観測19 『弱者の奇跡』


 二〇三三年八月五日二〇時〇〇分、ダイラム工業区リーン港。


 同時刻、ダイラムの東側にある工業区にて誰も近寄らない暗闇の中、一人佇む少女の姿があった。

 ルルヴァナ海に面した工業区は、リーン港を中心に工場や倉庫や住居が建ち並び、数多くの船が停泊している。

 現在、ダイラムを構成する商業、学術、産業、工業区のの中で最も歴史のある工業区は最近建物の老朽化が進み、近々大規模な改修が行われる予定だ。

 工業区は所謂、小さな湾岸都市であり、国の技術力を示す工業の場をあえて公表することでダイラムがいかなる国家とも友好であり公正であることを示した、まさに国交を象徴といっても過言ではない"始まりの地区"である。


「…………」


 少女の名はアリナ。此度の事件において主犯とされるハオン・グァチルスの共犯者にして、たった一人の介添人。

 少女はハオンから与えられた指示のもと、この闇夜に沈んだ工業区の一角にいた。

 


『シムハナ……もといカンキニョスの全制御はゼンブ、ミリナに任せるわ。オマエが気絶しちまッたら、カンキニョスはダレも手がつけられなくなる。アレはマジでイカレた性能してやがる。だから騒ぎの反対側で隠れててくれ。——頼んだよ、ミリナ』


(……わたしの役目はここで契約法を維持し続けること。今のカンキニョスはわたしの神能も使えるわけだし、まだ誰も知らない『未知』が相手ならさすがの冒険士でもどうにもならないはず)


 【契約法】とは【法式】の一種であり、『内容によって課せられる代償を支払うことで、二者間の特性を獲得、束縛、または共有する』という一般的な【基礎法式】の一つである。

 今回ならばアリナがカンキニョスの絶対支配権を持ち、代わりにカンキニョスに対して神能を貸し出しているのだ。

 この場合、契約法は"神能の使用不可"という致命的なデメリットに反応し、その代償をカンキニョスに支払わせるべく、"十秒毎に致命的レベルの苦痛"を与えた。

 しかしカンキニョスはその肉体に絶対の不死性を宿しているため、契約法はカンキニョスが痛みに耐えるだけで成立した。

 つまりアリナは契約法の落とし穴を利用してカンキニョスの"制御と強化"を同時に行ったのだ。

 契約法は圧倒的格上である神能の力でも介入できないきわめて特殊な法式。

 あの『引鉄語り』のエリシアでさえも、今のカンキニョスには神能を使えない。


(……だから最後まで暗い闇のなかにいよう。それがハオンの望みだから)


 地響きが鳴り、怪物の咆哮が遠くから響いた。

 どうやらカンキニョスが始動したらしい。

 後ろへ振り返らず、前を向くと決めたあの日から覚悟はすでにできている。

 あのひとを愛しいと自覚したあの日からすべてを捧げると決めた。


(結局、さいごまでわたしはハオンに愛してもらえる女にはなれなかったな……)


 仕方のないことなのだろう。自分には彼を救ってあげることはできなかった。

 己は誰かを救える力がなかったからこそ、彼と出会えただけの女なのだから。

 だからせめて、彼の旅の終わりだけは見届けよう。

 声すらかけられない自分にはそれが身の丈に合っている。


『ギャイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

(—————え?)


 カンキニョスの咆哮が商業区の方から響く。鼓膜が破れそうなほどの爆音が思考を霧散させ、それと同時に契約法の効果が消えさり、神能が再び使用可能になったのを理解した。


(カンキニョスが殺されたの? どうやって!? それともなにか神能の能力で制御権を切られた? いやでも、契約法は普通の法式とは違う。あのハイトって子の神能でもそれは無理なはず。そもそも、切られたところでアレを殺すなんてできっこない)


 ありえてはいけない状況にアリナの脳内が困惑に染まる。

 あらゆる可能が脳内で浮かんでは霞のように消えていく。


(とにかくハオンがあぶない……!!)


 だが、商業区方面から飛んでくる炎が周囲を紅く染めていくのを見たアリナはそれら思考をすべて除外し、確定した事実にのみ意識を向けた。

 すぐさま神能発動に必要な《指揮棒》を具現化させ、振るう。

 瞬間、アリナの身体は光に包まれ、白を基調としたフリルや細やかな装飾品が散りばめられた奇抜な衣装を纏った。


「——やっと、みつけた」

(——————う、そ…………!!)


 どうして自分が生きているのかアリナには分からなかった。

 無から恐怖が産まれる感覚、限りなく究極で絶対的な絶望。

 勝ち負けを超越し、今すぐ逃げなければ殺されると確定した殺気が向けられている。


「やっぱり使ってたんだ、契約法。初めて見たときはハオンと繋がってたのに、あの子に変えたのはハイト対策? でも、それが裏目にでちゃったね? 解けた瞬間に生じる気配でバレバレだった」

(……っ!! なにあれ、人間? 旧獣が人間の女の皮被ってるだけじゃないの――!?)

「あの子すごいね。だれが作ったのかしらないけど、『金鍵』じゃなきゃ対処できないくらい強い」


 アリナは目の前の恐怖が綴る言葉に衝撃を受けた。それをこの街にいる人間で知っているのは、己とハオンだけだからだ。


「……わたしの神能は『調和楽園(エリュシオン)』っていって、十三人まで旧獣と友達になれるの。普段は"七"っていってるけど、ほんとは"十三"。旧獣には『神核』によって容量みたいのがあって、いまはひとり食べ盛りな子がいるから"八"までいける。何かあったときのために一枠だけあけてるの——今日みたいな日のためにね」


 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

 それだけが脳に反響していく。刹那の時ですら意識を他に向けることができない。

 少しでも目から背ければ、その瞬間に全てが終わってしまう。


「だから使ってみたの。友達になった瞬間、その子の情報がぜんぶ頭のなかに入ってきて、他の子の対処に役立つから。でも……できなかった。その時点でまっとうな旧獣でないことが判明した。だから他のことに目を向けた」


 淡々と冷淡な声色で吐き出される言葉。機械のように無機質で冷淡な眼差し。

 それは決して覗いてはならない、底知れぬ闇へと誘う門への門口。


「チセコト、サワスト、ヤリサツ、ユモト。あの子たちの声、よく聞くと、言葉がひとつ、ずれてるの。たすけて、ころして、ゆるして、やめて……ちょっと考えればわかる簡単な悪趣味——使ったんだね? なんの罪もないひとたちを」


 エリシアから放たれる莫大な夢力が膨れ上がる。途方もない激情は理解不能。

 だがそれは紛れもない神の創造のため、犠牲となった者たちへ行われた追悼。

 アリナは意識を保つのが、精一杯だった。それしか対抗手段がなかったのだ。


「今はだれがどうやって作ったとかじゃない。必要なのは事実だけ。——使ったんだから、責任はきちんととってもらう」


 エリシアが腰につけていた二つの《金色のキューブ》が視覚できない速度で分解され、奇妙な音を鳴らしながら二丁の銃へと変貌した。

 目の前の敵から漏れ出る雰囲気がアリナに絶望を叩きつけた。


「それにね? なにより許せないのは――わたしの大切な仲間を泣かしたこと」


(いやっ—————ッ!?)


 瞬間、アリナ指揮棒がエリシアへ向けられた。

 脳すら追いつかない恐怖が、生存本能を刺激し、神の力を解放させた。

 周囲に顕現した無数の剣と銃。それらが全てエリシアに射出された。


 アリナ・ランチェスターの神能『不到魔砲(ランブダイン)』は、神能でありながら夢力を増幅し、具現化させた剣や銃、最大六万七千個を自在に操るというもの。

 これらの形や特性を変幻自在に変化させ、あらゆる攻防に対応して敵を屠る。

 個人が国の軍隊とも対等でいられるその力は『変身系統』の神能にありがちな、規模が大きくするかわりに夢力を使わなければ成立しない——出来損ないの神能。

 夢力を扱えなければ法式以下にもなりえるこの神能を、アリナは産まれ持った才能と努力で成立させていた。


「〈シュトリ〉、螺夢変形(チェンジ)——広域噴射」


 銃口から夢力の激流が噴射され、エリシアに向かうもの全てが一掃される。

 災害としか比喩できないそれが、針くらいしか通せないような小さな銃口から繰り出されたという事実。

 アリナは呆然とその人間離れした力を見せつけられた。


「そっか、ハオンはあなたまで人でなしにはしなかったんだね」


 ずっと変わらない声でエリシアは言葉を紡ぐ。それはまるでいつまでも加賀谷k続ける宝石のように。言葉を紡ぐ大切さを噛みしめるように。


「——わるいけど、ここからは引き鉄で語らせてもらう」

(……もう、やるしかない)


 神話のとち狂った話みたいな展開の連続に、アリナの脳内の恐怖に対する許容範囲が潰れた。才能の差が離れすぎて、嫉妬なんておこがましいと思う感覚に近い。


(勝てる見込みはゼロ、絶対むり。でもこのまま負けて、この女がハオンのとこに行くのは絶対阻止する。ハオンだけは絶対まもってみせる!!)


 勝負にならないという事実が、逆にアリナの指針をはっきりとさせた。

 なにが起こってるのか、本当に分からない。

 だから、目の前に存在する明確な脅威を大切な人に近づけない。

 勝たなくていいからできるだけ長時間、足止めする。


「……あなたのその考え——間違ってるよ?」

(……は?)


 突然目の前が真っ暗になった。

 違う、目を覆うように何かがこちらへ向かってきたのだ。

 その正体は脚。エリシアが察知できないほどのスピードでアリナの顔面を蹴飛ばしたのだ。


「————ッ!?」


 顔面に鈍く重い痛みが走る。体が背中の方にあった建物にぶつかり、がれきを作りながら建物全体を突き破った。アリナはすぐさま体勢を立て直して空を舞い、再び神能を発動させる。


「ポーリ――ごー」

「アヒャアヒャ、カリカリ、カリノジカンダ!!」


 エリシアの合図にポーリが出現。

 その背中に足をつけ、アリナに向かって距離を詰める。


(……あれは彗星獣!? まずい、すぐに追いつかれる!?)


 ポリスカイは言ってしまえば、最速を極めた旧獣。他のどの旧獣よりも速く、どの神能よりも速い。全ての力を速度に注ぐよう進化したポリスカイにとって、他の生物の速度は動いていないに等しい。

 到底、人間の肉体では耐えられない負荷がかかる。

 エリシアは夢力を肉体に纏わせることで、その速度に耐えれるよう強化していた。


「アヒャアヒャ、オッソ、オッソ、クソオソジャンッ!! トロスギィ――!!」


 四方八方からあらゆる形を成して繰り出される攻撃。それはまさに銃弾飛び交う空の戦場。ポーリはその無数に繰り出され、周囲の街を破壊していく攻撃を苦もなく飄々と避け続けた。


(くっ……!?)


 アリナは一度神能の飛行能力のみを解除して、そのまま下に自由落下した。地面とぶつかる直前でもう一度指揮棒を振るい、地面と平行に飛んでエリシアたちから逃げる。


「……まあ、のってあげる。ポーリ、下降して」

「ハアイ!!」


 エリシアはアリナが建物の陰に隠れることを考慮し、すぐさま後を追いかけた。

 上から下へ真っ逆さまに落ちながら、今も飛び交う剣と銃の間を抜けていく。

 時折危なくなればエリシアがあらゆる方角へ曲がる銃弾を放ち、破壊して回避。人間と旧獣の異色のコンビは、再びアリナの目と鼻の先まで到達しかけていた。

 だがアリナはそれを見て焦ることなく――喜びの表情を出すのをこらえた。


(かかった……ッ!!)


 アリナはエリシアが自分と同じ高度に来た瞬間、《指揮棒》を上へと振るう。

 すると、アリナの姿がそこから消え、代わりに一本の剣がそこに現れた。


「すごい、具現化したものと入れ替わることもできるんだ」


 エリシアが夜空を見上げると、はるか上空にアリナの姿があった。

 その瞬間、付近に建ち並ぶ建物たちが一斉に揺れ始め、巨大な音を鳴らしながらエリシアに向かって倒れ始めた。

 そこは老朽化した建物が立ち並んだ区画。

 敷き詰められたそれらはそれぞれが作用しあって、エリシアの逃げ道を塞いだ。


(なにかに使えると思って、目星をつけててよかった! これならどこにも逃げられないし、夢力を纏っても質量で耐えられない……ッ!!)


 それは絶対防御不可能な必殺。神能が分かっていなければ、アリナは自分と同じように転移される可能性も考慮しなければならなかったので、やらなかっただろう。

 もちろん、もしあの冒険士が旧獣にそういった類の神能を持っていて、それを使われる可能性もあった。

 だが、力の差がありすぎてそんな不確定な可能性まで考慮することは無意味に等しい。とにかく、時間稼ぎになることをすればいい。そうアリナは決断した。


「アヒャヒャッ!!」

「――まあ、ちょうどいっか。〈エルソン〉――螺夢変形(チェンジ)」


 エリシアはそう言って、変化させた法転銃を上へ向け、引き金を引く。

 吐き出された極小の夢力は空から降ってくる建物へ伝播していき、粒すら残さず消滅した。


(…………は?)


 アリナは信じられない光景を見たショックで体中から汗が止まらなくなった。


「アレアレアレ? ツブモノコサナクテダイジョブ? オカネオジサンオコルヨ?」

「問題ない。その『貪金悪魔』さんに壊してくれって、たのまれてたから」


 エリシアの使う『法転銃(クリーピーホルダー)』はこの世界に存在する特殊な存在、『星遺物』と呼ばれる代物の一つ。星遺物は基本的に夢力を通して扱うものであり、ものによって様々な効果を発揮する。

 『法転銃』は一般的な鉛玉を使う銃と違い連射性に優れ、反動もなく、弾を自在に操作でき、夢力を流すだけなので弾丸の装填を必要としない。

 普段は金色のキューブとして待機状態を保ち、そこから七種類の変形パターンを使用者の意思に応じて、自由に組み合わせて戦う。

 これだけだと、『法転銃』は弱点なしの何のロマンもないつまらない代物のように思えるが、もちろんのこと致命的な弱点が存在する。


 それは――すべてが持ち主の夢力頼みだということ。


 これは簡略化された大雑把な例えだが、一般人が扱える夢力量を十、才能ありが百だとすると、『法銃』を完全に扱うのに求められる数値は一万。

 だから夢力がなければ、連射できない、操作できない、威力も弱い豆鉄砲。


 だから世間での『法銃』の評価は、『ポンコツガラクタ使えないネタ遺物』。

 そもそも神能の存在によって、戦闘面における法式――もとい夢力の評価は『肉体強度をあげるための鎧を纏うこと』である。

 誰もが攻撃から身を守るために使っているものを、こんな馬鹿みたいな消費量で攻撃するために使うなど、相当な気狂いでもなければ実行しない。


 ――『引鉄語り』のエリシアが現れるまでは。


「……すごく努力したんだね。もっと早く出会えてたら……ほんとに残念」


(……ッ!? むりむりむり!? こんなのまともに相手するなんてむり……!?)


 感情のこもってない無機質な瞳が恐怖をさらに膨張させる。

 あれは理解できない、してはいけない。ようやくわかった、あれが冒険士なんだ。

 大袈裟に言われてるだけだと思ってた。

 自分たちと変わらないこのクソな世界に必死で抗う存在だと思ってた。

 違う――冒険士は奪える側なんだ。化け物から何もかも奪える怪物なんだ。


(もう手数で攻めるしかないっ!! シムハナ単体じゃ弱くても、そうするしか……)


 そう考え、アリナは残りのシムハナたちを集めようと思考を切り替える。


(どうして!? なにも反応がない!?)


 だが、シムハナと繋がっていたはずの感覚がどこにもなかった。


「――お~~い!! 聞こえとるか~~!!」


 どこからともなく声が聞こえてきた。その方角へ目を向けると、発信源は近くにあった建物の屋上だった。


「すまんな~~お嬢ちゃんのお友達は一匹残らず、倒してもうたわ~~」

「ごめんなさ~~い!!」

「あう~~」

(――そん、な……)


 ヴェニスとボーシャ、そしてメリィの三人がそこにいた。

 その傍らにはおびただしい数のシムハナの死体。

 山のように重ねられた死体はその全てが生命活動を停止していた。


「頑張ってるのに話かけてごめんな~~。うえ――見てもろてええで~~」


(うえ―――ッ!?)


 視線を上げようとした瞬間、とてつもない衝撃が頭に走った。

 痛みを感じながら吹き飛ばされ、一秒もかからずに地面に体が叩きつけられる。


「おいオイおいオイ、よそ見スルとかメチャバカか?」


 アリナを殴りつけたのは、気づかれないように上に回り込んでいた『滑面鬼』のイブリだった。


(ぐ……あ…………)


 脳が揺れ、呼吸が満足にできない。体の色んな骨が砕け、もうこの場から動けなくなったことをアリナは悟った。


「………………」


 コツコツと足音が聞こえてくる。恐ろしいあの女がやってきたのだ。


「あなたは寄り添ってはいけなかった。大切なひとを闇から引っ張り出さなきゃいけなかった。力がないからしょうがないなんて言い訳をしてはいけなかった」


 アリナを見下ろしながら、エリシアは指をかけながら銃口を向けた。

 それは一回りも小さな子供には冷酷で無情な言葉だ。

 甘えなどは許さない。どこまでも対等で同じ目線でつづられた言葉だった。


「あなたは強くなる努力ができるのに、肝心な彼の心を救う努力はしなかった。自分が守られる立場だったから、自分には彼を救うことはできないと決めつけた」


(……だま、れ―――)


 自分の心が見透かされているような口調。お前のことなんてお見通しだと言われているような物言い。言い返したくても、言い返せない自分の体に怒りでおかしくなりそうだった。


「一目見ただけでわかった。あなたは今までずっと大切にされてきただけ。自分にできない暖かな優しさに甘えて、無意識のうちに自分に妥協案を作って、それに従ってきただけ。わたしにも経験があるからわかる。――それじゃだめなの」


(……だまれ――――ッ!!)


 憎しみが心臓からこみ上げてくる。吐き気を催しそうなくらい大っ嫌いな綺麗事がアリナの鼓膜を震わせる。力の入らない体を補うように、瞳が憎悪で満たされる。


「――あなたは、盲目でありすぎた」


「―――!!」


 "――それだけは――それだけはッ!!"


「――――ぇ!!」


 声がでない。弱者の声は響かない。虐げられる者の声はかき消され、強者の声だけが世界に纏わりついていく。弱いという一言が、生まれてきた価値を否定する。

 ならば――――、


「だまぇ――――――――ッ!!」


 ――これはきっと弱者の奇跡という『未知』だ。


「しんかぅ――かぃほォォォォォォォォ!!」

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