第13話 人を雇う②
「お願いだからちょっと待ってください!!」
リーシャは家を飛び出してからずっと、大切に隠し持っていたティアラを、女戦士の前に差し出した。
気だるそうに振り返った女戦士は、そのティアラを見るようにして、少し姿勢を低くして顔を近づけた。
「こ、これは本物か?」
「ええ、本物よ」
「私自身、あまりそういった装飾品に興味がないのだが、そんな私でさえも目の前に
あるこれが、どれだけの価値を持っているかは容易に想像がつく」
部屋に差し込む夕日によって、より一層と輝きを増し、女戦士の目をくぎ付けにしていた。
じっくりとティアラを眺めた女戦士は、そのまま顔をあげてリーシャを睨んだ。
「で?どこで盗んだ?」
「は……はい?」
「だから、どこで盗んだのかと聞いている。お前みたいなみすぼらしい小娘が、そんな高価なものを持っていること自体おかしな話だ。いっそのこと報奨金目当てで、お前をティアラごと自警団に突き出してやろうか?」
女戦士のあまりにも見下すような上からの物言いに、生粋のお嬢様育ちの少女は歯をくいしばって苛立ちを押さえるように固くつむる。
「そもそもが、あんな夜中にあんな暗い森の中を一人でうろついていたこと自体おかしな話だったか。どうせ、それを盗んでから逃げ隠れしていたのだろ?」
ケンベルク家という狭い箱庭から必死で逃げ、やっとこれから始まるというところ。
耐えるようにして口を閉ざしていたリーシャだったが、泥棒扱いにされては全てが水の泡。
リーシャはとうとう口を閉ざすことを諦めた。諦めざるを得なかった。
怒りをぶちまける為……ではなく、自由を描く自身の未来のために。
彼女はお嬢様の堂々とした風格を漂わせながら、女戦士との距離を詰める。
女戦士と出会ってからは、一度も見せたことのない凛とした表情を浮かべた。
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