第2話 土鍋の秘密兵器

朝の空気が澄んでいる。カフェの看板を片付けた雅史は、背中に土鍋を背負いながら歩いていた。彼の足はカフェの常連客にも知られていない「特別な場所」に向かっていた。


その場所は、街外れの廃工場。入り口は錆びた鉄の扉に覆われているが、雅史は迷うことなくその扉を開いた。

内部には薄暗い空間が広がり、中央には奇妙な形をした機械が並んでいる。その中で、唯一明るく照らされている机の前に、一人の男が座っていた。


「よお、雅史。久しぶりだな。」

机の前に座っていたのは、科学者の**博士・田宮(たみや)**だった。白衣を着た彼は、何やら土鍋の形をした機械を分解している。


「田宮博士、例の件で頼みがある。」

雅史は迷いなく切り出した。田宮博士は顔を上げ、土鍋を指さす。


「その顔を見るに、土鍋の新機能が必要なんだろう。次の任務ってやつだな。」

雅史は小さく頷いた。ノーパンティという謎の組織に挑むには、彼の武器でもある土鍋にさらなるパワーが必要だった。


「ただの土鍋じゃ、やつらには勝てない。もっと特殊なパッタイを作る仕掛けを頼む。」

雅史の声には使命感がこもっていた。


田宮博士はしばらく考え込んだ後、ニヤリと笑った。

「いいだろう。ちょっと手間はかかるが、最高の土鍋に仕上げてやる。」

そう言うと、彼は棚から何やら怪しげな液体の入った瓶を取り出した。それを慎重に土鍋の中に注ぎ込みながら、博士は続ける。


「これを使えば、短時間でどんなパッタイでも完璧に仕上がる。しかも、仕上がったパッタイには“強化成分”が含まれていて、食べるだけでお前の身体能力が何倍にも跳ね上がるはずだ。」


雅史は土鍋を見つめた後、静かに呟いた。

「いいな、それならやつらを一掃できる。」


その夜、雅史は新しい土鍋を背負い、自宅で初めてその性能を試してみることにした。

キッチンに立ち、土鍋の中に米麺やタマリンド、ナンプラーを入れ、スイッチを押す。すると、土鍋の底から蒸気が噴き出し、わずか30秒で湯気とともに絶品のパッタイが完成した。


「こいつは…想像以上だ。」

パッタイの香ばしい匂いに食欲を刺激されながら、一口頬張る。途端に雅史の身体が熱くなり、筋肉が引き締まる感覚が全身を駆け抜けた。


「これなら…いける。」

雅史は拳を握りしめ、心の中で確信する。これがあれば、どんな敵が現れても立ち向かえる――。


翌朝、雅史のカフェには一人の女性客が訪れていた。

彼女は雅史に向かって怪しげな視線を送りながら、こう告げた。


「マスター、私、あなたに用があるの。」

その声には、ただならぬ緊張感が漂っていた。


(第2話 終わり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る