第14話 人を雇う③
「ケンベルクという名は御存じ?」
「は?当たり前ではないか。貴族筆頭と言っても過言ではないくらいだぞ」
「お見知りいただき光栄ですわ」
「なにが光栄だ。お前とは何ら関係ないだろう。とりあえず外へ行こうか」
女戦士はリーシャの言ったことに、ひとつも聞く耳を持たずにして、無理やりにでも連れ出すために腕を掴もうとした。
「おやめになったほうがよろしくてよ?」
お嬢様のリーシャは、女戦士が掴もうとしてくる手を、軽々とあしらう様に振り払った。
「あら?この手は何かしら?気軽にこの私に触れられるとお思いで?」
「何を思いあがってる、白々しいにもほどがあるぞ」
「おほほほっ」
お嬢様のリーシャは口元に手を当てて、高らかに大げさに笑みを浮かべた。
「おっと、失礼しましたわ。こ私としてもお恥ずかしい。自己紹介を忘れていましたわ。私の名はリーシャ・ケンベルク。この名の通りケンベルク家の本家に名を連ねるものですわ。」
目の前のボロボロな服を着ている少女が、堂々と権威ある自己紹介をしたことによって、女戦士は再び腕をつかみ返す隙なく、呆然と固まってしまった。
「え?」
「はい!!」
リーシャは満面の笑みで、女戦士の目を見つめた。
女戦士の脳裏によぎるのは、これがただの”はったり”だという可能性と、事実だという可能性。
こんなボロボロの服を着ている少女がお嬢様なわけがない。しかも、護衛をつけずに夜中の森を歩いていた。考えれば考えるほどにケンベルク家の人間だとは思い難い。
ただ、後者の可能性。目の前の少女がケンベルク家の人間だということが本当だとしたら、何のいわれもない有数の貴族のお嬢様を自警団に突き出すようなものなら、女戦士自身が処罰を受けてしまうかもしれない。
女戦士の表情は、苦笑いをするかのように、みるみる内にひきつっていく。
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