第21話 ロリコン無罪


「誰ですかあなた!?」


「そっちこそ誰ですか!?」


 いきなり現れて接近してくる妹──ミラにステラが怯えて声を上げるとミラも声を上げる。

 なんだこれは。

 状況が全く理解できない。

 一旦状況を整理するところから始めた方が良さそうだな。


「落ち着け二人とも。まず離れろ。話はそれからだ」


 そう俺が言うと二人とも引き下がる。

 両者共に根が真面目だから平静でじゃなくても言ったことに耳を貸してくれるのが今の状況の救いか。


「ミラはなんでステラにつっかかてるんだ? というよりなんでここにいるんだ?」


「その人が兄様をたぶらかして私から妹の座を剥奪しようとしているからです! 私が来訪した理由はこの一大事を片付けてから説明します」


 これを片付けた後か。

 どれくらいになるか全く予測がつかないな

 まあまずはミラの言葉からまず理由を類推するか。

 俺をたぶらかして妹の座を剥奪する。

 これは家ではミラは割と俺にベッタリだったから俺の近くにいる同年代のステラに嫉妬したとかそんなところだろうか。

 とりあえずステラが俺の妹になどなろうとしていないことを伝えるか。


「誤解だ。ステラは俺の妹になろうとはしていない」


「兄様は騙されていけません! この人は妹と言われた時に嬉しそうな顔をしていました! つまり妹と認められることを虎視眈々と狙っていたということです!」


 誤解を解こうとすると先ほどのことを取り上げってミラは持論を展開し始めた。

 十歳だというのに弁が立つ。

 親父の英才教育がここで発揮されてしまっているな。

 頭の出来がいいだけに反論をされると厄介だ。


「私は別に妹になろうとなんてしてません!」


「なろうとしているものは皆そういうものです。現行犯だというのに誤魔化そうとするなんて往生際が悪いですよ。この泥棒猫。私に早くその立ち位置を譲って消えるべきです」


「消えません! あなたが消えてください。私とシド様はやるべきがことがあるというのにそこによく知らないあなたが割り込んできたんです」


「私たちにもやるべきことがあります。兄様は妹である私のものです」


 またヒートアップしてきたな。

 このまま行っても平行線を辿りそうだし、一旦白黒つけるように誘導した方がいいか。

 結果が出れば静かになりそうだし。


「俺の妹が云々するなら俺に関する事柄に答えられるはずだよな」


「もちろんです兄様」


「妹じゃないですけど私もシド様に関することなら自信があります」


「じゃあ俺が一番好きなものはなんだ?」


「私」


「武器ですか?」


「正解は鎧だ。範囲が広すぎるきらいもないでもないがステラは正解としておこう」


「そんな! 私は本物の妹なのに!! いやああ!!」


 正解を発表すると外したのがよほどショックだったようでミラが膝から崩れ落ちる。

 意図はなかったとはいえ少し残酷になったな。

 フォローしとくか。


「今のでミラが妹じゃなくなったりはしないよ。お前が本当の妹なのは俺が一番わかってるからステラが近くにいたらくらいで目鯨を立てるな」


「兄様……」


 膝をついた手を差し伸べるとミラがそのまま手を取ると抱きついてきた。


「なんだか納得いきません」


 往来で抱きつかれて困ったもんだなと思っていると、嫉妬深いミラへの意趣返しなのかステラまで抱きついてきた。

 身動きが取れないなと思っているといつものメンツが近づいてきた。


「こっちにいるって言ったからきたけど何やってんの」「シド大物だと思ってたけどすげえな」「いきなりダブルで行くとはな」「ロリコン有罪」


「誤解だ」


 とんでもないタイミングできたな。

 側から見たら今幼女をダブルで囲んでいるようにしか見えないからな。

 一応俺は十二で十の二人とは二歳差なのでロリコン扱いはセーフかと思ったがアウトだったらしい。

 この世界恋愛観とかも現実準拠だからな。

 改めて考えると大人であれば二歳差なんてあってないようなものだが子供だと体格差とかもあってとんでもない年の差か。

 つい大人目線でものを考えてしまった。

 このままほっといたらロリコンの烙印を押されるので弁解するか。


「なんだ妹かよ」「それならステラも張り合ってもしょうがないかな」「ははは、シドはなんでもできるから。そっちでもなんでもできると思ちまったわ」「ロリコン無罪」


「わかってくれたか……」


 一から順を追って事情を話すとなんとか誤解は解けた。

 危ないところだった。

 まさかこんなところで破滅の危機に陥るとは。

 とりあえず片付くことも片付いたし、ミラに事情を聞くか。

 

「ミラそろそろここに来た理由を話してくれるか」


「実は最近父様の悪夢を見るようになったと思ったら父様の様子もおかしくなり始めたんです」


 ミラはそういうと夢の内容と親父の言動について詳しく話し始めた。

 どうやら魔族や闇精霊のみが使える闇魔法──「悪夢」を食らってるようだな。

 直接の被害はないが相手を精神的に追いつめる時に使われる魔法だ。

 本編の中盤でサブヒロインの一人を魔族のスパイが追い詰める時に使うのだが、いまいちミラや親父に使う意図がわからない。

 ゲームでは前魔王登場はミラと共に主人公がカマッセイ邸に到着した直後で周辺情報を集める場面がなかったので、推測でしかないが前魔王の封印が解かれ始めて前魔王の力に当てられた闇精霊が活性化して悪さをしているってところか。

 とりあえず病んでいるぽい親父とミラを一緒にするわけにはいかないし、前魔王を倒すまで教会で保護するしかないな。

 あとで会場で教皇──モンローにも会うし、その時に言っておくか。


───


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