パッタイと、パンティと、伊達メガネのおっさん。

星咲 紗和(ほしざき さわ)

第1話 カフェのマスター、その裏の顔

薄暗い街角に、ひっそりと佇む小さなカフェ「パッタイ・タイムズ」。その店内では、ぽっちゃりとした中年男性が、ハンドドリップでコーヒーを淹れていた。

彼の名前は泰雅史(たい まさし)。伊達メガネがトレードマークの、どこにでもいそうな親しみやすいカフェマスターだ。


「はい、今日も特製ブレンドです。どうぞゆっくりしていってくださいね。」

雅史は穏やかな声で常連客に微笑みかける。その仕草は、仕事に忠実な職人そのものだ。しかし、彼にはもう一つの顔がある――それは、「世界の均衡を守るエージェント」だ。


その夜、閉店後のカフェ。

雅史はカウンターで紅茶を淹れ、パンティが描かれた雑誌を眺めながら一息ついていた。


「今日も平和だったなぁ…でも、平和ってのはいつも突然崩れるもんだ。」

そう呟くと、店の隅に置かれた古びた土鍋に視線を移した。その土鍋は、彼の相棒であり、彼が「無敵の力」を得るための秘密兵器だった。


突然、カフェの入り口のベルが鳴り響く。

「閉店してますよー」と声をかける雅史だったが、そこに立っていたのはスーツ姿の男だった。鋭い目つきで雅史を見据え、低い声で言った。


「雅史、時間だ。新しいミッションだ。」

それは彼のエージェント仲間であり、連絡役の小山田だった。雅史の表情が一変する。普段の穏やかなマスターの顔から、冷徹なエージェントの顔へ。


「…またパンティ絡みか?」

雅史は深く溜息をつきながら、伊達メガネをかけ直した。

「そうだ。ノーパンティという新たな組織が暗躍している。やつらは、世の中からパンティを消し去る計画を実行に移しているらしい。」

小山田の声には緊張がにじんでいる。


「パンティを…この世から消すだと?」

雅史の手に力が入り、土鍋の取っ手をぎゅっと握りしめる。

「パンティを愛する者として、それだけは絶対に許せないな。」

静かな店内に雅史の低い声が響く。


翌朝、雅史はいつものように土鍋を背負い、カフェを後にした。

彼の背中には「パンティを守る」という揺るぎない決意が漂っていた。

新たな戦いが始まろうとしていた――。


(第1話 終わり)

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