第27話 本物の格の違い


「……」


 見事に捕まり生殺与奪の権をシドに握られたリアーナは内心は鬱屈していたが表情だけ笑顔を繕って同じく聖女であったロマンナ、教皇のモンローと共に壇上に立つ。


「これもエリス様の選択ね。エリス様に御心に沿えば何も怖いものはないわ」


 隣にいるロマンナは公開処刑と同然の状態に追い込まれていると言うのにシドをエリスだと固く信仰していることにより超然としており、本当にシドがエリスだと思えてくるほどだった。

 というよりも先ほども加護が肝心なタイミングで機能せず、そのあとすぐにシドが現れて拘束されたことを考えると神に等しい超常的な何かを持っていることはまず間違ない。


「新たに聖女となるステラ。こちらにいらして下さい」


 もしや本当にシドは本当にエリスかと思うとモンローの声と共に修道者たちが集まった会場の中に聖女にのみ着ることの許された白い修道服を着たステラが現れた。

 手を宙に掲げたと思うと光の天使たちが舞うように飛んでいき壊れた鎧が直され、周りに草花まで芽吹き、周囲で感嘆の声が上がる。

 当たり前だがこの無機物までだけでなく大地までも癒す力を見て、皆リアーナたちとは一線を画す力を持っていることは確信したことは難くなく、実際に自分たちの派閥に属していたはずのものがステラに媚びた笑顔を向けているのが見えた。

 例え聖女という特権を失ってもこれだけの力を持っていたら重用されるのは明らかだし、媚を売るべきだとわかっているのだろう。

 理屈はわかりつつもリアーナは「乗り換え早いな」と内心で愚痴らずにいられない。


「通例に則るなら新たな聖女になるステラの所信表明となるところですが今回は前聖女二人から祝辞を頂きたいと思います」


 ついに来てしまった処刑の時にリアーナが息を呑む。

 ここで祝辞を述べることは聖女としての全面降伏──死を意味する。

 自ら断頭台に首を据えることのようなものだ。

 絶対に先んじて行きたくない。

 

「私から言葉を送らせてもらいましょう。私、ロマンナはステラは私ども聖女とは一線を画すエリス様の祝福を受けた真の聖女と確信しています。きっとエリス様とともに我々をあるべき場所に導いてくれるでしょう」


 迷いなし。

 リアーナがどちらが先に行くかロマンナとアイコンタクトを取ろうとするとロマンナが自ら祝辞を述べた──断頭台に首を据えた。

 ロマンナの衝撃的な言動にリアーナが額に汗を滲ませ、耳と目を疑う。

 ともに聖女として甘美な日々を送ってきたためにその言葉を簡単に言えるはずはないと確信していたというのにこれはどういうことか。

 シドをエリスと信じていることがこれを可能にしているとでもいうのか。

 一体ロマンナとシドの間に何があったというのか。

 なぜか会場に入った時から加護が使えずに明らかにすることができない。

 これがエリスの意思だというのだろうか。

 だがそうだとすると自分の加護が使えないことで得をするのはシドとなり、やはりシドがエリスとなる。

 あり得ないことだとは思うがこうもシドの思惑通りにことが進むとそうだと思わずにいられない。

 半信半疑だがシドの意に反することをするとこれ以上の酷いことが起きるような気がしてきた。

 これ以上の酷いことなどごめんだ。


「私、リアーナはステラが聖女になることを祝福します」


 リアーナは修道者たちの前で全面降伏をした。

 

 

 


  ───


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