第2話 メインヒロインで草


 出家するために近所の湖に面した教会に向かう。

 出家と言っても前世のように経費など要らず、行って修道者になりたいと頼めば、そのまま面倒を見てくれるので気楽なものだ。

 まあ無論いくらなんでも慈善を旨とする宗教組織とはいえタダでそこまでよくしてくれるわけではなく、現在教会は魔神を奉ずる魔族と宗教的対立をバチバチに起こしているので修道者の大半は異端殲滅軍として鎧という巨大ロボットに乗って魔族と戦争中のこの国の軍──神聖王国軍に加わることになるが。

 それでも魔族から集中放火を浴びる主人公達の近く以外は割と被害は少ないので、主人公とは別のところに行けばよっぽどの限りは死ぬことはないはずだ。

 教会に入ったら主人公いない地域に行ける裁量権を手に入れるためにまずは地位向上を目指して武功上げだな。

 このゲームは隊長クラスは何故か独断先行しても許されがちなので本編開始まで──五年後までに最低限現場で自分の裁量で行動できる隊長クラスにはなりたい。

 教会の昇進システムは本編でも紹介されてないので謎だがモブを百体くらいだろうか。

 前世からだいぶブランクがあるがそれくらいなら慣れれば一月もいらないだろう。


 今後のことを考えていると教会に到着した。

 こちら側から陰になるところに泊まっていたので見えなかったが二台馬車が置いてある。

 繋がれている荷台の様子からして大人数人を運ぶものか、まとまった荷物を運ぶような感じか。

 中型トラックくらいはありそうだし、一台で十分な気がするのでそれぞれ用途違いそうだ。

 少し不可思議ではあるが荷台を見ていてもしょうがないし、中に入るか。

 中に入ると礼拝堂になっており、女神像と規則正しく並んだ長机が見える。

 メインヒロインのイベントCGで見たのと同じで典型的な教会って感じだ。

 このギャルゲ「ヒロイックキングダム」にはそんなイベントはないとはわかっているが、RPGで「聖なる場所が邪悪なる者に侵食にされ……」は鉄板なのでそれとなしに物の影に魔族とか、悪魔とか、妖魔とかが潜んでいないか確認する。

 ヨシ! ヨシ! 安全ヨシ!

 安全を確認すると年老いたシスターが隣室から出てきた。

 ちょうどいいしこの機に用件を伝えておくか。


「すいません、修道者になりたいのですが」


「おお、よく来てくれました。女神様もお喜びになっておられることでしょう。こちらにいらして下さい」


 シスターは嬉しそうに微笑むと出てきた扉から戻って、どこかに案内し始めた。

 どこに行くのかと思うと教会の裏手に出て、人が集まっているところに行くと足を止めた。

 連れてきたかった場所はここらしい。


「皆、修道者になろうと教会の門戸を叩いた方達です。これから修道者としてイロハを身につけていただくために聖騎士教会の元に彼らと共に行って頂きたいと思います」


 これから教育を旨としている教会に送ってくれるようだ。

 教育の方式は意外に近代チックなんだな。

 俺はカンフーブームとエクソシストブームを経験しているため、寺とか教会に入るとそこにいる偉い師父とか司祭とかが戦い方を教えてくれるもんだと早合点していたが、そこら辺は現実準拠でしっかりやってくれるらしい。

 最悪師父か司祭とかが弱すぎるとこっちまで弱くなりそうなのでそう言うリスクを考えるとこっちの方がいいか。

 どう見てもここの責任者ぽい老シスターが鎧──巨大ロボットをヤバい機動で動かせるようには見えないしな。


「新しい奴か。俺はジミーだ。いつもは数揃ってから行くところを催促されて、揃わねえのがしっくりこなかったからちょうどいい」


 これから運んでくれる馭者なのか、咥えタバコのおっさんが前に出てくる。

 シスターに引き続き、予定のないことにも快く引き受けていることを見るとこの人も気が良さそうだ。

 エドランというモラハラの権化と接した直後なので優しさが心に染みる。


「ジミーさん、お世話になります。シドです。よろしくお願いします」


「おう。シド坊。よろしくな。よしじゃあ行こうじゃねえか! おめえらたたっと乗りな!」


 ジミーとの挨拶が終わるとゾロゾロと修道者たちが荷台に乗っていくので俺もそれに続く。

 荷台はクッションなどもなくリヤカーそのものなので、座っているとケツが痛くなりそうだが若い体に期待するしかなさそうだ。

 子供の頃って何時間座っても痛くなかったイメージがあるし、ワンチャン大丈夫のはず。


「あ、あの……」


 俺がケツの心配をしていると対面にいる村娘の服を着た金髪の女の子がドキマギしたような感じで声を掛けてきた。

 見た感じ妹のミラと同じくらいに見える。

 話を掛けたのはいいが俺は年上な上、親父に似て冷めた顔つきをしているので怖いくて、二の句が告げなくなったのかもしれない。

 どうせ暇だし、このままほっとくのは金髪の子があまりにも居た堪れたまれないので尻切れ蜻蛉になった言葉を拾い上げることにする。


「どうかしたか?」


「いえ、ちょっとお話でもと思って……。ご迷惑なら全然大丈夫なんですけど……」


「いや話しかけてくれてありがとう。ちょうど暇してたところだ。さっきも聞いたかもしれないけど俺はシド。君は?」


「私はステラって言います」


 ステラ……。

 メインヒロインの聖女の名前だよな。

 良く見ると髪はまだ肩ほどしかないが、顔がそっくりだ。

 こんなところで会うとはな。



   ───


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