第12話 魅惑の踊り子
《side狭山瑠璃》
私の人生はつまらない。見た目が良くて、発育も良くて、男は私の体ばかりに目がいく。別にそれはどうでもいい。
男なんてみんな馬鹿な奴らばっかりだから、適当に相手をしていればいい。
そして、男を侍らせていれば、女は勝手に私に従うようになる。
私は学園では人気者。
だけど、家に帰っても、誰もいない。
両親は随分昔に離婚した。
母親が男を作って飛び出して、父親は、そのせいで精神を病んで、仕事に言って金を稼ぐけど、私の顔を見ると母親を思い出すから生理的に無理なんだと。
はっ、両親からの愛情ってなんだよ。私はそんなものは受けたことがねぇ。
父親は、金を振り込んでくれて、家賃なども世話をしてくれる。
だけど、中学に上がる頃には、私は一人だった。
だから、男を求めた。
部屋に男を連れ込んでは、相手をした。別に金なんていらない。ただ、誰かが私の相手をしてくれればそれでいいと思えた。
高校になって、私は学園の二大美人と呼ばれるようになっていた。
だけど、向こうは清楚で、こっちはビッチ。
男の扱いも全然違う。一人だけ、そんな私に優しくしてくれる奴がいた。
曽根奈緒。
ちょっと頭の足りない子で、天然? 押しに弱くて、最初は私と同じ人種かと思った。話を聞けば、父親しかいなくて、母親は他界している。
まぁ、似てるかもって思ったけど、全然違う。
奈緒は父親から愛されていた。
それに奈緒の父親は凄い人だった。
「あら〜ルリちゃん。ありがとう。いつも私のナオと仲良くしてくれて」
デカい体にカマ言葉。ギャップがえげつない人だったけど、押しが弱い割に一線は来させない天然なナオと。
父親なのか、母親なのかわからないオカマな父親。
最初は、ただナオが同類かもしれないと思ったから、そして、ナオといると温かい気持ちになって、ナオの親父さんといると、私も愛情を注いでくれたから。
全てが心地よくて、全てがぬる湯に浸かっているような感覚で、中学時代のあれていた自分を忘れさせてくれるような気がした。
だけど、突然世界はかわっちまった。
朝起きると、天井がなくて、外は火が上がって、周りには誰もいない。
最近は夜遊びも、男を連れ込むこともなくなっていたから、一人で怖くなった。
外に飛び出した瞬間、扉に何かぶつかった。
《最初の討伐を確認しました。ジョブ「魅惑の踊り子」を授与します》
変わった声が言っていた個人個人の能力ってやつか?
目の前にステータスと表示された数字が浮かぶ。
レベル:1
ジョブ:魅惑の踊り子
固有スキル:誘惑
特殊スキル:傀儡
装備:改造制服
体力:5/5
魔力:5/5
筋力:1
耐久:3
敏捷:3
器用:3
魔法攻撃力:5
魔法防御力:5
運:10
スキルポイント:10
ステータスポイント:100
意味がわかなかった。私はゲームなんてしねぇ。だけど、これがゲームみたいなもんだってのはわかる。
《スキルポイント(SP)とステータスポイント(SP)を使用可能です。ジョブ「魅惑の踊り子」に特化したスキルを解放できます》
だけど、タッチパネルと変わらない。スマホを操作するように触っているうちにだんだん容量がつかめてきた。
魅惑の踊り子:踊りを踊ることで、仲間の強化や戦闘を有利に進めることができるジョブ。
誘惑:あなたに対して好意を抱くようになり、逆らえなくなる。
傀儡:誘惑に成功した相手を意のままに操ることができます。
私は説明を読んで、まだ母親が家にいた時のことを思い出した。あの時はバレリーナになりたかった。だけど、いつの間にかダンスなんてやらなくなって、学校の授業で凄いと言われる程度の平凡な日々。
皮肉もいいところだ。
今更、私に踊れという。
ありえない。絶対に使ってやるもんか、誘惑と傀儡を使って従えてやる。
すぐに原理を理解した私は能力を試してみることにした。いつも偉そうにしていた不良たちが近くに住んでいたことを思い出して探し出す。
こんなヤバイ状況なら、男手を利用するのは当たり前だ。その力が私にはあるのだから。
「ねぇあんたたち。私を守ってよ」
男なんて、スキルがなくても誘惑できる。私の体を目当てに男たちが近づいてきた。
「誘惑」
だから、三人同時に私の傀儡にしてやった。
その後は簡単、三人にモンスターを倒させて、適当な拠点を見つけては傀儡を増やせばいい。
そして、高校に向かったけど、私のことを知っている。
あの清楚ぶった女が拒否した。
「あなたを入れることはできません」
「なんでだよ! 私もここの生徒だぞ」
「私にバレていないと思っているのですか?」
「ふ〜ん、そういうこと」
こいつは私と同類なんだ。だから、邪魔されるのを嫌う。
上手くいかない。
私は三人の手下を連れて、コンビニ移動した。
そこで強い男を見つけた。
「アハっ?!」
この男を手に入れたい。そう思ったのに、その男の横には奈緒がいた。
男が奈緒を守っている? 奈緒はいつもそうだ。大事なところは守って、いつもいいところをもっていく。
だから、奪ってやりたい。
こんな世界になったんだ。もう、ぬるま湯に浸かってはいられない。奪う者と奪われる者に分かれた世界なんだから。
ごめんね、奈緒。
あんたのことは親友だけど、バカなあんたが悪い。あんたの男は私がもらう。
「ありがとね《誘惑》
「うっ?!」
はは、やった強い男を手に入れた。
「瑠璃ちゃん!? タイチさん!」
「奈緒、ごめんね。もうその男は私の物だよ」
「えっ?」
「私の能力で、その男は私の傀儡にしたの。元々、私ってジョブ持ちなんだよね。アハっ」
気持ちいい! 親友から男を寝取るって、こんなに気持ちいい。
「どうしてこんなこと?!」
「うるさい。もう、世界は変わったの。いつまでも甘いことを言っていたら死ぬよ。奈緒、あんたのことも慰み物として使ってあげるから安心して」
もう世界なんてどうでもいい。私が一番になれるんだ。
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