃魔法も存在する。簡単に言うとじわじわ削るようなものが多いかな?

 3つ目がさっき使った風属性だ。風や雷、地球で言うなら大気などを操る魔法で、攻撃的なものも多いが妨害系統も多く、汎用性が高い。その分、決定打に欠けることもある。

 特徴なのは風ということだけあり、発動速度が速く、射出する魔法であれば全属性から見ても一番速い。手数が多く、扱いやすいのが特徴だろうか。

 4つ目が土属性。土や植物などを操る属性であり、攻撃的な魔法はやや少なめでどっちかというと防御に向いている魔法が多い。もちろん、水属性同様に強力な攻撃魔法も存在する。


 この4属性が基本的な魔法の属性である。

 見ての通り、火には爆発が含まれており、水属性には氷が、風属性には雷が一緒となっている。エレスティアではこういう分け方となっている。

 まあ、地球でもよくあるようなラノベ系の世界とかでは氷属性とか雷属性とか、独立しているものもあるがエレスティアではまとめられている感じだ。爆発については無属性としてるものもあるだろう。


 さて、さっき存在する属性は6つと言ったと思うが、この基本4属性以外にも2属性、特殊な属性が存在している、

 それが光属性と闇属性だ。この属性の魔法は結構特殊なものが多く、基本4属性と比べると扱える人は少し少な目だ。


 まず、光属性だが……まあ、攻撃的な魔法の種類が非常に少ない。光属性は傷を治したりする魔法や、補助する魔法、強化する魔法等がメインとなっており、攻撃魔法は少ない。さながら、ゲームで言うならバッファーやヒーラーだろうか。

 仲間の傷を癒したり、身体を一時的に光の加護で強化したりなど、冒険者とかの人材としては欲しい部類だろうと思う。因みに魔法の確認のためにわたしが展開した結界はこの光属性に属する。防御面は土属性の方が上だが、光属性でも賄うことは可能だ。

 そもそも、さっきも言ったけど光と闇の魔法属性を使える人は基本4属性と比べて少ない訳だしね。


 そんな光属性の魔法だが、攻撃魔法が全くない訳ではない。さっき少ないとあえて言ったのは、一応攻撃魔法も存在するからだ。

 例を挙げるならホーリーレイや、ホーリーアロー、ホーリースピアと言ったところだろうか。名前からして分かる通り、さっきわたしが使ったライトニング・アローの光属性版みたいな感じだ。

 特にアンデット系の魔物には良く効く魔法であり、それ以外に普通に通用する。


 あとはホーリーと呼ばれる範囲魔法だが、これは一定範囲を光で包み込み、消滅させるという結構とんでもない魔法だったりする。使える人は極僅かなのだが。魔物ならその魔物にもよるが、大抵の魔物には効くので消滅させられる。

 他には攻撃とはちょっと違うかもしれないが、反射させることもできる。魔法攻撃を吸収しそのまま跳ね返す感じだ。ただ闇属性の魔法相手だと跳ね返すことは出来ずに相殺されてしまうのだが。


 光属性についてはこんな感じだ。

 もう1つの闇属性ついてだが、こっちはまあ光属性とは完全に正反対とまでは言わないが、対になる属性である。

 光属性がバフやヒーラーであるなら闇属性はデバッファーだろうか。あとは光と比べると攻撃的なものが多いのも反対だろう。


 主に相手を妨害する系列のものが多く、攻撃的なものが多い。対象に幻惑を見せたり、状態異常を与えたり、自身の魔力を他人に分け与えたり、吸収したりなどこっちもまたこっちで特殊なものが多い。

 あとは重力系統の魔法もこの闇属性にある。対象の重力を操ったり、一定範囲を操作したりなど。アローやスピア、レイといった基本的な攻撃魔法もまた闇にも存在する。


 闇属性の最大の特徴としては、光属性の魔法を打ち消すというものだろう。まあこれは光にも言えるのだが、互いに相反する属性なのでこの属性どうして戦うと泥仕合になりがちだ。

 例えば闇属性の重力魔法、グラビティだが、これを食らうと強さにもよるが身体が重くなって動かせなくなる。しかし、ここで光属性のディスペルを使うと打ち消される。

 反対に闇属性の攻撃魔法は光属性では反射できないし、結界等も他の属性から攻撃された時よりも消耗が激しく、すぐに割られてしまうなんてことも。


 特殊と言われている理由だ。そもそも使える人少ないから何とも言えないのだが、どちらかの属性の使い手が1人でも居ると大分厄介であることに変わりはない。どっちも居る場合は……まあがんばれとしか。

 余談だが闇や光相手する時は相反する属性ではなく、基本4属性の方を使った方が割と通用したりする。


「フレイム・スピア」

「ウォーター・スピア」

「ロック・スピア」

「ホーリー・スピア」

「ダーク・スピア」


 それぞれの属性を纏う魔法の槍が生成され、同じところに向かって飛んで行く。魔力はそこまで消費してないというか、感覚としてはエレスティアと一緒かな。


「問題なさそう」


 どの属性もスピアやアローは問題なく使えそうだ。闇と光のレイについても問題なく使えたので、エレスティア様の言う通り、向こうの世界のスペックそのままっぽいなこの身体。こんななりだが、身体能力や魔力の保有量はかなりのものだ。

 まあ、大体はエレスティア様のせいではあるけど、向こうで実際戦った経験とかも影響していると思う。建物を囲っている塀とか門とか……まあ大きさにもよるけど、大体のものは一回ジャンプするだけで乗り越えられるくらいではあると思う。


「流石に大きな魔法というか……強力なやつは使えないけど」


 それは追々かな。願わくば、使うことがなければいいのだが。


「さて、改めて目標を確認するか」


 まず目標は樹海の調査。

 樹海に原因があるのであれば、その原因の解決もしくは撃破? といった感じかな。のんびりやっていいと言われているから時間的余裕はある。念入りに準備をするのもいいか。


 あとはこの地球の現状だよな。

 魔法少女と呼ばれる少女たちが魔物……エネミーを倒してくれている。そのサポートをしてほしいとか。


「謎のヒロインムーブをやっても面白いかもよ?」

「……エレスティア様、何故居るんですか」


 何となく気配を感じたから来るだろうと思ったけど。ってか、なんだよ、謎のヒロインムーブって。


「様子見に来るくらいならいいじゃない。ようやく名前で呼んでくれたね……様もいらないけど」

「いや、天照様とエレスティア様両方女神様だし、分かりにくいかなと思いまして。あと様は流石に外せませんよ」

「残念」


 わざとらしく残念がる女性……見た目は普通に少女なのだが、女神様である。金色の髪に金色の瞳、背中には翼みたいなものもある。何というか女神様というか天使様?


「というか謎のヒロインムーブって何ですか……」

「そういうのが流行らしいよー? あとは曇らせとか」

「……」


 何言ってんだこの人……いや女神様だけど。


「そもそも魔法少女って少女ですし、ヒロインって……」


 むしろ、魔法少女の方がヒロインじゃないだろうか。わたしなんて元男の異質な存在だし……自分で異質っていうのもどうなんだって話だけど、実際そうじゃない?


「あれよあれ。ピンチな魔法少女の前に現れてサポートしたり助けたり加勢したりして、何か意味深なことを言ってその場を去るみたいな。あと、ルーナも十分もうヒロインでしょ。同性愛もいいと思うけど」

「……えー」


 まあ、男の意識はまだ残っているので……そもそも消したくもない。なのでぶっちゃけ、こんななりになっているけれど恋愛対象はやっぱり女性なんだよなあ。


「曇らせは、その名の通り魔法少女たちを曇らせる感じ! 守るために傷つくけど、守れたならいいやという感じで魔法少女たちを助ける。ただし、周囲は曇る」

「おい、だめじゃねーかそれ」


 あ、素で返してしまった。


「たまに出る素……うん、いいギャップ萌え」

「……」

「あの、そんな冷めて目で見ないで……冗談だから、冗談」


 エレスティア様はいつもこうだ。でもまあ、それがこの女神様のいいところなのかもしれないけど。とはいえ……。


「そういうのもあるっちゃあるんですね」

「お? 曇らせ? 曇らせムーブ行っちゃう?」

「違います。曇らせて何がいいんですか……それで魔法少女たちが戦う意思とかなくしたらどうするんですか」

「私的にはむしろ、1人の少女が傷ついてまで守ってくれているのだから逆に強くならなきゃ、っていう衝動に駆られる展開だと思うけど」

「マイナスの結果になった時のリスクが高いじゃないですか……まあでも、曇らせは置いとくとして謎のヒロインムーブとかはなんか面白そうですね。やるかは別として」


 ちょっとだけ興味はあるが、ヒロインっていうのはちょっとなあ。曇らせについてはマイナスリスクがあるけど、前者のそれであればやることは大して変わらないよねって話。依頼されている内容も遂行できるし、樹海で何か起きているかもって知ってるのは女神様除くとわたしだけだろうし。


 とりあえずは……捜索というか探索というか、見回りだな。樹海に行くのもいいけど、魔法少女とか魔物については実際見た方がいい気もするし。どんな感じなのか。


 そんなこんなしつつ、この先のことを考えるのであった。

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