第6話 カフェ閉店の危機

翌朝、泰雅史のカフェ「パッタイ・タイムズ」は、昨夜の戦闘の爪痕を残したままだった。窓は割れ、テーブルや椅子はひっくり返り、ドローンの残骸が散乱している。


「ふぅ、また修理費がかさむな…。」

雅史は頭を掻きながら、散らかった店内を見渡す。そんな中、玲奈は心配そうな顔で話しかけてきた。

「これじゃ営業どころじゃないわね…。ノーパンティに目をつけられた以上、ここで続けるのは危険じゃない?」


雅史は土鍋を背中に背負い直しながら軽く笑った。

「危険なのは承知の上さ。でも、ここは俺にとっての“ホーム”だ。簡単に手放すつもりはない。」


玲奈は少し考え込んだ後、提案するように言った。

「でも、せめてしばらく安全な場所に避難したほうがいいわ。グリーヴァス卿が次に何を仕掛けてくるか、わからないもの。」


その時、店の前に黒塗りの車が停まった。雅史は眉をひそめ、警戒しながらドアを開けると、スーツ姿の男が降りてきた。男はカフェの内部を一瞥し、少し鼻を鳴らしてこう言った。


「泰雅史さんですね。私は市の危機管理課の田嶋と申します。」

「危機管理課?」

雅史が首をかしげると、田嶋は冷たい声で続けた。

「昨夜、ここで大規模な騒動が起きたとの通報を受けています。何やら“爆発物”を使った戦闘があったとか。市としては、このような危険な店を営業させるわけにはいきません。」


雅史は内心ため息をつきながらも、冷静に対応する。

「爆発物なんて使っていません。ただの機械のトラブルです。カフェとは無関係ですよ。」


しかし、田嶋は書類を広げながら首を振る。

「証言もいくつかありましてね。この店が“危険人物”の拠点になっている可能性があると。つまり、しばらく営業停止していただく必要があります。」


玲奈が抗議しようとするのを制し、雅史は静かに微笑んで答えた。

「営業停止ね…。まぁ、しばらく休むのも悪くないか。」


田嶋が去った後、玲奈は苛立った声で言った。

「どうして簡単に従ったの?ここを守るって言ってたじゃない!」


雅史はカウンターに座り、紅茶を淹れながら答える。

「玲奈、俺がここを守るって言ったのは“物理的に”じゃない。“象徴として”だ。営業が停止されたからといって、俺たちの戦いが終わるわけじゃない。」


玲奈は少し驚いた顔で雅史を見つめた。彼の落ち着き払った態度に、何か深い信念を感じたのだ。


その夜、雅史は店内を片付けながら、一人で紅茶を飲んでいた。玲奈は隣の部屋でノーパンティの資料を整理している。

突然、雅史の伊達メガネが警告音を発した。メガネのレンズには、外部からの異常な熱源を感知したことを示す赤い文字が表示されている。


「来たか…。」

雅史は土鍋を背負い、静かに外に出た。夜の街に響く重低音。空を見上げると、巨大な飛行型の機械がゆっくりと近づいてくるのが見えた。それは、ノーパンティが新たに投入した「パンティデストロイヤー」と呼ばれる超大型兵器だった。


「カフェごと吹き飛ばすつもりか…。」

雅史は小さく息を吐き、土鍋を開く。そこには、博士・田宮が開発した特別な「超高密度パッタイ」の材料が入っていた。これを使えば、短時間で最大限の力を引き出すことができる。


「よし、パッタイの力、見せてやる。」

雅史は湯気が立ち上る中でパッタイを完成させ、一気に口に運ぶ。身体が熱くなり、力がみなぎる感覚を覚えながら、彼は土鍋を構えた。


パンティデストロイヤーがカフェを狙って砲撃を開始する。その瞬間、雅史は土鍋を盾にして飛び上がり、パンティブレードを振りかざして機械に切り込んだ。


「パンティの平和を脅かす者は許さない!」

雅史の一撃で、巨大なパンティデストロイヤーは大爆発を起こし、夜空を明るく照らした。


カフェに戻った雅史は、火の粉を払いつつ一息ついた。玲奈が駆け寄ってくる。

「本当に…あなたはすごい人ね。」


雅史は照れくさそうに笑いながら紅茶を一口飲んだ。

「さて、しばらくこのカフェを閉める間に、敵の本拠地に乗り込む準備をしないとな。」


玲奈は真剣な表情で頷いた。

「ええ。ノーパンティのボス、グリーヴァス卿を止めるために。」


新たな戦いへの決意が、二人の中に生まれていた。


(第6話 終わり)

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