第32話 負けていれば?
二人が宿屋に戻る道中、リーシャはライズに冗談っぽく質問した。
「コイントスの時だけど、金貨を失って私が私自身を賭けた時、もし、私が外していたらどうするつもりだった?」
「えぇ、もちろん。酒場の中にいる人全員、この剣で……とはいかないか。たかが、ギャンブルでこの剣は抜けない。外れていたならば、コインの裏表が知られる前に、よろけるふりでもしてなかったことにするかな」
「でもそんなの、コインを覆ってる手が離れるまで分からないじゃないの」
「はっはっは。リーシャ、ちょっとやってみようか、コイントス。私と勝負しよう」
ライズは歩く足を止めると、リーシャもおのずとその場に立ちどまる。
ライズが銀貨を取り出すと、ガタイのいい男がやったようにコインを高く打ち上げ、手の甲にコインをキャッチした。
「私が今から10回連続で当てることができたら、一つお願いを聞いてくれる?」
「そんなことできるわけないじゃない」
「じゃあできたら聞いてね。とりあえずこれは裏ね」
ライズがキャッチしたコインを覆っている手をのけると、リーシャは覗き込むようにコインを確認した。
すると、ライズが言った通りにコインは裏になっていた。
「たまたま当たっただけよ、どうせ10回もしないうちに外れるわ」
「じゃあ次」
ライズは次々とコインを打ち上げてはキャッチし、裏か表かを淡々と答える。
答えるたびに必ず当たるコインの向きにリーシャは、信じられないというような顔をしていた。
最後の10回目のコインが投げられるが、もちろんそれも外れることなく、ライズの言うとおり、10回連続で裏か表かを当てることができた。
「ライズ、あなた超能力者か何か?」
「もし超能力なんてものが存在するのだったら、もっといいものが欲しかったなぁ。これは誰でもできると思うけど」
「誰でもできるって、私たちはできないわよ」
「できないできないって、別に宙を舞うコインは何かに覆われてたりして隠されているわけじゃない。見てれば手の甲に落ちた時に裏か表かなんて、簡単に判断できるけど……”見えてれば”か」
「ライズって本当にすごいのね」
「お褒めに預かり光栄です」
二人は屋根のある宿屋に戻ると、そこそこのベッドの上で眠り朝を待つ。
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