第29話 ディラハンになる悪役令息


「素晴らしい演説でしたステラさん」


 演説が終わり、教皇のモンローが修道者たちを散らせるとステラを褒め称える。

 修道者たちの反応から大成功を悟ったらしくは大層ご満悦に見える。

 神鎧を見た時から機嫌は良かったが今は言動だけではなく顔にも喜びが伝播しているようでニコニコになっている。


「前聖女の二人も悔い改めることができて偉いです」


 演説前はゴミを見るような目で見ていた偽聖女にできない子を褒めるときの褒め方をするとこちらを向く。


「そして何より今回の聖女就任式を準備から運営までシドさんよくやってくれました。あなたに任せてよかったです。私が取り仕切ったものでは皆の心をここまで掴むものにはならなかったでしょう」


 そう言いながらハグをしようとしてきたので、神聖術の「身体強化」を発動して衝撃に備える。

 前はあの胸でアンディが磔にされたからな。

 アンディがダッシュしてぶつかったと言うこともあるかもしれないがそのままご褒美とは受け取れない。

 吹き飛ばされるかと思ったが谷間に頭が吸い込まれた。

 視界は一面真っ暗。

 何も見えんし、顔ではなく頭が包まれるレベルになるともはや胸と認識できんな。

 質感の異様に滑らかな二つのクッションに圧強めで挟まれている感じに近い。

 少し息苦しいな。


「胸に吸い込まれて兄様の首が……!? 兄様がディラハンになってしまいました!!」


「シド様、今助けます」


 どうやら外から見ると俺の頭がモンローの胸に食われているように見えるようで妹のミラとステラが抱きついて引きずり出そうとしてくる。


「エリス様が胸に負けるわけないじゃない」「教皇と聖女の心を鷲掴みにやはりシド君はエリス様……」「シドおおおお!!」「何泣いてんのよロイド」「う! なんか頭が痛いな」「ハーレムは不健全」


「あらごめんなさい。昂りすぎてしまいました。色々と危険だからとやめろと言われてるのにダメですね私たら。シドさんと協力してことに当たってくれた皆さんもありがとうございます」


「「「「いえいえ」」」」


 周りのメンツが騒ぎ始めるとモンローが正気に戻ったようで腕のロックを外して解放される。

 モンローの謝辞も終わってお開きになるし、お預けになっていた自爆装置の罠化のことを話しに工房の方に行くか。


   ───


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