あずき色デスゲーム!

沼津平成

第1話

 笹川𠮷男ささかわよしおは、廊下に立っていた真鍋可知男まなべかちおに敬礼をした。二人とも男の、中学2年生だ。真鍋は笹川を迎えようと笹川のところまで行った。肩を並べて、二人は歩きだす。


「なあ、笹川?」

「なんだ?」

「俺、今着替えてるけど、さ」

「うん」

「今着替えてんの、俺と建部たてべだけだから、さ」

「うん」

「お前の席で着替えろよ」

「OK」

 

 そう言っている間に教室についた。真鍋はドアを開けた。瞬間、笹川は目をそらした。


「だー! エ〇チ!」

「……」


 呆然と立ち尽くす真鍋。「いや、これはその」


 女子のひとりがやってきて、勢いよくドアを閉めた。

「さてはお前、知ってたな!?」真鍋は笹川をにらんだ。


 対照的に笹川は涼しい顔を知っている。「いやー、あれは咄嗟の判断だったよ、それで罰なんだけど」

「ワァ―――――――――――――――――――――――――ごめんなさいごめんなさい何でもしますしますしますだからチクるなぁー!」


「うん、そのつもりはないよ」


 笹川は涼しい顔を崩さない。真鍋は息を切らしながら、安堵の表情を浮かべた。

「でも僕さ、いまヘンテコものファンタジー書いてるんだけどさ」

「ああ、あれのことか」笹川の執筆はクラスでも話題になっている。

「あれの主役――一番恥ずかしい役のモデルになってもらっていい?」

「え……?」

 

 真鍋は顔を赤くした。「う……うん、確かに罰を受けるとはいったけど」

「じゃあ決定!」

 

 真鍋は押し切られた。あ、ちょっと――そういう前に、ドアは笹川を吸い込んでいき、勢いよく閉まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あずき色デスゲーム! 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ