第2話 幼稚園の頃のちんこ

僕のちんこの記憶を遡ると、最も古いものは幼稚園時代に行き着く。

それは、僕がこの世に生を受けてから、まだたった数年ほどしか経っていない頃の話。

その時の僕は初めて自分という存在を意識し始めていた。考えてみれば、その数年前までは、この世界のどこにも僕は存在していなかったのだ。


この頃の僕は、まだ小さな手足を精一杯動かしながら、目の前に広がる不思議な世界を必死に理解しようとしていた。まだぼんやりとした意識の中で、自分の体の感覚や、周りの世界との関係を、一つ一つ確かめるように探っていた、そんな時期の思い出。


今振り返ると、あの頃の面影はほとんど残っていない。特に大きく変わったのがちんこだ。


今の僕のちんこは、太くて長く、周りには黒々とした陰毛が生え揃っている。でも幼稚園の頃は、本当に小さくて細かった。

周りには一本の毛も生えていなかった。下腹部から太もものつけ根まで、全て柔らかな素肌が広がっているだけだった。


当時は特に何も意識していなかったけれど、大人になった今、記憶の中のあのちんこを思い返すと、不思議な気持ちになる。


細くて小さな形は、今の太くて大きな自分のものとは、まるで別物のようだ。亀頭は包皮の中に完全に隠れていて、外からは見えなかった。包皮は先端でしっかりと閉じられており、先端に向かって少しずつ細くなっていく形は、まるで小さな蕾のよう。

その姿は今の太くて大きな自分のものからは想像もつかないほど、愛らしかった。

大人になることなんて想像もつかない、あの頃の僕。

そんな姿は、もう二度と戻ってこない。大人になった今、ただ記憶の中でしか見ることができない、遠い昔のちんこなのだ。


幼稚園では、僕は、みんなと一緒に踊るお遊戯が苦手だった。先生の動きを真似できず、いつも周りの子をチラチラ見ながら、必死に合わせようとしていた。そんな不器用な僕でも、確かに覚えているのは自分のちんこへの関心だ。


たしか、最初にちんこの存在を意識したのは、幼稚園のプール時間だった。着替え場所で、ふと目に入ったのは、同じクラスの女の子の裸。その瞬間、僕は衝撃的な事実に気がついた。女の子の股間には、ちんこがない。

それまでも、母親から「女の子にはちんちんがないのよ」と聞かされていた。

でも、実際に目の前で見るまで、その言葉の意味が本当には分からなかった。なんで女の子にはちんこがないんだろう。一体どこからおしっこが出るんだろう。そんな素朴な疑問が、幼い僕の頭の中でずっと巡っていた。

でも結局、その疑問の答えを見つけることはできなかった。自分にちんこがあるから、おしっこが楽にできる。そんな単純な理解で、僕は自分を納得させるしかなかったんだ。


そして、僕が大人のちんこと自分のちんこの違いを知ったのも、この幼稚園の時期だった。


幼稚園の頃、僕は父親との入浴で、初めて大人のちんこを目の当たりにした。それは、自分のちんこと違いすぎて、強い衝撃を受けた記憶として今も残っている。

脱衣所で父が服を脱ぐと、僕の目は父の股間に釘付けになった。そこには驚くほど濃い陰毛が生え揃っていた。黒々とした毛が、父のちんこの周りを完全に覆い尽くしている。その光景は、幼い僕にとって異様で不自然に映った。自分の股間が何も生えていないだけに、その違いが余計に鮮明に感じられた。「なんでこんなところに毛が生えているんだろう?」という疑問が頭をよぎった。


次に気になったのは、父のちんこの形だった。僕のちんこは、皮に完全に包まれていて小さかった。でも父のちんこは、亀頭が完全に露出していて、皮も後ろに下がっていた。そして、その大きさに僕は衝撃を受けた。父のちんこは、太さも長さも、僕のものと比べものにならないほど巨大で、色も黒っぽかった。


幼い僕は、同じちんこなのにどうしてこんなに違うのか理解できなかった。自分のちんこと父のちんこを見比べながら、その違いに戸惑いを感じた。どうして父のちんこはあんなに大きいのか。どうして毛が生えているのか。どうして形が違うのか。そんな疑問が次々と湧いてきたけれど、幼い僕の頭では、その答えが思いつかなかった。


父親のちんこを見た時、僕の中には相反する感情が湧き上がった。まず、強い嫌悪感。特に陰毛に対して、僕は言いようのない不快感を覚えた。黒くて縮れた毛が、びっしりと生えている様子は、幼い僕には不潔で気持ち悪いものに見えた。それなのに父は、そんな姿を全く気にする様子もなく、ごく自然な表情で風呂場に立っていた。

でも同時に、僕の中には抑えきれない好奇心も芽生えていた。なぜ大人のちんこはこんな形をしているんだろう。どうして毛が生えてくるんだろう。そして、僕のちんこも、いつかこんな風に変化するのだろうか。当時の僕には、自分のちんこがこんな姿に変わっていくなんて、全く想像がつかなかった。父親のちんこと自分のちんこがあまりにも違いすぎて、それが同じものだとは信じられなかった。


幼稚園の友達のちんこは小さくて可愛らしく、どれもよく似ていた。

だからこそ、父のような大人のちんこを見ると、その違いは衝撃的だった。特に陰毛については、あまりの異質さに戸惑いを感じた。股間一帯を覆い尽くす黒い毛。それは小さな僕には、どこか不気味で怖いものに見えた。

それに、大人のちんこの亀頭も、子供のちんこには見られない奇妙な存在だった。皮から露出した赤みがかった部分は、まるで体の内側が外に出ているかのよう。その光景は幼い僕に、なんとも言えない気持ち悪さを感じさせた。



しかし、ある日、何の気なしに自分のちんこの皮を引っ張ってみた。すると突然、それまで見たことのない光景が目の前に現れた。皮が剥けて、隠れていた亀頭が姿を現したのだ。

父親のものと違って、僕の亀頭は小さくて、ピンク色で艶やかだった。でも、その形は確かに父親のちんこと同じだった。皮を剥いた時に見える形が、父親のちんこと同じ構造をしているんだと気づいた瞬間だった。


その発見を共有したくて、幼稚園のトイレで友達に見せたことがある。「ほら、こうやるんだよ」と言って、皮を剥いて亀頭を露出させた。友達も真似しようとしたが、うまくいかなかった。彼のちんこは、どうしても皮が剥けなかったのだ。

その瞬間、新たな疑問が湧き上がった。なぜ自分だけ皮が剥けるのか。なぜ友達は剥けないのか。ちんこの個人差という概念を、幼い私は理解できなかった。


また、その頃、僕は自分の体に起きる新たに不思議な現象を発見した。何気なくちんこを触っていた時のことだ。

突然、それまでずっと柔らかかったちんこが、少しずつ硬くなっていくのを感じた。徐々に硬くなる感覚は、それまでの人生で一度も経験したことのないものだった。

まるでちんこの中に硬い芯が生まれ、ちんこの内側から膨らんでいくような感覚だった。

普段より大きく、特に長さが増していった。そして上向きに突き出すように変化していった。

この予期せぬ変化に、僕は目を丸くして見つめていた。なぜこんなことが起きるのか、どうしてこうなるのか、全く分からなかった。

そのとき僕には、この現象がどれほど大切なものなのか、まったく分からなかった。むしろ、大したことではないと思っていた。だから、何の躊躇いもなく親に見せたこともあった。親は特に何も言わず、ただ笑っていただけだった。


幼い私の頭の中では、この硬くなる現象とおしっこをしたくなることが何か関係があるのではないかと考えていた。おしっこをしたくなると硬くなる、そんな単純な理解だった。しかし、硬くならなくてもおしっこができることにも気づいていた。


この頃の幼い僕の頭の中で、最も大きな謎の一つは「赤ちゃんはどこからくるのか」という疑問だった。特に、友達の家に赤ちゃんが生まれた時、その疑問は更に大きくなった。

「赤ちゃんってどうやってできるの?」

両親に尋ねると、二人は顔を見合わせて微笑み、「こうのとりが運んでくるんだよ」と教えてくれた。

僕はその答えに完全に納得してしまった。幼い僕には、それ以上の説明は必要なかった。

それからは、散歩中や公園で遊んでいる時も、空を見上げては赤ちゃんを運んでくるこうのとりを探すようになった。時には窓際に立って、空を行き交う鳥たちを見つめては、その中にこうのとりがいないか探したりもした。


まさか、自分の体の一部であるちんこが、将来赤ちゃんを作る大切な役割を持っているなんて、その時の僕には想像もつかなかった。幼稚園児の僕にとって、ちんこはただおしっこをする場所でしかなかった。それ以上の意味も役割も、まだ知る由もなかったのだ。

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