第14話 大阪・なんばグランド花月のお笑い鑑賞のデート

 昼前の大阪・なんば。秋の柔らかな日差しが街を照らし、「なんばグランド花月」の大きな看板が二人を迎え入れた。人々の笑い声が遠くからも響き、にぎやかな空気に包まれる中、新と優子は手を繋いで入口に立っていた。 「やっと来れたね、楽しみにしてたよ!」と優子は頬を紅潮させ、輝く笑顔で新に語りかける。彼女の目には、これから始まるお笑い鑑賞への期待と、ほんの少しの緊張感が入り混じっていた。新も心から笑顔を見せ、「ほんまやな。久々に生の漫才やから、めっちゃ楽しみや」と答えた。

 二人は館内に足を踏み入れた。すでに多くの観客が集まり、あちこちで楽しげな会話や笑顔があふれていた。指定された席に腰を下ろすと、会場は次第に静けさに包まれ、舞台が照らされるのを待つ高揚感が広がっていった。 「どんなコンビが出るんかなあ」と優子が小声で囁くと、新は肩をすくめながら、「漫才がメインやろけど、もしかしたら吉本新喜劇もあるかもな」と応じた。二人は顔を見合わせて、微笑みながら、ステージが始まるのを楽しみにしていた。

 やがて場内が暗くなり、最初の漫才コンビが登場すると、軽快なボケとツッコミが次々に繰り広げられた。テンポの良いやりとりが会場全体に響き渡り、観客からは大きな笑い声が上がった。二人もすぐにその笑いの渦に引き込まれ、新は思わず身を乗り出して、「やっぱり生やと、迫力がちゃうなあ!」と声を上げる。優子も「ほんまに、テレビで見るのと全然違うね」と楽しそうに笑い、新と目を合わせた瞬間、二人はさらに大きく笑い合った。

 漫才が進むにつれて、新と優子は自然と肩を寄せ合い、時折お互いに顔を見合わせては笑みをこぼす。そのたびに、二人の距離が少しずつ縮まっていくのを感じた。「こうやって一緒に笑える時間があるって、ほんまに贅沢やな」と新がつぶやくと、優子は穏やかに頷き、「そうやね。何気ないけど、こういう瞬間が一番幸せなんかも」と優しい声で応えた。

 終盤になると、ベテラン漫才師が登場し、昔から愛される鉄板ネタを披露し始めた。会場は笑い声で包まれ、新と優子もテレビで見たことのあるお馴染みのネタに、懐かしさと新鮮さを同時に感じた。「あのときも笑ったやつや!」と新が声を上げると、優子も「そうそう! でもやっぱり、ここで見ると違うわ」と涙を浮かべるほど笑い続けた。

 最後の演者が舞台を降りると、会場は大きな拍手に包まれた。新と優子も席を立ち、感謝の気持ちを込めて拍手を送りながら、お互いの顔を見合わせて笑みを浮かべた。「今日はほんまに楽しかった。こういう時間を大切にしたいな」と新が言うと、優子は心からの笑顔で応えた。「うん、また一緒に来ようね。笑いって、本当に元気もらえるね」

 二人はなんばグランド花月を後にし、太陽がきらきらと川面に反射する美しい景色を眺めながら歩き出した。風がほんのり暖かく、柔らかな昼の光が二人を包む。手を繋ぎながら穏やかな昼下がりの散歩を楽しんでいると、優子がそっと言った。「新、ありがとう。こんな楽しいデート、またしたいな」 新は頷きながら、「もちろん、これからもこうして一緒に笑っていけたら最高やな」と彼女に微笑み返した。彼の言葉に、優子の心は温かさで満たされた。

 二人が並んで歩くその姿は、どこか特別な輝きを放っていた。都会の喧騒を少し離れたこの静かな時間が、二人にとって何よりも大切なものであることを、誰よりもよくわかっていた。新と優子は、何気ない日常に笑いが満ちることで、未来がさらに輝いて見えることを実感していた。やがて二人は、次のデートの計画を楽しげに話し合いながら、笑いに包まれた一日を思い返し、再び手をしっかりと握り締めて歩みを進めていった。

 こうして、新と優子のデートは単なる楽しみを超えて、互いの絆を深め、未来への期待を抱かせるひとときとなった。

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