一日目:昼~夕:きゃっピー
特定班乙。ご近所バンザイ。心霊実証系動画配信者のきゃっピーが深夜に見つけた情報は見逃してはいけない類のものだった。
きゃっピーは早速チケットを手配する。明けて翌日。朝の収穫作業に家事手伝い(家業:野菜農家)らしく精を出し、母親に白い目を向けられながら昼一番で保丹屋に来た。
そういえばこんな物もあったっけな。きゃっピーは愛車である農業用軽トラックを無料駐車場の真ん中へ停めると、丸く特徴的なプラネタリウムを見上げて思う。小学校の頃に授業で来たことがあるようなないような。
まぁいい。過去は過去、今は今。一番乗りでバズってやる。編集用パソコンはマストで荷物に突っ込んだ。スマートフォンにカメラ、携帯電源を手元に用意。ナイトショットは場違いか。ライトは流石に要らんだろう。
まずは撮れ高狙いで周辺へとカメラを向ける。遠くに駅。隣に町役場、お向かいは農協で、その隣に何やら変な文字が見えている。――宇宙御神御心教団。
そいや隣のばーさんが言っていたっけ。じーさんが脳卒中なりかけ早期発見で事なきを得たとか、胃がんの発見が早くて放射線で寛解したとか、水が美味いとか、教祖が世話焼きおっさんだとか。
本部はここか。後で覗きに行ってみよう。
きゃっピーはカメラONのままプラネタリウムに入っていく。客入りほどほどの昼の『今日の星空』ではそれらしい映像は撮れなかったが、今日は最後まで粘る所存。時間つぶしに教団施設まで足を運ぶ。POP体の派手なラベルの水を買ってみる。うん。水だ。紛うことなきミネラルウォーター。値段も手頃でちょっと美味いのがなんだか悔しい。
夕方の『今日の星空』は満員だった。チケット確保済み僕グッジョブ。しかも情報とは少し違うが興奮するほど撮れ高があった。ありすぎて後半は、カメラを構えたままで『空』を見上げた。
「明日の日の出は午前六時十分。ほら、東の空が明るくなってきました」
女性解説者の柔らかい声が終演を告げる。きゃっピーはカメラを仕舞い席を立つ。大人しくロビーへ出る。次の上演まで速報用の動画作成でもしようとコミュニティスペースに陣取って、POP体ラベルの水を飲む。
今日は撮影と割り切っているし、夜も撮れ高期待で勿論カメラを構えるつもりではあるけれど。
今度は撮影抜きで来ようかな。きゃっピーはぼんやり思いほんのり笑む。
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