第26話 不審者ワラワラでワロタ


「く、肉体労働は得意ではないと言うのに。ロマンナさんが呆けているせいでブレインの私が肉体を酷使する羽目に」


 シドがロマンナを回収している間にリアーナは急いでステラたちの元に向かっていた。

 無論、そんな都合よく誰にも発見されずに近づけるわけはないので、リアーナが持っている真実を照らし出す加護をフル稼働させて、自分が見つからない道筋をつけて近づいている。

 いくつもの事柄を瞬時に加護で明らかにできるわけではなく、事柄を変える場合はクールタイムが必要なため、直前の物陰で少し荒くなった息を吐きながら加護を使うための時間を稼いでいた。


「おお、エリス様……」


「文言を覚えるだけじゃなくて実際に人に発表するつもりで練習するといいですよ」


「ありがとうございます」


 見たところ、教皇のモンローは神鎧を見てうっとりしているし、見慣れぬ幼女──シドの妹のミラもステラに助言しており、全く持って警戒は緩い。

 正直加護を使われなくてもここからステラを拐かすことはできそうなような気がしないでもない。

 だがもしこれで取り押さえれられれば二度と聖女になることはできなくなるので、慎重にならざるを得ず、待つことをリアーナは選択する。


「それにしても今回のはクールタイムが長いですね」


 いつもならクールタイムが終わり一、二分で明らかにできると言うのにいつまで経ても答えが出ない。

 まるでステラを聖女に就任させるために陽光神エリスが邪魔をしているように感じざる負えない。


「不審者二人目か。多いな」


 加護の力なしでこのまま行くべきか、悩み始めると背後からシドの声が聞こえ、リアーナは絶望する。


「お、終わった……」


 リアーナによって目論まれた聖女復任計画はあえなく失敗した。


────


 戻ると物陰に隠れてステラたちをチラチラ見ている不審者──リアーナを発見したので確保した。


 「いやあああ!!」

 

 「これは一体なんです……」


 確保された時にリアーナが上げた断末魔の叫びで神鎧の魅了から解放されたモンローが鬱屈した声を上げる。


 「怪しい行動をしていた不審者たちです」


 「またですか。悔い改めない人たちに保護してもしょうがないですから許せないなら私刑を与えていただいて構いません。なければこのまま処分させて頂きますが」


 私刑ね。 

 したこともなければやられたこともないし、それほど今回のことで苛立っているわけでもないからな。

 代わりに偽聖女派閥の残党を抑える保険をやってもらうか。


「じゃあ、聖女を解任されて新聖女が就任することが気に入らないようですし、二人にはステラの聖女就任式で自分たちが聖女を解任されたのは妥当な判断だったという証言とステラが聖女になることを歓迎する言葉を送ってもらうことで今回のことは手打ちにしましょうか」



  ───


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