第二幕 靴を落とした少女 1:透明人間
私は、恐る恐る言葉を発した。「ここはどこ?」
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すると、目の前で女の人が周りを見渡し、首を傾げた。「???」
そのとき鳥がチュンチュンと鳴いた。そして彼女はポツリと小さな小さな声で
「やっぱり、さっきのは鳥のさえずりね。」
そう呟いて、私に水をかけた。
私はその言動に身構え、驚愕した。ど、ど、どういうことだ?!この目の前にいる彼女には、私が見えていないのか?!さっきの、声もすらも聞こえていないのか?!私は、おののくあまり、目の前にいる彼女から目をそらせず、濡れているであろう自分の体に触ろうとした。しかし、なんと自分の体が触れない。
私はゆっくりと視線を下にある体に向けると、土が見えた。そう。人間の体ではなく、土が見えたのだ。なんと体は透明に透けていたのだ。私は、手を太陽にかざしてみたり、ぽこすか、ぽこすか、と体を殴ったりしてみた。でも、やっぱり自分の体は透明で、しかも体には触れられず、すかすかと風を切るばかりだった。私は、せめて夢であってほしいと思い、目をつむった。そしてこう願った。早く夢よ、覚めろ!!
そして、もう一度目を開いた。でも、そこには、同じ風景と目の前に彼女が立っているだけであった。私は、ようやくそこで自分が透明人間になったのだと悟った。
私は、本当に透明人間になったのか。この先どうすればいいの。この世界からどうやったら抜け出せるんだろう。でも私が今、感じているものは、不安もあるけど、なんだか、すがすがしくて、楽しいという気持ち。私が、楽しいなんて気持ちを感じたのはいつぶりだろうか。それに、この透明人間の体。なってしまったことは仕方ないと感じているのと同じくらい、この体に私は胸を高ぶらせている感じがする。でも、私は元いた世界に戻らなきゃいけない。この世界から抜け出すためにも、この世界のことをできるだけたくさん知らないと。そのためには、まず、自分が今どんな状況化に置かれているのかを知ること。
そう思い、最後にもう一度だけ、その事実を確かめるように、目の前の彼女に声をかけた。でも、彼女は私に見向きもしない。私はこの事実に、久々に心が何かに解放された気分になった。私は、遊びごころが湧いてきて、彼女の反応を見てみることにした。私にもこんなキラキラした感情あったんだな。
私は、さっそく彼女の顔に至近距離で近づいてみたり、彼女の前で手を振ったり、様々なことをした。でも、そのことに彼女は一切反応を示さない。そんなことをしていることで、1つ分かったことがある。それは、この世界の物(物体)には一切触れられないということ。それは目の前の彼女のような”ヒト”でもあり、石ころなどの”モノ”でもある。でも、ちゃんと物体に触れた感覚はあるのだ。しかし、それも何かに当たっている感じと温度くらいしか分からない。この状況に私は、これもこの世界から抜け出すための重要な1歩だと自分に言い聞かせた。そのことに気が付いたのは、私が彼女を呼び止めようとしたときだった。私は、女の人の肩を掴んで呼び止めようとした。しかし、その肩には触れられず、手が肩をすり抜けてしまった。そして、私は、勢いよく派手に転んでしまった。私はとても恥ずかしい現場をさらしたようでならなかった。まぁ、そんなことを見ている人は誰一人としていないけど。私は、恥ずかしい現場をさらした見返りに、もう1つのヒントを得ることができた。転んだ拍子に地面に手をついたのだ。それも、大きな石ころを突き抜けて。こうして、私は2つの情報を得られたことに深く感動した。
私はその情報を得たあと、ここはどこで、この彼女は一体誰なのだろうと首を傾げた。
今、目の前の彼女は、私のいる花壇にジョウロで水をあげている。そう。これが、最初に目を覚ましたときに感じた正体だったのだ。ひんやりと濡れた感覚。私は、この彼女の家にある花壇の上で目を覚ましたのだった。そのとき、すでに彼女は花壇に水をあげていた。私は、ジョウロで水をかけられていたのだ。私は、自分の身に起きていたことを知ることができたそのとき、ドタドタと激しい音を立てながら、誰かが彼女の家の中から出てきた。それは、高貴な服装をした、彼女の母親のような人だった。。私は、違和感を感じた。なんで、彼女の母親であろう人とは違い、彼女の服装は地味なんだろう。そんなことを思っていると、彼女の母親であろう人がこう叫んだ。
「シンデレラ!!!!」
シン……………………………デレ…………ラ??????????
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