第24話 揺れる心
昴との関係が深まるにつれ、優子は新しい世界に足を踏み入れたような高揚感を覚えていた。彼の情熱や信念に惹かれ、一緒に過ごす時間は新鮮で刺激的だった。しかし、その一方で心の奥底にはどこか違和感が芽生えていた。
ある日の夕暮れ、優子は昴と共にボランティア活動を終え、彼の提案で静かなバーに立ち寄った。カウンター越しに彼の話を聞きながら、ふと彼の視線がどこか遠くを見つめていることに気づいた。
「昴さん、何か考えているの?」優子が問いかけると、昴は一瞬表情を曇らせたが、すぐに笑顔を作り「いや、大したことじゃないよ」と答えた。しかし、その笑顔の裏に隠された何かを感じ取り、優子の胸に不安が広がった。
数日後、優子は偶然にも昴の過去についての噂を耳にした。彼には前科があり、過去にトラブルを抱えていたという。信じたくない思いと、事実を確かめたい思いが交錯し、優子は意を決して昴に直接尋ねることにした。
「昴さん、本当のことを教えてほしいの。あなたの過去について、いろいろな話を聞いたわ」
昴はしばらく沈黙した後、重い口を開いた。「そうだ、隠していてごめん。過去に過ちを犯したことは事実だ。でも、今は更生して新しい人生を歩もうとしているんだ」
彼の言葉には真摯さがあったが、優子の心は大きく揺れ動いた。彼を信じたい気持ちと、不安や恐れがせめぎ合い、胸が締め付けられるようだった。
その夜、優子は一人で家に戻り、新との思い出が次々と頭をよぎった。新の優しさ、誠実さ、そして彼と過ごした穏やかな時間。それらが自分にとってどれだけ大切だったのかを、改めて痛感した。
「私は何をしているんだろう…」優子は涙をこぼしながら呟いた。新を傷つけてまで追い求めたものが、本当に自分の望む幸せなのか。自問自答を繰り返し、夜が更けていった。
翌朝、優子は決心した。昴に別れを告げ、新に自分の気持ちを伝えること。自分の過ちを認め、もう一度やり直したいという思いが胸に溢れていた。
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