第34話
宿屋の階段を駆け下りて外に出た時、後ろにいるはずのライズの姿が見えないことにリーシャは気づく。
人が多く行き交う港町の街道にも関わらず、人目を気にすることもなく、自分たちが泊まった部屋の窓めがけて大声で叫んだ。
「ライズも一緒に行くのよ!!」
ライズは、すぐに部屋の窓を開けて身を乗り出した
「私も行っていいのか?」
「ライズが行かなくちゃ、誰が私を守るのよ」
「よしっ」
ライズは窓枠に足をかけて、勢いよく蹴りだすと、空を飛ぶように空中を駆けると、リーシャの近くに、何事もなかったかのように着地をした。
「ライズ、危ないよ。あんな高いところから飛び降りて。ケガでもしたらどうするの?」
「私がこれくらいの高さから飛び降りてケガをするとでも?きちんと受け身を取ればこの倍以上の高さからでも飛び降りれるぞ」
「ケガもそうだけど、そんなに大胆な行動をされたら、ね?ほら、周りみんなこっちを見始めたわ。ケンベルク家に私の居場所がバレたら、連れ戻されるのだから気を付けてよね」
「恐らく現在目立っているのって、私が飛んだせいじゃなくてリーシャが大声で叫んだせいだと思うけど」
リーシャは十数秒前のことを頭の中で巻き戻すように思い返すと、少し恥ずかしそうにしながら、ライズの手を引く。
「まっまあいいわ、そんなことどうでもいいから、早くこの場から逃げましょう」
「あの……」
リーシャが手を引いているにも関わらず、ライズは一向に動く気配を見せない。ライズが歩くなり走る意思がなければ、か弱い少女の力では、屈強な女戦士は微動だにもしない。
「何ぼーっと突っ立ってんの!?行くわよ」
「あの……ケニル殿と待ち合わせている港は、そっちじゃないけど?」
「えっ?早く言ってよ。もうあまり時間もないのだし。というより、この辺の土地勘があるなら、ライズが私をそこまで連れて行ってよ」
「承知――――」
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