第19話 ギャンブル①
「ねぇライズ?あれは何をしているのかしら。私には銅貨を受け渡しているようにしか見えないのだけど?何かの商売や取引をしているのかしら?」
「いえ、あれはそう大そうなものではないし、そんな中身があるような有意義なものでもない。あれはただの賭け事、コインの裏表を当てる遊びに過ぎない。いわゆるコイントスってやつ」
「楽しいの?ライズはやったことある?」
「やったことはあるけれど、楽しいか楽しくないと聞かれれば、楽しくはない。手の中のコインの結果が分からない人達からしてみれば面白いかもね」
「それってどういう意味?これくらいしかない小さな銅貨が、あんなにも素早く回っていたら、表も裏も分からないじゃない?」
リーシャは片目を閉じて、目を凝らすフリをするようにして、片手の指で銅貨のサイズを示した。
ライズはため息をつきながら、ジョッキを手に持つ。
「はぁ。普通は分からないでしょう。そんなことより、興味があるのなら参加してくるといい。私はこのジョッキと酒を飲み交わしているから」
「私でも参加できるの?お酒も飲めない子供だけど……」
「お酒は体を害するかもしれないが、賭け事で痛めるのは財布だけだから、いい経験と思って楽しくやってくるといい」
リーシャを突き放すように言うと、ジョッキの中身を一気に飲み干して、次のジョッキたちと飲み始めるライズだった。
――ちょっと怖いけど……ここで足踏みするようじゃこれからやっていけないわね。
元お嬢様は、内心恐る恐るとしながらも、背筋をピンと伸ばして胸を張ってコイントスをしている円卓へと向かう。
虚勢を張りながらも途中で怖気づいたのか、ライズから借りている黒いローブを頭にかぶり、顔を隠した。
表情を見られないようにうつ向くように向かう彼女が円卓の前に着くと、一人のガタイのいい男が話しかけてくる。
「よう、見ない風貌だな。あんたこの辺の人間ではないだろ?」
「えぇ」
「おっっとかわいい声じゃねえかよ?女が来たぞ女がぁ!!」
ガタイのいい男が酒場中に響くような声で叫ぶと、さっきまで円卓を囲んでコイントスの賭け事をしていなかった人までもが、物珍しそうに野次馬のようにやってきた。
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