第22話 兄貴がすごいことになってて草


「神鎧も回収したし、会場に行くか」


 久しぶりに会う兄──シドはミラから見てどこか変わって見える。

 オーラがあるというか気迫があるというか。

 そんな選ばれた人間が持つ何かを持っているように見える。

 ミラにはその変化が心から来ているような気がした。

 前のように気丈に振る舞おうとしている張り詰めた在り方ではなく、自然体で力強い在り方がシドの中で結実しているようにミラには思える。

 何かの拍子に挫折してしまったらそのままポッキリといってしまいそうな危うさがなくなり、もはや挫折している姿が想像できなかった。

 下手をしたらミラが今までで見てきた人間で一番精神的に屈強そうに見えた。

 シドたちのことを見てきたわけではないので実際のところはミラにはわからなかったが皆そんなシドの頼もしさに惹かれて、彼につき従っている様に見える。


「兄様、家を出られてからどんなことがあったんですか?」


「成り行きで魔族に命を狙われたり、聖女たちに絡まれたりしてたな」


「シド、ざっくり言い過ぎだろ。凄えことばっかしてんのにもったいねえよ。ミラ、俺が説明してやるよ」


 シドより若干背の高い金髪の少年──ロイドがそういうと武勇伝風にシドと自分たちの話をし始めた。

 話の中で兄は生身で鎧を倒したり、絶大な力を持つともっぱらの噂の聖女を圧倒したり、地下迷宮の主を相手取って単独で追い詰めたりしており、もはや伝説の勇者もかくやという活躍をしていた。

 成長したといえども流石にそこまではと思うとシドの一団にいる面々が口々にその当時の状況をまるで自分にとって誇らしいことのように口々に語り始めて提示される情報の多さに本当のことなのだとミラは悟った。

 悟ると同時に重度のブラコンである彼女はその瞬間を見れなかったことが非常に残念に思えてきた。

 本来なら妹である自分が真っ先に見れるものだというのに。


「着いたな。ステラ、持ってきた鎧を置いてくれるか」


 そんなことを考えているとシドがそういって行き先に到着した。

 何千人と入れるほど酷く広く、大きな白い布があるのが見えた。


「ここで今からステラの聖女就任式を行う」


「この人が聖女!?」


 先ほど言い争いを繰り広げた人物が教会の偉い役職に就任する人だと知り、ぎょっとした顔をするとシドが苦笑した。


  ───


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