第22話 ギャンブル④

 青年の虚勢のような発言に、思わずガタイのいい男が止めに入る。


「悪いことは言わねぇ、やめておけ小僧」

「あぁ?金貨一枚くらいどうにでもならぁ」

「だがお前、今、金貨持ち合わせてないだろ?そもそも無理な賭けじゃねえか」

「なかったら借りればえぇ、よぅ店主!!金貨一枚貸してくれぇ」


 酒場中に響き渡る大声で金貨をねだる青年の前に、いかにも店主っぽいエプロンを身に着けた太った男が出てきた。


「金貨一枚か?」

「あぁ、金貨一枚だ」

「借用書さえ書いてくれるならいくらでも貸すが、本当にええんか?」

「もちろんだ、男に二言はねぇ!!」


 青年は店主が持ってきた紙とペンで借用書を書き留める。

 借用書を書き終えると、ペンを投げ捨てるように置くと、自身を活気告げるかのように、円卓を思いっきり叩いた。


「よっしゃー!!勝負じゃ!!さっさとコインを投げてくれや」

「よろしくお願いしますわ」


 リーシャが静かに相手に応じると、ガタイのいい男は高く高くコインを弾き飛ばし、自由落下するコインを手の甲の上で両者に見えないように、もう片方の手で抑え込む世にキャッチする。


「さぁ決めろ女!!裏か表か!!」


 金貨一枚を失くすか二枚になるかの決断を委ねられたリーシャは、少しの間をおいて答えを出した。


「裏よ」

「本当にいいのだな?じゃあ小僧は裏ということになるな。では勝負!!」


 ガタイのいい男が、コインを覆っていた手をのけると、運命は正体を現した。

 円卓を挟んでリーシャの目の前にいる青年の顔つきがみるみると笑顔で満ち始め、拳を高く上げて、全身を使い喜びを表現している。


「よっしゃっ!!この金貨は俺が貰っていくぜ!!」


 青年はリーシャが円卓の上に置いた金貨を、何食わぬ顔で手に入れた。

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