第24話 ギャンブル⑥

 金貨一枚という大金を何の苦労もせずに得た青年は、調子に乗ったようにジョッキを手にしながら、含みのある言い方である提案を出してきた。


「まぁ?別に?賭けるものは別に金でなくても?いいのだが?」


 青年は、リーシャを舐めまわすように、下から上へとジロジロと下心丸出しの目線を送り始めた。


 酒場という公共の場で度が過ぎていると感じたガタイのいい男は、調子に乗り過ぎた青年の頭を思いっきり引っぱたく。


「それは言い過ぎだ」

「ごめんなさ~い。でもそこの嬢ちゃんは、まだ勝負を続けたがってますよ?これをどう”それ”以外で落とし前つけるのかな?なぁ嬢ちゃんよ?」


 青年から指さされながら問われたリーシャは、ニヤリと大げさな笑みを見せてから、円卓の上にある食事用のナイフを手に取った。


「とりあえず手付金代わりにこれでいかがでしょう?」


 自らの赤く長い髪の毛を軽く束ねると、手に取ったナイフでバッサリと切り落とし、円卓の上に置く。


 後ろで見守るように立っていたライズは、目を見開いて主人の行動に驚いている様子だったが、目の前の青年は腹を抱えたように笑っていた。


「は?嬢ちゃん正気か?手付金代わりといったが、まさかそれだけじゃないだろう?」

「えぇもちろんよ。あなたが勝てば私を好き勝手にすればいいわ。私は私自身を賭けるわ」

「大きく出たな、この勝負乗りますか~~~」

「お受けいただきありがとうございます」

「まぁ俺にはもう、嬢ちゃんから奪い取ったこの金貨があるからね、この勝負に負けようが痛くも痒くもないさ」

「なにをおっしゃているのです?私が金貨一枚の価値にしか見えませんか?どう見ても二枚はあるでしょう?こう見えて私、字の読み書きはもとより、人並み以上の才と学は持ち合わせておりますわ」


 リーシャは短くなった髪の毛先を触りながら、ガタイのいい男に目線を送った。


 彼は、顎に手を当てながらリーシャを値踏みした。

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