第18話 嵐の中の帰還
崩壊する施設を背に、雅史、玲奈、大介の三人は孤島を後にした。小型ボートに乗り込み、夜の海を進む。だが、空模様は一変し、厚い雲が空を覆い始めた。
玲奈が不安そうに空を見上げる。
「これは…嵐が来る!」
大介が舵を握りながら苦笑いを浮かべる。
「本当にツイてねぇな。せっかく計画を止めたってのに、帰り道がこれかよ。」
雅史は土鍋を抱え、冷静に海を見つめていた。
「嵐だろうが何だろうが、帰らないと話にならない。大介、何とか舵を取れ。」
大介が頷き、波に揺れるボートを必死にコントロールする。一方で玲奈は、ノーパンティの残したデータを確認しながら呟いた。
「今回の計画を止められたのは大きいけど…まだ全てが終わったわけじゃない。」
雅史が玲奈に目を向ける。
「何か見つけたのか?」
玲奈はタブレットを雅史に差し出した。画面には、次なる施設の座標と「ゼロ地点」という文字が表示されている。
「これは…ノーパンティが最終的に目指している場所のデータよ。もしこれが本当なら、次の戦いが最終決戦になるかもしれない。」
雅史は深く頷き、土鍋を軽く叩いた。
「分かった。その前に、まずは無事に帰ることだな。」
嵐が激しさを増す中、ボートは大きな波に飲み込まれそうになる。玲奈が悲鳴を上げる。
「このままじゃ沈む!」
大介が舵を操作しながら叫ぶ。
「雅史!何とかしてこの波を乗り越えろ!」
雅史は土鍋を背負い直し、決意を込めた目で答えた。
「パッタイの力を借りるしかないな。」
彼は土鍋を開き、限られた材料で素早くパッタイを調理し始めた。湯気がボートを包む中、完成したパッタイを一口食べると、雅史の身体に力がみなぎる。
「行くぞ!」
雅史はボートの縁に立ち、波を睨みつける。重心を低くしてタイミングを見計らい、大きな波に飛び込むようにボートを押し上げた。その力でボートは波を乗り越え、安定を取り戻す。
玲奈が驚きの表情で叫ぶ。
「嘘でしょ!?本当に波を超えられた…!」
大介も思わず笑みをこぼす。
「相変わらずお前のパッタイは無敵だな。」
嵐の中での格闘が続くが、雅史の冷静な判断とパッタイの力で、三人は少しずつ港に近づいていく。
夜明け頃、嵐がようやく収まり、ボートは安全に港へとたどり着いた。三人は疲れた表情を浮かべながらも、無事に帰還した喜びを胸に抱いていた。
玲奈が深く息をつきながら言った。
「本当に帰ってこられるなんて…雅史さんのおかげね。」
雅史は土鍋を軽く叩き、静かに答えた。
「俺だけじゃない。お前たちがいたからこそ、ここまでやれたんだ。」
大介が肩をすくめながら笑った。
「次はもっと楽な任務を期待したいもんだな。」
三人はそれぞれの思いを胸に、次なる戦いへの準備を始めるため、カフェ「パッタイ・タイムズ」へと帰路についた――。
(第18話 終わり)
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