第30話 テーブル④
「即金でないといけないかしら?別に手元にないってわけじゃないけれど」
「ん~~そうだな。そりゃ先に金がある方がこっちも快く動けるが。即金でないとして、いくら用意するつもりだ?」
「金貨20枚くらいでどうでしょう?」
「少し足りんな。こっちは、今引き受けている仕事すべて投げ捨ててまで引き受けるのだぞ」
「そうですか。そうですね……………………。では、倍の金貨40枚をお出ししま
す」
リーシャが少し間を置いて提示した金額に、ケニルも含めてすべての酒場にいる人間が、ただの酒場で行われている、ただの口契約の内容に、目を丸くして驚いていた。
それもそのはず、彼女が最初に提示した金貨20枚という金額は、貨物船一隻を借り上げるには妥当な金額で、内情含めた様々なことを加味して上乗せしても、30枚が妥当。
それにさらに10枚を追加した金額を言ったのだから無理もない。
酒場の中が少しづつざわめき始める中、ケニルは真剣に考え始める。
本当にこの金額を用意するだけの資産と信頼が、目の前の少女にあるのか。すべての仕事を断ってでも、この仕事を引き受ける価値と見返りがあるのか。
「よしっ」
ケニルは椅子から立ち上がると、リーシャの元へ歩み寄る。
「まだ名前を聞いていなかったな。何という?」
「リーシャと申します。家名は事情があり申し上げれませんの」
「ではリーシャと呼ばしてもらうが、良いか?」
「問題ありません。こちらも、ケニルさんはケニルさんと呼ばせてもらっても?」
「もちろん、俺の名はケニル・バンスっていうんだが、気軽にケニルと呼んでもらっても構わない。これからよろしくな、リーシャ」
ケニルは、自身の右手をリーシャに向けて差し出した。
「お受けいただけるのですね。ありがとうございます!!ケニルさん」
「”さん”づけも敬語の堅苦しいからやめやめ、気軽に話していこうぜ」
「はい!!」
リーシャとケニルは、真っすぐと互いの目を見ながら、固く握手を交わす。
こうして、ただの酒場の中で行われたギャンブルは、金貨30枚というとてつもない額のものへと姿を変えて、それを見せられた野次馬ギャラリー達は、驚きと彼女たちに向かって、歓声の声をあげていた。
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