第5話 ノーパンティの反撃

ノーパンティの本部。

広大な廃倉庫を改造したその場所では、組織のボス、グリーヴァス卿が部下たちを前に冷酷な目を光らせていた。

彼は高価なスーツに身を包み、長い指でパンティバキュームの設計図をなぞりながら低い声で命令を下す。


「泰雅史…カフェのマスターにして、パンティを守る者。奴を甘く見ていたようだ。」

部下の一人が報告する。

「申し訳ありません、ボス。彼はただの人間とは思えないほどの力を――」

「言い訳は聞き飽きた。」

グリーヴァス卿は部下を一喝し、続けた。

「奴には、こちらも特別な手段を講じる必要がある。そうだ…新兵器を使え。」


部屋の奥から現れたのは、金属製の巨大な装置。

「これは“ノーパンティドローン”。パンティを自動的に探知し、吸引する能力を持つ。しかも、奴がどこにいようと追尾する。」

部下たちはその威力に恐れを抱きつつ、命令に従った。


その頃、カフェ「パッタイ・タイムズ」では、雅史が玲奈とともに静かな午後を過ごしていた。玲奈はノーパンティの計画についての資料を整理し、雅史は土鍋を手入れしながら彼女の話に耳を傾けていた。


「パンティバキュームは、本部の地下深くにあるはず。でも、その設計図が完成し稼働を始めたら…この世界からパンティは消滅するわ。」

玲奈の表情は深刻そのものだった。


雅史は土鍋を軽く叩きながら言った。

「それなら早めに動く必要があるな。でも、まずはノーパンティの次の動きを待つべきだ。」


その言葉が終わるか終わらないかのうちに、カフェの窓がまたしても激しい音を立てて割れた。

「またか…ったく、窓ガラス代がバカにならないな。」

雅史がそう呟きながら外を覗くと、そこには無数のノーパンティドローンが浮かんでいた。銀色の機体が光を反射し、不気味な音を立ててカフェを包囲している。


「何なの、あれは?」

玲奈が怯えた声を出す。雅史はすぐに状況を察し、土鍋を背負い直すとパッタイの準備を始めた。


「ノーパンティが本気を出してきたようだな。玲奈、ここは俺に任せて、隠れていろ。」

雅史は素早く土鍋を開き、パッタイの材料を入れる。具材が煮え、湯気が立ち上ると同時に、ドローンたちがカフェの中に侵入し始めた。


一口パッタイを食べると、雅史の身体が再び強化されていく。

「これが無敵のパッタイの力だ…!」


雅史はドローンの一機に向かって飛び上がり、拳を叩き込む。金属の外装が粉々に砕け、火花が飛び散る。

しかし、ドローンの数は膨大だった。次々と侵入してくる機体に対し、雅史は冷凍パンティの刀を取り出して応戦する。


「これでも食らえ!パンティ・ブレード!」

氷の刃が唸りを上げ、ドローンを次々と切り裂いていく。その様子をカウンターの後ろから見ていた玲奈は、彼の戦いぶりに驚嘆していた。


しかし、敵も黙ってはいなかった。リーダー機らしきドローンがカフェの奥に向かい、玲奈を狙おうと動き出す。

「おっと、そうはいかないぜ!」

雅史は飛び上がり、土鍋をブーメランのように投げつけた。土鍋は正確にドローンに命中し、その場で機能を停止させた。


最後の一機を破壊すると、カフェの中は静寂に包まれた。玲奈は恐る恐る立ち上がり、雅史に声をかける。

「大丈夫…なの?」


雅史は土鍋を拾い上げ、微笑みながら答えた。

「ああ、何とかね。でも、これは始まりにすぎない。」


その夜、グリーヴァス卿は部下からの報告を受けていた。

「ドローンがすべて破壊されました。雅史は…手強い相手です。」

卿は静かに椅子に座り、暗い目で部下を見つめた。

「泰雅史…面白い。だが、次は奴のカフェごと消し去る。それができる新たな兵器を準備しろ。」


戦いの火種はさらに燃え広がろうとしていた――。


(第5話 終わり)

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