第24話 焦る不審なもの


 壊れた鎧を壇上の前に転がして、壇上の向こうに布を被せた神鎧を配置する。

 会場の準備をこんなものか。

 正直、教皇によって神鎧の威光が想像以上のものだとわかった今壊れた鎧を治す演出は必要なさそうだなと思わないことはないが。

 とりあえず、あとは所定の時間まで待つだけだ。


「これで準備は十分だ。あとは時間まで待つだけだな。ないとは思うが何か不審なものがないか確認するか」


「不審なものってなんだよ?」


「爆発物とか意味もなくここらをうろちょろしている人間とかだ」


 これから逆恨み対策をしようとするとアンディが質問して来たので具体的に答えると全員が目を見開いた。

 村で共同生活をしていたアンディたちやに箱入り娘のミラにはこう言う通りに合わない諍いの経験がないのだろう。

 皆で密接に関わっている村で自分が原因だと言うのに癇癪を起こして暴れれば、間違いなく村八分になるからな。

 純真な人間にクズの習性を教えて、汚したようで悪いが色々な野望や趣向を持った人間が集まる組織に所属する以上慣れていってもらうしかないだろう。

 関わる人間が増えていくごとにこう言うことも増えているだろうしな。


「ステラを狙ってるかもしれないってこと?」


「成り行きとはいえ多くの人間が所属している派閥が二つ消えたからな。自分たちが失墜したのにその原因になった人間の身内が躍進していたら逆恨みくらいはしてもおかしくないだろ」


 さらに逆恨み対策の理由についてロンナが突っ込んで聞いて来たので俺の推測を言うと納得できなさそうな顔になった。

 ロンナサイド──俺たちから見れば元はといえばあちらからやってきたことに対応しただけだからな。

 理不尽極まりなく感じているのだろう。

 深く考えさせてイライラさせてもしょうがないし、発破をかけるか。


「そう言うわけだ。不審なものを探しに行くか」


 ────


「そう言うわけだ。不審なものを探しに行くか」


「シド君! 余計なことを! シド君!」


 聖女を解任された偽聖女リアーナは物陰からシドたちの様子を見ながら、冷や汗を流していた。

 一度シドとステラの規格外さを知ってしまった挙句聖女をクビにされ、戦意を喪失したものの、ワンチャンステラを拐かして聖女不在にすればまた聖女になれるのではと割と杜撰な聖女復任計画を思いたちリアーナは会場に訪れていた。

 無論あの時知った実力差を忘れられているわけもなく、先ほどから足の震えが止まらない。

 だがリアーナは聖女であった時の至福の日々が忘れられず、その思いのみが現在ここに留まらせていた。


「ここが最後です! ここでやらねば聖女に戻れません! ロマンナさん何をやっているんです!!」


 自らを奮い立たせると先ほどばたりと会ったもう一人の偽聖女──ロマンナが鎧台の大きさの巨大な女神像の足元で何やら書いており小声で声を上げる。

 バレてはいけない状況だというのにあまりにも目立ちすぎる。


「新聖女が就任するからってやっと自由な時間をもらったのよ。この時間を使ってシドがエリス様だという証拠を後生に残さないと」


「何を言っているんです! ロマンナさん! シド君がエリス様なわけないでしょうが……」


 そんなバカなと思い否定しようとしたリアーナだったがとても人とは思えない功績を作り出していっているシドのことを思うと言葉が尻すぼみになっていった。


  ───


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