第8話 小学六年の頃のちんこ①
僕は小学六年生になった。 廊下を歩いていると、真新しいランドセルを背負った一年生たちの姿が目に入る。まだ背も低くて、まるで幼稚園児のようだ。自分もこんなに小さかったのかと、不思議な気持ちになる。
あの頃の僕には、六年生は遠い存在で、まるで大人のように見えた。そして、小学校の六年間は果てしなく続くような気がして、毎日同じような日々が、ゆっくりと流れていくように感じていた。
でも気がつけば、その長く感じていた時間はいつの間にか過ぎ去り、今では自分が六年生になっている。不思議なことに、かつて見た六年生のような大人らしさは感じられず、むしろ自分がまだまだ子供だということを、はっきりと自覚している。
時間が経つのは本当に早いものだ。一年生の時には永遠に続くと思っていた六年間は、振り返ってみれば、あっという間だった。
クラスのメンバーは5年生からそのまま持ち上がりで、顔ぶれに新鮮さはなく、先生も去年と同じ。でも、この変わらない小学生としての日常も、来年には終わる。僕は中学生になる。中学生という響きだけがやけに大きく感じるけれど、それがどんな世界なのか今の僕には全然想像がつかない。この当たり前に思えた小学生の日々が、もうすぐ終わりを迎えるんだと思うと、なんだか胸がざわつくのだった。
僕のクラスは、どちらかというと子供っぽい子が多かったんだと思う。小学六年生の一年間を振り返ると、性的な話題がクラスで話題に上ることはほとんどなかった気がする。もちろん、小学生らしくコロコロコミックに出てくるような幼稚な下ネタで笑い合うことはあった。でも、それ以上に踏み込んだ話になることはなかった。
たとえば、「チン毛が生えた」とか、そういう話を聞いた記憶がない。オナニーについて語る子なんて当然いなかったし、クラス全体でそんな話題が出るような雰囲気でもなかった。もしかしたら、本当にチン毛が生え始めていた子がいたのかもしれない。でも、みんなそれを話す勇気がなかったのか、あるいはまだ自分たちの変化に気づいていなかったのか。少なくとも僕の周りでは、そういうことが話題になることはなかった。
だからこそ、「チン毛が生える」ということ自体、僕の中で現実味を持っていなかった。どういうタイミングで、どんな風に生えるのか、そんなことを考えたこともなかった。
ただ、こうした雰囲気は僕のクラスだけの特別なものだったのかもしれない。大人になってから、他の人の話を聞いたりして知ったことだけど、小学六年生の段階で「もうチン毛が生えた」とか、そういう話題で盛り上がるクラスもあるらしい。学校や地域によって空気が違うのか、クラスの性格によるものなのかはわからないけど、僕のクラスでは、そんなことは全然なかったのだ。
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小学六年生になった時、ふと頭をよぎった記憶があった。それは、かつて兄が小学六年生だった頃のことだ。
兄が小学六年生になるまでは、それは小さな子供のちんこだった。僕が知っている兄の姿は、それまでずっとそんな感じだった。でも、兄が小学六年生の時のちんこは明らかに違っていた。太さも長さもこれまでと全く違い、大きく変わっていた。その瞬間、子供のものではなく、何か別の存在に見えた。
当時小学三年生だった僕には、それがどういうことなのかよく分からなかった。ただ、目の前で起こった変化に驚きを感じながらも、それが自分にはまだ遠い未来の話だと思っていた。僕にとって六年生なんて、ずっと先のことだったからだ。
でも、気が付けば、その「ずっと先」はもう来ていて、僕は小学六年生になっていた。あの時の兄のちんこのように自分のちんこもなるのだろうか。それを考えると、心の中で嫌だという強い気持ちが浮かび上がってきた。僕はまだ子供のままでいたいのに、そんな風に変わるのが怖かった。
僕は兄が六年生だった時の背丈にはまだ全然及ばない。だから、もしかすると僕は兄のようにはならないんじゃないか。そんな風に思いたかった。自分だけは変わらずにいられるのではないかという、小さな期待を抱いていた。
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僕は、この頃、自分のことをまだまだ子供だと思っていた。でも、身体はそんな僕の意識を追い越すように先へ進んでいるようだった。六年生になった頃から、それを特に強く感じるようになった。その象徴的な出来事が、ちんこの勃起だった。
小学六年生になってから、その頻度が確実に増えているのを自分でもはっきりと感じていた。朝起きた時、一人で机に向かって勉強している時、何の前触れもなく突然起こるその現象に、どう対応すべきか分からなかった。ただ、それだけならまだよかった。もっと困ったのは、学校にいる時、予測できないタイミングでそれが起こることだった。
授業中、黒板をノートに写している時、教科書を読んでいる時、特に理由もなく、不意に始まる。誰かに気づかれてしまうのではないかという恐怖で、心臓が跳ねるように早くなる。僕はいつも緊張しながら、何とかやり過ごそうと必死だった。
学校だけではなかった。たとえば、お風呂で体を洗っている時。熱いシャワーが肌に触れているだけなのに、ふいに反応してしまうことがある。
勃起そのものは、以前からあった。小学校の低学年の頃にも、時々そうなることがあったのを覚えている。
でも、今はまったく違う。
まず、その頻度が圧倒的に増えた。低学年の頃はたまにしかない珍しい出来事だったのが、今では日常的に起こるようになっている。
それがただ頻度が上がっただけでなく、自分でコントロールできないことに困惑していた。どうしてこうなるのか、なぜ今なのか、その理由はわからないけど、確実に以前とは違う感覚があった。
僕は小学二年生くらいの幼い頃、ちんこをいじって勃起させて遊んでいたことがあった。その時、母親に見つかって「そんなことをしてはいけない」と強く注意され、恥ずかしくてそれ以来触るのをやめるようにしていた。その出来事は、子供心に深く残っていて、それ以来、ちんこに触ることにはどこか罪悪感を覚えていた。
だから、今また頻繁に起こる勃起についても、同じように触らないようにしていれば大丈夫だろうと思っていた。でも、触らなくても突然勃起してしまう。しかも、その状態がしばらく続くたびに、ちんこの奥の方からむずむずと何ともいえない不快感が湧いてくる。それはただの違和感だけではなく、じわじわと意識を支配するような感覚だった。
ある日、風呂に入っている時にふと考えた。父親は毎日風呂に入っていても、そんな様子を見たことがない。僕は、父親のようになれば、この現象もどうにかなるんじゃないかと思った。思い浮かんだのは、父親の亀頭が普段から露出している姿だった。もしかしたら、亀頭が露出していると勃起しなくなるのかもしれない、そう思った。
そこで、風呂から出た後に試してみることにした。亀頭部分を指でむき出しにして、そのままパンツを履いてみた。だけど、予想以上にその粘膜は敏感だった。パンツの布地が直接亀頭に触れると、ヒリヒリとした刺激が肌に伝わり、思わず声を出しそうになるほど痛かった。それ以上試すのは無理だとすぐに諦めてしまった。
僕はこの頃、ちんこがどうして勃起して硬くなるのか、その理由も意味も全く知らなかった。それが何のために起こるのかも分からないし、その先にどんな役割があるのかなんて、考えたこともなかった。
小学校六年生になってから、自分の体に今まで感じたことのない不思議な感覚が生まれてきた。ちんこのあたりからじわじわと湧き上がるような、どう言葉にしていいかわからないムズムズした気持ちだ。幼い頃にはなかったこの感覚は、初めて経験するもので、戸惑いも混じっていた。これが何なのか、どうしてこうなるのか、自分にはさっぱりわからなかった。ただひとつ言えるのは、この感覚が高まると自然にちんこが硬くなることで、その状態がどうしようもなく気になってしまうということだった。
硬くなったちんこに触れたくなる衝動に駆られるのも、何かに導かれるような感覚で、自分から意識的にそうしたいと思ったわけではなかった。しかし、そうしても一向に気持ちが晴れるわけではなく、どうすればこのムズムズが収まるのかもわからない。原因が何かも知らないまま、ただその感覚に振り回され、どうしようもないもどかしさを抱え込んでいた。
この新しい感覚は、日常生活の中でも思いがけない場面で突然襲ってきた。たとえば、机に向かって勉強をしようとしたとき。教科書の文字を追っているつもりが、いつの間にかそのムズムズに意識が引っ張られてしまう。頭の中がそのことばかりで占められ、勉強どころではなくなる。どうにかして集中しようとしても、その気持ちはしつこく体の中に居座り続けた。
仕方なく触ってしまうこともあったが、それでも完全に消えるわけではなかった。触れた後、自分は何をすればいいのかもわからず、中途半端な気持ちを抱え込んでしまうばかりだった。この感覚は、僕にとってなんだか得体の知れないものだった。今までの自分にはなかった新しい感覚に、体が変わっていくような気がして、自分の変化に驚きと戸惑いを感じていた。
当時の僕には、「オナニー」という言葉すら知らなかった。
耳にしたこともなければ、意味を知る機会もなかった。セックスについても、どこか漠然としたイメージしか持っていなかった。具体的に何をする行為なのか、全く理解していなかった。
性教育の授業で多少の知識は得ていたはずだが、それも断片的で、ましてや自分自身に結びつけて考えることはできなかった。
だから、小学六年生になってから頻繁に起こる勃起について、自分にはコントロールできないこの身体の変化に戸惑いつつ、その理由を知る手段もなく、ただやり過ごすしかなかった。
この頃の僕には、ちんこを誰かに見せたり、露出したりするのは絶対にやってはいけないことだ、という意識がしっかりと根付いていた。
だからこそ、勃起という現象そのものが他人に知られるのは何よりも恥ずかしく思えた。同時に、それを誰かに相談するなんて考えられるはずもなかった。自分の中の秘密として隠し通すべきものだと思っていたし、口にするだけで何かタブーを犯してしまうような気がしたのだ。
当時の僕は、この勃起という現象に性的な意味があるとは考えたことがなかった。まだ性について何も知らない僕は、ただ困惑しながら受け止めるしかできなかった。性的な欲求の表れだとか、そんな深い意味があるなんて、この頃の僕には想像もつかなかった。
この小学六年生になってからの頻繁な勃起には、思い返せば伏線があった。
小学五年生の頃、僕は自分のちんこに小さな変化が起きていることに気付いてた。
それは、誰にも気づかれないくらいの、ごくわずかな変化だった。自分の感覚として、睾丸が少しだけ大きくなったような気がした。ただ、それも「気のせいかもしれない」と思える程度の微妙なものだったし、見た目で言えば、全体的にはまだ子供のちんこそのものだった。
ただ、今になって思うと、その時すでに睾丸の中で何かが動き始めていたのだと思う。微量の男性ホルモンが分泌され始め、それが睾丸の成長を引き起こし、さらにその成長がホルモン分泌を促進するという循環が、僕の中で静かに進行していたのだろう。気づかないうちにその変化は加速していたのかもしれない。
小学六年生の始まり頃には、その進行が明らかになっていたのだろう。睾丸が以前より確実に大きくなっていたのかもしれない。その結果として男性ホルモンの分泌が高まり、ついにはちんこが勃起しやすい状態になってしまっていたのだと思う。
僕は、自分の睾丸の中で何が起きているのかなんて、あの頃はまったく知らなかった。でも今思えば、僕の幼いちんこは、知らないうちに生殖器としての役割を持つために作り替えられ始めていたのだと思う。
当時の僕の外見はまだ身長も低く、ただの子供にしか見えない。けれど、その身体の内側では、外見とは釣り合わない少し大きくなった睾丸が成長を始めていた。男性ホルモンを出し、精子を作る準備までも進めていたのだろう。誰からも、そして僕自身からも見えない場所で、着実に進行していた。
その頃の僕は、そんな変化が自分の中で起きているなんて想像もしていなかった。性という概念を理解する前に、僕の身体は僕の意識とは無関係に作り替えられていたのだ。
でも、これはきっと、僕だけの話ではなかったはずだ。クラスメイトの睾丸でも、僕と同じような変化が進行していたのだと思う。
休み時間に走り回って遊ぶ姿や、体育の時間に全力でボールを追いかける声は、間違いなく子供らしい純粋さに溢れていた。けれど、その内側では僕と同じように、男性ホルモンが分泌され、精子を作る準備が進み、彼らのちんこも次第に大人のものへと書き換えられていたのだろう。
僕たちはその時、自分自身に起きている変化に気づくこともなく、ただ日常の中で笑い合って、遊び、学んでいた。でも、その裏では、僕たちの体は少しずつ子供から大人へと変えられていたのだろう。僕たちの意思とは関係なく、静かに、確実に進む変化がそこにはあったのだろう。
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僕がこのくらいの歳だった頃、新聞の広告欄を眺めるのがなんとなく好きだった。特に興味があったわけではなく、時間つぶしのような感覚で、細かい文字がびっしり並んだその欄を何気なく追っていた。でも、その中に時々目に飛び込んでくる性的な単語が、どうしても気になって仕方がなかった。普段目にすることのないその言葉には、大人だけが知る秘密が隠されているような気がしたからだ。
その中でも特に覚えているのは、「インポ」という単語だった。初めてそれを見た時、何のことだか全然分からなかった。なんだろう、この言葉。どこか引っかかる感じがして、辞書を引いて調べることにした。 辞書に書かれていたのは「勃起不全」や「勃起しない病気」といった内容だった。
その瞬間、僕の頭に浮かんだのはらこの病気になりたいという気持ちだった。
当時の僕にとって勃起という現象は、とにかく厄介で恥ずかしくて、何よりも迷惑なものだった。
さらに、そうなれば僕のちんこの成長も止められるかもしれないと思った。僕は、ずっと子供のままの小さなちんこでいたかった。それは、成長していく身体への戸惑いや、変わっていく自分への抵抗のような感情だった気がする。
だから、辞書の説明を読んだ時、僕は不思議に思った。「なんで大人はこんな病気を治したいんだろう?」と。
でも、どうすれば自分が「インポ」になれるのかは全くわからなかった。ネットにも治療法らしきものが書かれていたけれど、そこに「なり方」なんて項目は載っていない。その言葉を見つめながら、僕はただ漠然とした願いと、抑えようのない戸惑いを抱えていた。
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小学六年生になって、僕の体と周りの世界が急に変わり始めた。それまで僕は、性というものにまるで縁のない、ただの子供の世界に心地よく浸っていた。でも、その平穏な世界は突然終わりを告げた。まるで扉が不意に開かれたように、「性」という未知の領域が目の前に現れたのだ。それは自分の意思とは無関係で、僕はその扉の向こうに無理やり引っ張られていくような感覚を味わった。
特に、自分の体に起きた変化は想像以上に衝撃的だった。その中でも最も大きな変化は、ちんこが頻繁に勃起するようになったことだ。それまでそんな現象はほとんど経験したことがなかったのに、小学六年生になった途端、自分では全く制御できず、何の前触れもなく勃起してしまう。それがどういう意味を持つのかもわからず、ただ戸惑うばかりだった。
僕はまだ「大人の世界」なんてものがどんなものかは全然わからない。ただ、その入り口に今立たされていることだけは、確かに感じていた。自分の中で何かが始まろうとしている。でも、それがどう進んでいくのか、僕には何一つわからなかった。
それでも、この変化は止められない。僕の身体は、僕の理解を待つことなく先へと進んでいくのだった。小学六年生のちんこの変化は、まだ始まったばかりだった。
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