第31話 テーブル⑤
リーシャは、思った以上の収穫に喜びの笑みが出すのを我慢しながら、クールに別れの挨拶をケニルと交わす。
「では明日の朝、港で会いましょう」
「おう」
酒場を出ようとする彼女の後をライズは自然と付いていき、外に出ようとする瞬間だった。
「ちょっとお客さん?お代、貰ってないんだけど?」
「「え?」」
酒場で食べたり飲んだりしたにもかかわらず、二人してお金を払うことを忘れているのだった。
両者は、催促する店員の方を一旦見ると、リーシャとライズはお互いに目を合わせた。
ライズは、店員に聞かれないように静かにリーシャに喋りかける。
同じくリーシャも店員に聞こえない声で話し始め、二人によるコソコソ話が始ま
りだした。
「今回の食事は、主人であるリーシャ持ちだって話って聞いたはずだけど?」
「私が出すつもりだったのだけど、金貨しか持ってないのだから、払えないじゃない」
「それなら、銅貨ないし銀貨にでも両替してもらったら?」
「あれだけ盛大に風呂敷を広げたのに、いまさら酒場に戻って『金貨を両替してください』っていうのも、歯切れが悪いじゃない。ライズは持ち合わせてないの?」
「あるにはあるけれど、主人としても面目というか立場が悪くなることについては気にしないの?」
「私には関係のない話だが?だけど、今日の宿屋の天井が、素敵な星が浮かぶ夜空のような見た目だったら嫌だからなぁ?ここは私が持っておきましょう」
ライズはリーシャの背中を軽く叩くと、店員に食事代の銀貨を手渡すと、不機嫌そうな笑顔を主に向けるのだった。
こうして、ドタバタだった二人の初めての食事が終わり、宿屋に向かうのだった。
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